執筆者・監修者:薬剤師
「気づいたら子どもがお薬を口に入れていた…」
そんな場面に、焦ってしまった経験はありませんか? 子どもは思わぬタイミングでお薬に手を伸ばしてしまうことがあり、誤飲は決して珍しくありません。今回は、子どものお薬の誤飲時に知っておきたい初期対応や相談先、予防のポイントを薬剤師の視点から解説します。
誤飲が起こりやすいケース
子どものお薬の誤飲は、ちょっとした油断から起こります。誤飲事故には、「身近にあるものを何でも口に入れてみる」「周囲への興味や関心が高まり大人のまねをする」「興味を持って好んで取る」など、子どもの年齢や発達段階によって変化する行動特性が影響していると考えられています。
誤飲を防ぐには、子どもの目線や行動パターンを意識した対策をとることが大切です。
お薬をテーブルに置きっぱなし
大人がお薬を飲もうとして一時的にテーブルに置いたまま目を離すと、子どもが手に取って飲んでしまうことがあります。特にカラフルな錠剤などは子どもにとって“キャンディ”のように見えることもあります。
服用の前後は必ず手元からお薬を離さず、飲み終わったらすぐに子どもの手の届かない場所へ片づけましょう。
おやつと勘違いしてしまう
シロップ剤やカラフルな錠剤、チュアブル錠は、味や見た目から子どもがお菓子と勘違いしてしまうことがあります。特に小児用の甘い味のお薬は「また飲みたい」と感じてしまう子も多く、こっそり手に取って多量に服用してしまうケースもあります。
子どもに「お薬はおやつではない」と教え、お薬は常に子どもの手の届かない場所に保管することが大切です
保護者が服薬する様子を真似してしまう
子どもは大人の行動をよく観察しており、保護者がお薬を飲む姿を見て「自分もやってみたい」と思うことがあります。特に保護者が毎日お薬を飲んでいる家庭では注意が必要です。できるだけお薬を飲んでいる姿を見せないようにするとともに、「お薬は病気の人だけが飲むもの」と繰り返し伝えることが大切です。
誤飲してしまった時の対応
子どもがお薬を誤飲してしまった時は、慌てずに冷静に対応することが大切です。焦って行動をすると、かえって危険な状況を招くこともあります。お薬の誤飲に気づいた場合は以下の流れで対応しましょう。
- お薬の種類と量を確認
- かかりつけ病院・薬局に連絡(夜間・休日は電話窓口の活用も可)
- 自己判断で対処せずに、専門機関の指示に従う
いざという時に冷静に対応できるように、対応方法について理解しておきましょう。
慌てず、お薬の種類と量を確認
まずは、誤飲してしまったお薬の種類と量を確認しましょう。お薬のシートや袋などを確認して何のお薬を誤飲したのかを把握します。その際にシートや袋ごと飲んでしまっていないかの確認も行いましょう。シートや袋ごと誤飲してしまったケースも報告されています。
どのくらいの量のお薬を誤飲してしまったのかの把握も重要です。少量であれば健康被害のリスクが低いお薬であっても、多量に服用すると副作用のリスクが高まり、重篤な症状につながる可能性もあります。
誤飲してしまったお薬の種類と量、飲んだ可能性のある時間などを把握すると、医療機関での対応がスムーズになります。お薬の名前がわからない場合は、お薬手帳や処方時の説明書、写真なども役立ちます。慌てずに、必要な情報を整理しましょう。
すぐにかかりつけ病院・薬局に連絡
お薬を誤飲してしまった時は、迷わずかかりつけの病院や薬局に連絡しましょう。子どもの年齢や体重、誤飲したお薬の種類や量などの情報をもとに、必要な対応を教えてもらえます。休日や夜間でかかりつけの病院・薬局に連絡がつかない場合は、救急外来や小児救急相談の活用も視野に入れましょう。
電話相談窓口の活用
夜間や休日で病院にすぐ行けない場合は、電話相談窓口を活用しましょう。お薬の誤飲について相談できる電話相談窓口について、下記の表にまとめたので参考にしてください。
連絡先 | 対応時間 | |
小児救急電話相談 | #8000 | 都道府県により異なる |
大阪中毒110番 | 072−727−2499 | 365日24時間対応 |
