執筆者・監修者:薬剤師
「せっかくの家族旅行なのに、子どもが車酔いをしてしまいかわいそう」
「遠足のバス移動で吐き気やめまいが起きないか不安…」
楽しい時間に水を差してしまう乗り物酔いに悩む方は少なくありません。乗り物酔いは正しい原因を知り、出発前から適切な対策をしておくことで十分に予防・克服ができるものです。
この記事では、乗り物酔いが起こるメカニズムや原因、乗る前・乗った後にすぐ実践できる対策・治し方を分かりやすく解説します。
乗り物酔い(動揺病)の症状とメカニズム
乗り物酔いは乗り物に乗ったときに起こる不快な症状のことで、「動揺病(どうようびょう)」とも呼ばれます。まずは乗り物酔いの症状とメカニズムについて理解しておきましょう。
乗り物酔いの代表的な症状
乗り物酔いの症状は、軽いものから重いものまでさまざまです。
最初はめまいや生あくび、生つばといった症状が予兆として現れ、次第に「なんとなく気分が悪い」「胃がムカムカする」といった軽い吐き気が起こります。
その後、症状が悪化すると頭痛や冷や汗、顔面蒼白、そして嘔吐へと進んでいきます。嘔吐を繰り返す場合は脱水症状にも注意が必要です。
目と耳の「情報のズレ」が脳を混乱させる仕組み
乗り物酔いが起きる原因は、耳の奥(内耳)がとらえた体の位置や揺れ、スピードなどの情報と目から入る情報のズレにあります。
たとえば車の後部座席でスマートフォンを見ているとき、目は「静止している画面」を認識しているのに対し、内耳(三半規管・耳石器)は「体が揺れている」と感じています。
この2つの情報が一致しないため、脳が混乱して情報を処理しきれなくなり、自律神経の働きが乱れた結果、冷や汗や吐き気などの乗り物酔いの症状が引き起こされるのです。
子どもの方が酔いやすい?年齢による違い
乗り物酔いは、一般的に未就学児では起こりにくく、小学校入学後、学年が上がるにつれて発症する人が増えるとされています。
これは小児の脳の発達と関係しています。3歳くらいまではバランスをとる小脳が未発達で乗り物などの振動に対する感覚が鋭くありません。しかし、4歳ごろになると小脳の機能が発達し、また三半規管も発達してくるため、乗り物酔いの症状が出やすくなります。
成長するにつれていろいろな経験を積むうちに、さまざまな感覚情報を脳が処理できるようになり、乗り物酔いの症状は出にくくなっていきます。
ただし大人でも、疲れや睡眠不足、強いストレスが重なると酔いやすくなることがあります。年齢に関係なく、体調管理は乗り物酔い予防の基本といえるでしょう。
体調や心理も影響する!乗り物酔いを引き起こす5つの要因
乗り物酔いの原因は、先述した感覚のズレだけではありません。その日の体調や心の状態が、酔いやすさに大きく影響します。
以下の5つの要因に心当たりがないか、乗車前にチェックしてみましょう。
1. 前日の睡眠不足や体調不良
睡眠が不足していると、脳や自律神経の働きが低下し、通常なら問題のない揺れでも酔いやすくなります。風邪や発熱、貧血、低血圧なども同様で、体が本調子でないときは乗り物酔いのリスクが高まります。
長時間の移動を控えているときは、前日の睡眠をしっかりとるようにしましょう。
2. 空腹・満腹状態での乗車
空腹でも満腹でも、乗り物酔いは起こりやすくなります。
空腹状態では血糖値が下がって自律神経が乱れやすく、乗り物酔いのリスクが高まるため注意が必要です。逆に満腹状態では乗り物の揺れで胃が刺激され、吐き気を感じやすくなります。
乗り物酔いを防ぐためには、乗車の1〜2時間前に消化の良いものを腹八分目程度食べておくのが理想的です。
3. 「また酔うかも…」という不安やストレス(心理的要因)
乗り物酔いを一度経験した人は、「また酔ってしまうかも」という不安やストレスが引き金となって、実際に乗り物酔いの症状が引き起こされることもあります。
不安やストレスがあると自律神経のバランスが崩れ、乗り物酔いしやすい状態になってしまいます。
特に小さいお子さんの場合は酔ってしまったことを強く叱ったり責めたりしないことが大切です。「また吐いたらどうしよう」という不安が、次回以降の乗り物酔いを悪化させる原因になることがあります。
「酔い止めを飲んだから大丈夫」という安心感を持ったり、「酔わない、大丈夫」と暗示をかけたりすることも立派な対策のひとつです。
4. 車内のニオイ(排気ガス・タバコ・芳香剤など)
嗅覚からの不快感も乗り物酔いの原因となります。
嗅覚は自律神経と密接に関わっており、不快な臭いは脳への刺激となって乗り物酔いを悪化させます。車内ではこまめに換気をして強い香りのものは極力避けるようにしましょう。
