薬剤師が解説 アトピー性皮膚炎の症状とセルフケア方法

健康・予防

執筆者・監修者:薬剤師

「かゆみが続く、肌が赤くなってしまう・・・。」
「アトピーって言われたんだけど、どうやって治療していけばいいんだろう」

肌のかゆみや赤み、乾燥を伴うアトピー性皮膚炎は、子どもから大人まで幅広く見られる慢性疾患です。症状の悪化や再発を防ぐためには、正しいスキンケアや生活習慣の工夫が重要です。

この記事では、アトピー性皮膚炎の症状、原因、セルフケア、薬剤師ができるサポートについて解説します。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎は単なる一時的な肌トラブルではなく、長期間にわたって症状が繰り返す慢性的な皮膚疾患です。様々な要因が複雑に絡み合って発症するため、適切な対処法を知ることが重要です。

炎症やかゆみが慢性的に起こる皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返す皮膚の炎症性疾患です。皮膚のバリア機能が低下しているため、外部刺激に対して過敏に反応し、かゆみや炎症が生じやすくなっています。

このかゆみと掻くという行為が繰り返されることで、「かゆみ→掻く→炎症悪化→さらなるかゆみ」という「かゆみ・掻破(そうは:掻きむしって傷つけること)のサイクル」が形成され、症状が長引きやすくなります。

遺伝的要因やアレルギー体質が関係

アトピー性皮膚炎の発症には、遺伝的な要因が大きく関わっています。親や家族にアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など)がある場合、発症リスクが高まるのです。

また、生まれつき皮膚のバリア機能が弱いことや、免疫系の異常反応が起こりやすい体質も関連しています。ただし、遺伝的な要因があるだけでなく、環境との相互作用によって発症するため、適切な環境調整やスキンケアによって症状をコントロールすることが可能です。

アトピー性皮膚炎の主な症状と特徴

アトピー性皮膚炎は年齢によって症状の現れ方や好発部位が異なるという特徴があります。自分や家族の症状がどの段階にあるのか理解することで、より効果的なケアが可能になります。

かゆみ、赤み、乾燥

アトピー性皮膚炎の主な症状は、強いかゆみと皮膚の赤み、そして乾燥です。特に「かゆみ」は最も特徴的な症状で、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となります。夜間にかゆみが悪化して睡眠が妨げられることも少なくありません。

皮膚は乾燥して粉が吹いたようになったり(乾燥性湿疹)、じゅくじゅくとした浸出液が出たりすること(湿潤性湿疹)があります。また、長期間炎症が続くと皮膚が厚くなる「苔癬化(たいせんか)」と呼ばれる状態になることもあります。

乳児期:顔や頭皮に症状が出やすい

乳児期から2歳頃までのアトピー性皮膚炎は、主に頬やおでこ、頭皮などに赤みを伴う湿疹が現れることが特徴です。症状が進行すると、湿疹からじゅくじゅくとした浸出液が出ることもあります。

この時期は皮膚のバリア機能がまだ未熟なため、環境の変化や刺激に敏感に反応します。また、離乳食の開始に伴い食物アレルギーの影響が出ることもありますので、新しい食材を与える際は注意が必要です。多くの場合、2歳頃までに自然に軽快することが多いですが、適切なスキンケアが重要です。

小児期〜成人期:肘・膝の内側などに症状が出やすい

小児期(2歳~学童期)になると症状の好発部位が変わり、肘の内側や膝の裏側、首、手首、足首など、皮膚の柔らかい部分や関節の曲がる部分に症状が現れやすくなります。学童期から思春期、成人期にかけては、顔面(特に目の周り)や首、上半身に症状が目立つようになります。

また、手の甲や手首など、日常的に外部刺激を受けやすい部位にも症状が出やすいです。成人型のアトピー性皮膚炎では、慢性的な経過をたどり、赤みが暗赤色になったり、皮膚が厚くなったりする傾向があります。

症状の悪化・再発のリスク

アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性疾患です。環境の変化(季節の変わり目、引っ越しなど)、ストレス、不規則な生活、食生活の乱れなどがきっかけとなって症状が悪化することがあります。

特に、治療を自己判断で中止したり、不十分なスキンケアを続けたりすることで症状が再燃するリスクが高まります。また、掻きむしることで皮膚に傷がつき、細菌感染を起こして症状がさらに悪化する「二次感染」にも注意が必要です。

症状を悪化させる原因

アトピー性皮膚炎の症状が悪化する原因は多岐にわたります。日常生活の中での刺激要因を理解し、それらを避けることが症状コントロールの第一歩となります。

皮膚の乾燥

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は、健康な皮膚と比較して水分保持能力が低下しています。皮膚の最も外側にある角質層の細胞間脂質(皮膚の角質細胞の間を埋める脂質)が減少していることや、天然保湿因子(肌が本来が持つ保湿成分)が少ないことが原因です。

