執筆者・監修者:薬剤師
「牛乳は体に良いので子どもにたくさん飲ませている」
そんなご家庭も多いのではないでしょうか。しかし、牛乳の飲みすぎは鉄分不足を招き、「牛乳貧血」と呼ばれる状態につながることがあります。本記事では、子どもの牛乳貧血の原因や症状、予防・改善のポイントを解説します。
牛乳貧血とは?
牛乳はカルシウムが豊富で、成長期に積極的に摂りたい食品の一つです。ただし、飲みすぎには注意が必要です。牛乳そのものが悪いわけではなく、牛乳の飲みすぎによりお腹がいっぱいになり、他の食品をあまり食べられないということが続くことで、必要量の鉄分を摂取できず貧血になってしまいます。
まずは牛乳貧血についての基礎知識を理解しておきましょう。
鉄分不足によって起こる鉄欠乏性貧血の一種
牛乳貧血とは、鉄分不足によって起こる鉄欠乏性貧血の一種です。体内の鉄分が不足すると、酸素を運ぶヘモグロビンが十分につくられず、全身が酸素不足の状態になります。
牛乳には鉄分がほとんど含まれていないため、牛乳をたくさん飲むことでお腹がいっぱいになってしまい、他の食品を十分に食べられないことが続くと、知らないうちに鉄不足に陥ってしまいます。
また、牛乳にはカルシウムとリンが豊富に含まれています。これらは腸の中で鉄分の吸収を妨げてしまいます。このことも牛乳貧血の原因の一つです。
特に乳幼児~学童期の子どもで見られる
牛乳貧血は特に乳幼児〜学童期の子どもで見られます。乳児はもともと体内に鉄分をある程度貯蔵していますが、生後6か月ごろにはこの貯蔵鉄がなくなり、離乳食などから鉄分を摂取する必要が出てきます。
だんだんと身体が大きくなってきて活動も活発になってくるこの時期に、鉄分の吸収を阻害する牛乳を飲むと鉄分が不足するリスクが高まるため、1歳未満の乳児には牛乳を与えるのは望ましくないとされています。
離乳食を終えた幼児〜学童期の子どもであっても、牛乳の飲みすぎには注意が必要です。この時期の子どもは身体が大きくなるにつれて鉄分の必要量も増加していきます。そのタイミングで牛乳の摂取量が多く、食事量が少ないと鉄分が不足してしまいます。
牛乳自体が悪いのではなく「飲みすぎ」が問題
ここまでの流れから「牛乳は飲まない方がいいのでは」と思う方もいると思いますが、牛乳自体が悪いというわけではありません。子どもが健やかに成長していくためには、牛乳に豊富に含まれるカルシウムも大切です。
問題となるのは、牛乳でお腹がいっぱいになり、他の食品が食べられなくなることです。牛乳の適切な摂取量は1日に200ml~400mlほどです。子どもの様子を見ながら、食事量に影響を与えない程度の量をあげるようにしましょう。
牛乳貧血の原因
牛乳貧血の原因としては、牛乳の飲みすぎによる食事量の減少やカルシウムによる鉄吸収の阻害などがあります。牛乳貧血の原因について詳しく見ていきましょう。
牛乳の飲み過ぎによる鉄分の摂取の妨げ
牛乳貧血の原因として、牛乳の飲み過ぎにより他の食品が食べられなくなり、鉄分が十分に摂取できなくなることが挙げられます。栄養豊富なイメージがある牛乳ですが、鉄の含有量は非常に少なく、1リットルあたり約0.6mgしか含まれていません。
また、牛乳に含まれるたんぱく質の一種であるカゼインは、消化・吸収に時間がかかるという特徴があります。そのため、牛乳を飲むと満腹感が持続しやすくなります。
牛乳を飲みすぎることでお腹がいっぱいになり、肉や魚、野菜などの主菜・副菜が十分に摂れなくなるケースも少なくありません。その結果、鉄分を含む食品の摂取量が減り、慢性的な鉄分不足につながります。
カルシウムによる鉄吸収の妨げ
牛乳に豊富に含まれるカルシウムには、鉄分の吸収を妨げる作用があります。そのため、牛乳と鉄分を一緒に摂ると鉄分が吸収されにくくなってしまいます。
特に食事と一緒、または食後すぐに大量の牛乳を飲むと、鉄の吸収率が下がりやすくなるため注意が必要です。
牛乳貧血の主な症状
牛乳貧血は、最初は気づきにくいのが特徴です。「なんとなく元気がない」「体質かな?」と見過ごされることも少なくありません。特に乳幼児は自分で症状を訴えられないため、周囲の大人が注意深く様子を観察する必要があります。