つくば中毒110番 | 029−852−9999 | 365日24時間対応 |
自己判断で対処しない
子どもがお薬を誤飲してしまった時に自己判断で対処するのは危険です。子どもがお薬を誤飲した場合、一刻も早く体内から取り出した方がいいと思うかもしれませんが、無理に吐かせると気道にお薬が入り込む危険性があります。水や牛乳を飲ませてお薬の成分を薄めようとするのも、かえって体内への吸収を早めてしまい、逆効果になることがあります。
自己判断で対処することで体に悪影響が出る場合もあるため、正しい対処法を確認するまでは何もしないのが基本です。まずは落ち着いて専門機関へ連絡しましょう。
医療機関に伝えるべき情報
子どもがお薬を誤飲してしまった場合、医療機関に的確な情報を伝えることで、より迅速かつ適切な対応が可能になります。確認できる範囲で良いので、焦らず順を追って伝えましょう。
誤飲したお薬の詳細
まず、誤飲したお薬の名前、規格(成分が何mg含まれているのか)、剤型(錠剤・カプセル・シロップなど)、残っている量、包装の有無などを伝えましょう。市販薬の場合は商品名、処方薬であればお薬の袋や説明書を手元に用意しておくとスムーズです。成分がわからない場合は、お薬そのものを持参したり、写真を撮っておくのも有効です。
誤飲した時間
次に誤飲が起きたおおよその時間を伝えましょう。お薬は飲んでから体内に吸収されて効果を発揮するまでの時間がある程度決まっているため、飲んだ直後か、数時間経っているかで対応が変わることがあります。「何時ごろ」「何分前」「夕飯のあと」など、わかる範囲で伝えるようにしましょう。
子どもの年齢や体重など基本情報
お薬の影響を判断するには、子どもの年齢や体重がとても重要です。特に乳児や幼児は少量でも影響が出ることがあるため、できるだけ正確な情報を伝えましょう。また、持病の有無、服用中のお薬があればその情報も必要です。母子手帳やお薬手帳がある場合は持参すると良いでしょう。
今からできる対策法
子どものお薬の誤飲は、ちょっとした油断から起こります。しかし、日頃の心がけでリスクを大きく減らせます。お薬の保管場所や扱い方を見直すことに加え、子どもへの説明や家庭内のルールづくりも有効です。ここからは、今すぐできる具体的な対策を紹介します。
お薬は子どもの手の届かない場所へ保管
お薬は子どもの手の届かない場所へ保管するのが基本です。お薬を目につく場所や手が届くところに置いておくと、子どもが興味を持って誤飲する原因になります。棚の上の方や鍵付きの引き出しなど、子どもの手の届かない場所に保管しましょう。外出時の携帯薬にも注意が必要です。
錠剤やシロップも「お菓子じゃない」と説明
見た目や味から、子どもはお薬をお菓子と勘違いしがちです。子ども向けのシロップ剤やチュアブル錠などは、飲みやすく味つけされているため、子どもが隠れてこっそり飲むケースもあります。
普段から「これはお薬で、体調が悪いときだけ飲むもの」「勝手に飲んだら体に悪いよ」と繰り返し伝えることが大切です。年齢に応じた言葉で説明し、お薬は特別なものであるという認識を少しずつ育てていきましょう。
服薬中の家族のお薬も、その都度片づける習慣を
家族が服薬中のお薬も、子どもが誤って口にするリスクがあります。たとえ短時間でも、テーブルやキッチンに出しっぱなしにするのは避け、服薬後はすぐに元の保管場所へ戻す習慣をつけましょう。
特に祖父母の家に帰省するときなどは注意が必要です。高血圧や糖尿病のお薬などは子どもが誤飲すると命に関わる場合もあります。お薬はきちんとしまうことを家族みんなで習慣づけると良いでしょう。
「かかりつけ薬局」を持ち、処方薬の相談先を明確に
処方されたお薬に関する不安や誤飲の心配がある場合、信頼できる相談先があると安心です。「かかりつけ薬局」を持っておくことで、子どもの体調や薬歴を把握した薬剤師にすぐ相談できます。薬局では、保管方法のアドバイスや誤飲時の対応方法なども教えてくれるので、迷ったらまず相談してみましょう。
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