そのため、乾燥しやすく、バリア機能が低下しているため外部からの刺激を受けやすくなっています。特に湿度の低い冬場や、エアコンの効いた室内では皮膚の乾燥が進みやすく、かゆみや炎症が悪化しやすくなります。定期的な保湿ケアが非常に重要です。

アレルゲン(ほこり、花粉、食物など)

ハウスダストやダニ、ペットの毛、花粉、カビなどのアレルゲンが皮膚に接触することで症状が悪化することがあります。特にダニはアトピー性皮膚炎を悪化させる大きな要因で、寝具や絨毯、ぬいぐるみなどに多く存在します。

食物アレルゲンについては、特に乳幼児期に影響が大きく、卵、牛乳、小麦、大豆、ナッツ類などが関連することがあります。ただし、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係は複雑です。食物除去治療については医師の指導のもとで行いましょう。

ストレスや睡眠不足

ストレスや睡眠不足はアトピー性皮膚炎の症状を悪化させる重要な要因です。ストレスを感じると体内でさまざまなホルモンやサイトカイン(様々な細胞から分泌されるタンパク質で、免疫などを調節する細胞間の通信物質)が分泌され、免疫系のバランスが崩れることで皮膚の炎症反応が起きやすくなります。

また、ストレスによってかゆみを強く感じるようになり、掻くことで症状が悪化するという悪循環を引き起こします。十分な睡眠も皮膚の修復と免疫機能の調整に重要で、睡眠不足が続くと皮膚のバリア機能が低下し、症状の悪化を招きます。

不適切なスキンケアや衣類による刺激

強い洗浄力のある石鹸や熱いお湯での洗浄は、皮膚の保護膜(皮脂膜)を過剰に取り除いてしまい、皮膚の乾燥や皮膚への刺激をもたらします。また、アルコールを多く含む化粧品やスキンケア製品、香料や防腐剤などの添加物が多い製品も皮膚に刺激を与えることがあります。

衣類に関しては、ウールやナイロン、合成繊維などの素材や、タイトな衣類、タグによる摩擦も症状を悪化させる原因です。洗剤の残留物が皮膚を刺激することもあるため、すすぎを十分にすることも大切です。

セルフケアのポイント

アトピー性皮膚炎の症状をコントロールするためには、日常のセルフケアが非常に重要です。正しいスキンケアを習慣化することで、症状の改善と再発防止につながります。

保湿

保湿はアトピー性皮膚炎のセルフケアの中で最も重要です。皮膚の水分を保ち、バリア機能を強化することで、外部刺激から肌を守り、かゆみや炎症を軽減することができます。

保湿剤は一般的に、クリーム、軟膏、ローションなどの剤形がありますが、乾燥が強い場合は油分の多いクリームや軟膏タイプがおすすめです。季節や皮膚の状態に合わせて剤形を使い分けるとよいでしょう。

入浴後は皮膚が水分を含んだ状態であるため、できるだけ早く保湿剤を塗ることが効果的です。入浴後時間が経つと皮膚の水分が蒸発してしまい、かえって乾燥を招くことがあります。

保湿剤の塗り方は、手のひらで温めてから優しく塗り広げます。特に症状が出やすい部位や乾燥しやすい部位には重点的に塗りましょう。

保湿剤は入浴後だけでなく、1日に何回か使うのがおすすめです。外出前や帰宅後、朝起きた時や寝る前など、肌が乾いたなと感じたらいつでも塗ってください。こまめな保湿が肌の良い状態を保つコツです。

入浴

入浴はアトピー性皮膚炎のケアにおいて、皮膚の汚れや汗を落とすだけでなく、適切に行えば皮膚に水分を与える重要な機会となります。しかし、間違った入浴方法はかえって症状を悪化させることがあるので注意が必要です。

入浴の際は38~40℃程度のぬるめの湯に10分以内で浸かるのが理想的です。熱いお湯は皮膚の脂質を奪い、乾燥やかゆみを悪化させるため避けましょう。石鹸は中性または弱酸性で、香料や着色料などの添加物が少ないものを選びます。

石鹸は必要な部分(脇、首、陰部など汗や皮脂の多い部分)だけに使用し、泡立てた石鹸を優しくなでるように洗います。ごしごし洗ったり、ナイロンタオルのような刺激の強いものでこすったりするのは避けましょう。入浴後は、タオルで軽く押さえるようにして水分を取り、こすらないようにします。

