執筆者・監修者:薬剤師
「暑い季節、ついつい甘い飲み物を手に取ってしまう」
「熱中症対策にスポーツドリンクをたくさん飲んでいる」
暑い季節はこのようなパターンが当てはまる人も多いのではないでしょうか?しかし、知らないうちに「ペットボトル症候群」に陥ることがあり、注意が必要です。特に若い世代や忙しい社会人で増えており、気づいたときには健康を大きく損なっていることもあります。この記事では、ペットボトル症候群の原因や症状、予防法について薬剤師の視点からわかりやすく解説します。
ペットボトル症候群とは?
ペットボトル症候群とは、清涼飲料水やスポーツドリンクの過剰摂取によって引き起こされる健康障害です。手軽さから知らず知らずのうちに糖分を大量摂取してしまい、体に様々な異変をもたらします。特に夏場は熱中症対策と思って飲む量が増えがちなため要注意です。
正式名称:清涼飲料水ケトーシス
医学的には「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれる状態です。大量の糖分摂取と食事の偏りにより、体内でケトン体という物質が増加することで起こります。この状態では、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、体のホメオスタシス(恒常性)が崩れることで様々な症状が現れます。特に若年層や糖尿病の前段階にある方に発症リスクが高いことが報告されています。
糖分を多く含む飲料の継続的摂取で血糖値が急上昇
清涼飲料水500mlには多いもので 約50g(角砂糖約12〜13個分)の糖分が含まれています。これを毎日、あるいは1日に複数本飲むことで、血糖値の急激な上昇と下降を繰り返し、インスリンの分泌機能に負担をかけます。
具体的な糖分含有量の例
● 炭酸系飲料(500ml):約40〜50g
● 果汁100%ジュース(500ml):約20〜30g
● カフェラテ(500ml):約30-40g
このような飲料を習慣的に摂取すると、1日の推奨糖分摂取量(WHO推奨:1日25g以下)を大幅に超えてしまいます。
ペットボトル症候群の主な症状
ペットボトル症候群の症状は軽度から重度まで様々です。初期段階では気づきにくいことも多いため、以下の症状に心当たりがある方は注意が必要です。
強い口渇、倦怠感
常に喉が渇き、水分を取っても渇きが収まらない状態が続きます。また、全身のだるさや疲労感を感じるようになります。これは高血糖状態が続くことで、体が水分を失っているサインです。
頻尿や急激な体重減少
高血糖状態が続くと、体が余分な糖分を排出しようと尿量が増えます。それに伴い、知らず知らずのうちに体重が減少していくことがあります。1週間で2〜3kg減少するケースも珍しくありません。
意識障害(重症時)
症状が進行すると、脱水症状や電解質バランスの崩れから、めまいや意識がもうろうとする状態になることがあります。重症の場合は救急搬送が必要な場合もあり、特に高齢者や基礎疾患のある方は症状が急速に悪化することがあるため注意が必要です。
糖尿病の悪化や発症につながる可能性
継続的な高血糖状態は、2型糖尿病の発症リスクを高めます。また、既に糖尿病の方は症状を悪化させる可能性があります。
ペットボトル症候群チェックリスト
以下のチェックリストに該当する項目が多い方は、ペットボトル症候群のリスクがあるかもしれません。自身分の生活習慣を見直す参考にしてください。
毎日1〜2本以上の清涼飲料水を摂取
コンビニやスーパーで清涼飲料水を日常的に購入し、1日に500mlのペットボトルを1〜2本以上飲んでいませんか。毎日のように自動販売機で購入する習慣がある方は特に注意が必要です。
熱中症対策のつもりでスポーツドリンクを常飲
スポーツドリンクは運動時の水分補給には適していますが、日常的な水分補給源としては糖分が多すぎる場合があります。軽い運動後の水分補給でも、水や麦茶で十分でしょう。
喉が渇きやすい
常に喉が渇き、水分をたくさん取りたくなる症状は高血糖の兆候かもしれません。特に夜中に喉の渇きで目が覚めることがある方は要注意です。
だるさや体重減少、頻尿などの症状がある
説明のつかない疲労感や、急な体重減少、トイレが近くなったなどの症状がある場合は注意が必要です。これらは糖尿病の初期症状とも共通しています。
今日から始められる予防策
ペットボトル症候群は生活習慣の改善で予防できます。以下のポイントを意識して日常生活を送りましょう。
飲み物は無糖飲料か水や麦茶を基本に
日常的な水分補給は、水や麦茶、無糖の飲料を基本にしましょう。甘い飲み物が飲みたい時は、糖分控えめのものを選ぶか、量を減らすようにします。最近では低糖質や糖類ゼロを謳った製品も増えていますが、人工甘味料の過剰摂取も健康上の懸念があるため、バランスを考えることが大切です。
食事を抜かず、バランスよく栄養をとる
忙しさを理由に食事を抜いたり、偏った食事をしたりすると、空腹を紛らわすために甘い飲み物に手が伸びやすくなります。規則正しい食生活を心がけましょう。
甘い飲料は1日1本までなどルールを設ける
どうしても清涼飲料水が飲みたい場合は、「1日1本まで」などのルールを設けると良いでしょう。また、小さいサイズを選ぶこともおすすめです。
利尿作用の強いカフェインやアルコールを控える
カフェインやアルコールには利尿作用があり、体の水分を失いやすくなります。喉の渇きを感じてさらに清涼飲料水を飲むという悪循環を避けましょう。特に寝る前のカフェイン摂取は、夜間の頻尿や不眠の原因となることがあります。
薬局で受けられるサポート
ペットボトル症候群が心配な方は、かかりつけ薬局の薬剤師に相談してみましょう。様々なサポートを受けることができます。
食生活・飲み物の選び方についての相談
薬剤師は栄養や食品に関する知識も持っています。健康的な食生活のアドバイスや、糖分の少ない飲料の選び方などを相談できます。最近では多くの薬局で栄養相談サービスを実施しており、個人の生活習慣に合わせたアドバイスを受けることができます。
血糖コントロールのアドバイス
血糖値が気になる方向けに、日常生活での注意点や血糖値をコントロールするためのアドバイスを受けることができます。一部の薬局では、簡易血糖測定サービスを提供しているところもあります。定期的にチェックすることで、自分の状態を把握しやすくなります。
糖尿病リスクがある人へのアドバイス
家族に糖尿病患者がいるなど、糖尿病のリスクが高い方は、早めの生活習慣改善が重要です。薬剤師に相談して、予防法や健康管理について専門的なアドバイスを受けましょう。
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