こどもの日に菖蒲湯(しょうぶゆ)に入るのはなぜ?

子育て

執筆者:看護師 監修者:薬剤師

5月5日のこどもの日(端午の節句)には菖蒲湯(しょうぶゆ)に入るという風習がありますが、その意味や由来をご存じですか?古くから邪気払いの象徴とされてきた菖蒲には、心と体の健康を整える力があるといわれています。この記事ではこどもの日に菖蒲湯が親しまれてきた理由や歴史のほか、現代にも活かせる効能や作り方をご紹介します。
「こどもの日に菖蒲湯に入るのはなぜ?」「菖蒲湯の作り方が知りたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

菖蒲湯に入る風習の由来

菖蒲湯に入る風習にはいくつかの由来がありますが、いずれも無病息災や厄除けの願いが込められています。ここでは、主に知られている菖蒲湯の由来を3つ紹介します。こどもの日には菖蒲湯に入る習慣があるという方も、ぜひ由来を知り入浴を楽しんでください。

古代中国の邪気払いの風習が起源

菖蒲湯の起源は、古代中国の端午節(旧暦5月5日)にさかのぼります。この時期は季節の変わり目で体調を崩しやすく、邪気が入りやすいと考えられていました。そこで、強い香りを持つ菖蒲やヨモギを門に飾ったり、菖蒲湯に浸かることで邪気を払い、無病息災を願う風習が生まれたのです。後に、この習慣が日本に伝わり、端午の節句として定着したといわれています。

ちなみに、菖蒲はその独特な香りと形状から、魔除けや厄除けの象徴とされていました。また、中国では菖蒲を束ねて家の入口に吊るすと、悪霊の侵入を防げると語り継がれています。このような風習が日本にも影響を与え、邪気払いや無病息災を願う菖蒲湯としての文化が根付いたのです。

語呂合わせから生まれた風習

日本で菖蒲湯の風習が広まった背景には、「菖蒲(しょうぶ)」と「勝負」や「尚武(しょうぶ)」が同音であることが影響しています。「尚武」は武道や武勇を重んじる意味を持ち、また「勝負」ごとに勝利する願いを込め、武士の間で特に尊ばれました。この語呂合わせから、端午の節句は男児の健やかな成長や出世を願う行事として位置づけられるようになったのです。

このほか、男の子がいる家庭では、菖蒲を束ねて頭に巻くことで、強くたくましく育つよう願う風習が生まれました。菖蒲湯に浸かることは、単なる健康祈願だけでなく、子どもの健康や将来を願う象徴的な意味も持つようになったのです。

武士の時代に広まり、庶民にも定着

鎌倉時代以降、武士の間で端午の節句に菖蒲湯に浸かる風習が広がったという一説もあります。「尚武」の精神を重んじる武士たちは、菖蒲湯に浸かることで心身を清め、武運を祈願したのです。この風習はやがて庶民にも広まり、江戸時代には一般家庭でも菖蒲湯に浸かる習慣が定着しました。

また江戸時代では、町人たちが菖蒲を束ねて浴槽に浮かべ、家族全員で菖蒲湯に浸かることで無病息災を願うという意味も込められていました。このように、武士階級から徐々に庶民へと風習が広がり、現在の習慣が形成されていったのです。

菖蒲湯の効能

古くから親しまれてきた菖蒲湯には、香り成分による血行促進やリラックス効果のほか、抗菌作用による皮膚トラブル予防が期待できるといわれています。具体的にどのような効能があるのか、詳しく解説するのでぜひ参考にしてみてください。

血行促進、疲労回復効果

菖蒲の根茎には「アサロン」や「オイゲノール」といった香り成分が含まれており、これらが血行促進や疲労回復に効果があるとされています。菖蒲湯に浸かることで血流が良くなると、筋肉の緊張がほぐれ肩こりや腰痛の緩和が期待できるでしょう。また、体が温まることで新陳代謝が活発になり疲労回復にもつながるほか、免疫力の向上の助けにもなります。このように、菖蒲湯は日々の疲れを癒す自然療法としてもおすすめですよ。​

香りにリラックス効果

前述した「アサロン」や「オイゲノール」は、血行促進のほかにリラックス効果ももたらすといわれています。この香りには自律神経を整える働きがあり、ストレスの軽減や安眠を促すともいわれています。就寝前に菖蒲湯に浸かることで、交感神経が優位な状態から副交感神経が優位な状態へ移り変わり、心身がリラックスし深い眠りにつけるでしょう。