衣類・生活環境

アトピー性皮膚炎の管理において、肌に直接触れる衣類や生活する環境の調整は重要なポイントです。日常的な工夫で症状の悪化を防ぎ、快適に過ごすことができます。

衣類は綿やシルクなどの天然素材で、柔らかく肌触りの良いものを選びましょう。合成繊維や毛織物は摩擦や刺激になりやすいので避けるのが良いでしょう。衣類のタグは切り取るか、縫い目が外側になるように着用するのもおすすめです。

洗濯の際は、香料や蛍光剤を含まない洗剤を使い、すすぎを十分に行うことで残留物による刺激を減らすことができます。

生活環境については、室温は20~25℃、湿度は50%を目安に保つと良いでしょう。特に冬場や空調使用時は乾燥に注意し、加湿器の使用が有効です。

寝具やカーペット、カーテンなどはダニやハウスダストが溜まりやすいため、こまめな掃除や洗濯、定期的な天日干しが大切です。ペットの飼育はアレルギー症状を悪化させる可能性があるため、特に症状が重い場合は注意が必要です。

食生活

食事は肌の健康にも大きく影響します。アトピー性皮膚炎と食生活の関係を理解し、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

アトピー性皮膚炎の方にとって、バランスの良い食事は皮膚の健康を維持するために重要です。特にオメガ3脂肪酸(青魚に多く含まれる)、ビタミンA、C、E、亜鉛などは皮膚の健康維持や炎症の抑制に役立ちます。また、腸内環境を整える発酵食品や食物繊維も免疫バランスの調整に良いとされています。

食物アレルギーがある場合は、アレルゲンとなる食品を避けることが大切ですが、自己判断での過度な食事制限は栄養不足を招く恐れがあります。食物アレルギーが疑われる場合は、アレルギー専門医の指導のもとで原因食物の特定と対応を行いましょう。

刺激の強い辛い食べ物や、アルコール、過度の糖分摂取は、血行を促進してかゆみを悪化させることがあるため、控えめにすると良いでしょう。

かかりつけ薬剤師に相談できること

アトピー性皮膚炎は長期的な管理が必要な疾患です。かかりつけ薬剤師は医師と患者さんの間をつなぐ重要な役割を担い、日常生活での疾患管理をサポートしています。お薬の相談だけでなく、生活習慣の改善や適切なスキンケア方法についても相談することができます。

外用薬や内服薬の正しい使い方

医師から処方されるステロイド外用薬や免疫調整薬、抗ヒスタミン薬などの使い方について、かかりつけ薬剤師に相談することができます。「どの部位にどのくらいの量を塗るのか」「いつ使用すべきか」「副作用の心配はあるか」など、具体的な使用方法から不安や疑問まで、遠慮なく質問することが大切です。

ステロイド外用薬については特に誤解が多く、適切に使用すれば非常に有効で安全な治療法ですが、自己判断での使用中止や不適切な使用が症状悪化の原因になることがあります。薬剤師は、医師の処方意図を理解し、正しく使用するサポートをしてくれます。

保湿剤やスキンケア製品の選び方

市販の保湿剤は種類が多く、どれを選べばよいか迷うことも多いでしょう。かかりつけ薬剤師は患者さんの皮膚の状態や生活環境を考慮して、最適な製品を提案することができます。

「刺激が少なく安心して使えるもの」「コスパの良いもの」「使い心地の良いもの」など、様々な視点からアドバイスを受けることができるでしょう。

また、季節の変化に合わせた保湿剤の使い分け方や、赤ちゃんから高齢者まで年齢に応じたスキンケア方法についても相談できます。アレルギー反応を起こしやすい成分を避けるなど、個々の状態に合わせた細やかなアドバイスができるのも薬剤師の強みです。

悪化時の医療機関受診のタイミング

アトピー性皮膚炎は自己管理が重要ですが、症状が悪化した場合はいつ病院を受診すべきか判断が難しいことがあります。かかりつけ薬剤師は患者さんの普段の状態を把握しているため、「このような症状が出たら受診した方が良い」というタイミングについてもアドバイスをしてくれます。

例えば、「かゆみで眠れないほど症状が悪化している」「皮膚が赤く腫れてじゅくじゅくしている」「皮膚に熱感や痛みがある」などの場合は、二次感染の可能性もあるため早めの受診が必要です。また、長期間症状が改善しない場合や、使用している薬の効果が感じられなくなった場合なども受診を検討すべきタイミングです。

アトピー性皮膚炎は完全に治すのが難しい疾患ですが、適切なケアと治療によって症状をコントロールし、快適に生活することは十分可能です。症状の改善には専門家のサポートが不可欠ですが、日々のセルフケアも同じくらい重要です。特に保湿を中心としたスキンケアを継続することで、肌のバリア機能を高め、かゆみの軽減につなげることができます。

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