5. スマホ操作や読書による目への過剰な刺激
乗り物の中でスマートフォンや本を見ると、目のピントが固定されたまま体だけが揺れるため、感覚のズレが起こりやすくなります。
移動中は加速度に影響されない遠くの景色を眺めるなど、目への負担を減らすようにすることが大切です。
【乗る前・乗車中】乗り物酔いを未然に防ぐ正しい対策
乗り物酔いにならないようにするために、乗車前と乗車中、それぞれのシーンでできる具体的な対策を押さえておきましょう。
乗車前の準備:自律神経を整える習慣
出発前夜はしっかり睡眠をとり、当日は余裕を持って行動するようにしましょう。また、酔い止め薬は乗車30分〜1時間前に服用するのが最も効果的なタイミングとされています。
乗り物酔いが心配な方は、出発前のルーティンとして酔い止め薬の服用を習慣にしておくと安心です。「酔い止め薬を飲んだから大丈夫」という安心感も乗り物酔いの予防につながります。
乗車中の工夫:揺れと視覚の刺激を減らす
乗車中は、目から入る情報と耳から入る情報のズレをできるだけ少なくする工夫が必要です。
車の後方の座席ほど揺れを感じやすく、視覚情報とのズレも大きくなりやすいため、前方に座り遠くの景色を眺めるようにしましょう。
会話を楽しんだり、音楽を聴いたりするなど、乗り物酔いから意識を逸らしてリラックスして過ごすことも有効です。
また、衣服の締め付けをゆるめて体をリラックスさせましょう。ベルトやボタンなど、お腹まわりを圧迫するものはあらかじめゆるめておくと、吐き気の軽減につながります。
もし酔ってしまったら?その場でできる「治し方」と応急処置
「気をつけていたのに酔ってしまった」というときも、あわてずに対処することが大切です。以下の方法を落ち着いて試してみてください。
楽な体勢になり、新鮮な空気を吸う
乗り物酔いの症状が出始めたら、可能であれば乗り物を止めて外に出るか、車窓を開けて新鮮な空気を取り入れましょう。
横になれる状況であれば、仰向けに寝て目を閉じると症状が和らぐことがあります。座ったままの場合は、シートに深く座り直して頭を固定し、視線を遠くに向けるだけでも楽になることがあります。
氷やミントガムの冷たい刺激を活用
冷たい水を少しずつ飲んだり、氷を口に含んだりすることで、吐き気が和らぐことがあります。これは冷たい刺激によって自律神経の緊張がやわらぐためと考えられています。
またミントガムの清涼感も、気持ち悪さを一時的に紛らわせる効果が期待できます。
吐き気は我慢せず、やさしく声をかけて安心させる
吐き気が強い場合は、無理に我慢するのは禁物です。嘔吐しそうなときはビニール袋を用意し、口元にあてて自然に任せましょう。思い切って吐いてしまうことで症状がラクになることもあります。
吐いた後は少量の水で口をすすぎ、横になって安静に過ごしましょう。
特に子どもが酔った場合は、「大丈夫だよ、もうすぐ楽になるよ」と穏やかに声をかけ、不安を取り除いてあげることが大切です。
酔い止め薬を服用する
酔い止め薬は乗車の30分~1時間前に飲むのが効果的ですが、酔ってしまった後でも効果があるお薬もあります。
市販の酔い止め薬には成分の違いにより「眠くなりやすいタイプ」と「眠くなりにくいタイプ」があります。事前に薬剤師に相談して、用途や年齢に合ったものを選んでおくと安心です。
まとめ:酔い止め薬を上手に使って、楽しい旅行に出かけよう!
乗り物酔いは感覚のズレが引き起こす症状であり、体質や心理的な要因、その日の体調も大きく影響します。
睡眠・食事・乗車姿勢といった基本的な対策に加え、酔い止め薬をうまく活用することで、多くの方が乗り物酔いせずに移動を楽しめるようになります。
酔い止め薬は種類が豊富で、年齢・症状・眠気への配慮など、選び方にポイントがあります。酔い止め薬の選び方や服用方法について薬剤師に相談したい場合は、LINE公式アカウント「つながる薬局」のサービスがおすすめです。
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執筆者:Rika
資格:薬剤師
経歴:大学卒業後、調剤薬局勤務(7年)。現在は慢性期病院勤務。
5歳と0歳の男の子を育てているママ薬剤師です。一般の方にもわかりやすい記事の執筆を心がけています。精神科病院でのパート勤務のかたわら、東洋医学を学んで不妊治療を乗り越えた経験を生かして、妊娠に向けた体づくりや不妊治療についての情報発信にも取り組んでいます。