また、菖蒲の香りはアロマセラピーの一環としても利用されており、心の安定を図る手段としても注目されています。菖蒲湯に浸かることで、心身ともにリフレッシュできるため、現代の忙しい生活の中でも取り入れたい習慣のひとつです。

抗菌作用であせもなどを予防

菖蒲根に含まれるアサロンには抗菌活性があるといわれ、皮膚を清潔に保つ効果が期待できます。そのため、菖蒲湯に浸かることで皮膚のトラブルを予防し、あせもや湿疹の発生を抑えられるでしょう。たとえば、夏場子どもがあせもに悩まされている場合、菖蒲湯に浸かることで症状が軽減されることがあります。特に、汗をかきやすい季節やあせもができやすい子どもにとって、菖蒲湯は日常生活でおこなえる自然なスキンケアの一環として有効です。

ただし、菖蒲には口に含むと嘔吐などの症状を引き起こす成分があるため、子どもが口に含まないように注意しましょう。また、おむつかぶれや乳児湿疹などの症状が出現している場合、症状を悪化させる可能性があるため菖蒲湯に入るのは控えるようにしてください。

とても簡単!菖蒲湯の作り方

菖蒲湯の作り方は意外と簡単です。ここでは、手軽に楽しめる菖蒲湯の作り方をご紹介します。また、菖蒲を手に入れられる場所から手に入れられなかった場合の方法まで解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

普段の入浴と同じ温度でお湯を張る

菖蒲湯を楽しむ際は、普段の入浴と同じ程度(38〜40℃程度)のお湯を張るのがおすすめです。その際、熱すぎるお湯は菖蒲の香り成分が揮発しやすく、肌への刺激が強くなる可能性があるため注意しましょう。また、ぬるめの温度でおこなう入浴は、菖蒲の香りをじっくりと楽しむことができるだけでなく、リラックス効果を高めてくれます。特に就寝前にぬるめの菖蒲湯に浸かることで、自律神経のバランスが整い、心地よい眠りにつきやすくなりますよ。

生の菖蒲の束を浴槽に浮かべる

菖蒲湯を作る際は、生の菖蒲の葉や根を束ねて浴槽に浮かべてみましょう。葉を軽く結んだり根に切れ目を入れたりするとより香りが立ちやすくなるほか、湯に浸すことで香りが広がりやすくなります。たとえば、5〜6本の菖蒲を束ねて浴槽に浮かべると、季節感を演出でき見た目にも風情のある入浴を楽しめるでしょう。このように、生の菖蒲を使った菖蒲湯は五感で楽しめるため、おすすめの伝統的な入浴法といえます。

ちなみに、生の菖蒲は市場に出回る時期になると生花店や八百屋のほか、ネットなどでも購入できます。もしも生の菖蒲が手に入らないという場合は、乾燥した菖蒲や市販の入浴剤を利用するのもひとつの手段です。自然の香りを楽しみながら、伝統的な風習を体験してみてください。

香りを楽しみたい場合は?

菖蒲湯の香りを楽しみたい場合は、菖蒲の葉や根を細かく切って布袋に入れ、熱湯に10分間ほど浸すといった方法があります。こうして出来た抽出液を葉と一緒に浴槽に加えると、菖蒲の香りがより際立ち、豊かな香りを楽しめるでしょう。また、菖蒲の根を軽く叩いてから湯に入れたり、葉を浴室内に吊るしたりすることで、さらに香りが空間全体に広がります。このほかにも、布袋に入れた菖蒲を湯に浸しながら、手で軽く揉むことで香りが広がりやすくなりおすすめです。

このように、工夫次第で菖蒲湯の香りをより一層楽しめますよ。

まとめ

今回は、こどもの日に菖蒲湯に入る理由やその歴史、また効能や作り方について解説しました。菖蒲湯には心身をすこやかに整える作用があるとされており、こどもの日だけでなく、日々の生活にも取り入れてみるのもおすすめです。​菖蒲湯は簡単に作ることができ、家庭で手軽に楽しめるので、この機会に季節の行事として取り入れてみてはいかがでしょうか。

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