ここからは牛乳貧血の主な症状について解説します。
顔色が悪い、皮膚が青白い
頬や唇の色が薄く、全体的に血色が悪く見えるのは貧血の代表的なサインです。写真を撮ったときに、他の子と比べて白っぽく見えることも少なくありません。
わかりやすいチェック方法として、下まぶたの裏側の色を見る方法が用いられています。下まぶたの裏側が白っぽい場合、貧血の可能性が疑われます。
疲れやすい、すぐに横になる
貧血になると疲れやすくなり、すぐに横になりたがる様子が見られます。体内の鉄分が不足すると、全身の酸素供給に関わるヘモグロビンが十分につくられません。その結果、体内が酸素不足の状態となり、疲れやすさや倦怠感が現れやすくなります。
少し遊んだだけで「疲れた」と言ったり、ゴロゴロしている時間が増えたりしている場合には、貧血の可能性も考えられます。
めまい、動悸、息切れ
年齢が上がると、立ちくらみや動悸、階段での息切れを訴えることもあります。学童期では体育の授業についていけなくなることもあります。
集中力の低下、発達への影響も
鉄分は、体中に酸素を供給するヘモグロビンの材料であると同時に脳の神経伝達物質をつくる働きもあります。
脳は多くの酸素を消費する臓器であるため、急速な発達をとげる乳児期に鉄分の摂取量が不十分だと脳の成長に支障をきたし、幼児期や学童期の集中力や学習意欲の低下につながる可能性があります。
「落ち着きがない」「ぼーっとしている」と感じたら、栄養状態も一度見直しましょう。
予防と改善のポイント
牛乳貧血は、日々の食生活を少し見直すことで予防・改善が可能です。牛乳貧血の予防・改善のポイントを紹介します。
牛乳の適量を守る
まずは牛乳の適量を守ることを心がけましょう。牛乳は1歳を過ぎてから与えるようにします。目安量としては1日コップ1~2杯程度(200~400mL)です。
牛乳でお腹がいっぱいになって食事を十分に摂れないということにならないように、子どもの様子を見ながら適量を見極めるようにしましょう。
鉄分を含む食品を積極的に
赤身肉、魚、大豆製品、卵、ほうれん草などの鉄分を含む食品を積極的に取り入れるようにしましょう。
食事から十分な鉄分を摂取できるのが理想的ですが、偏食などで十分な摂取が難しいという場合は、フォローアップミルクや子ども向けのサプリメントなどを活用しても良いでしょう。
ビタミンCを含む食品と一緒に摂取
鉄分はビタミンCを含む食品と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
鉄分には、動物性の食品(赤身肉、魚、卵など)に多く含まれるヘム鉄と、植物性の食品(ほうれん草、小松菜、大豆製品など)に多く含まれる非ヘム鉄があります。このうち体内への吸収率が高いのはヘム鉄です。
非ヘム鉄を摂るときはビタミンCを含む食品と一緒に摂取するようにしましょう。
牛乳は食後すぐではなく、間食や就寝前に
食事中や食後に牛乳を飲むと、牛乳に含まれるカルシウムやリンにより鉄分の吸収が妨げられてしまうため、おやつの時間や寝る前に飲むのがおすすめです。食事とは間隔をあけるように心がけましょう。
かかりつけ医・薬剤師への相談の目安
子どもの貧血を疑ったときは、早めに専門家へ相談することが大切です。自己判断でサプリメントを使う前に、必ず相談しましょう。
顔色の悪さや疲れやすさが続くときは小児科へ
顔色の悪さや疲れやすさが続くときは早めに小児科を受診しましょう。血液検査をすることで貧血の有無を確認できます。牛乳貧血であれば食事内容の見直しだけで改善するケースも多いです。
食生活の相談はかかりつけ薬剤師・栄養士にも
食生活についてはかかりつけの薬剤師や栄養士にも相談できます。家庭で続けやすい食事の工夫を具体的にアドバイスしてもらえるので、「牛乳をやめる」のではなく、「上手につき合う」方法を一緒に考えていくとよいでしょう。
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