食後すぐの眠気やだるさは食後高血糖が原因?

健康・予防

執筆者・監修者:薬剤師

「食後に強い眠気やだるさを感じる」
「食後は仕事に集中できない…」

そんな経験はありませんか?実はそれ、食後高血糖が関係している可能性があります。空腹時の血糖値が正常でも、食後に急上昇するタイプの高血糖は、将来的な糖尿病や動脈硬化のリスクにもつながることがあります。

今回は、食後高血糖の特徴やセルフチェック法、日常生活でできる予防・改善方法について、薬剤師の視点からわかりやすく解説します。

食後血糖とは?

食事をすると、摂取した炭水化物(糖質)は消化されてブドウ糖となり、腸から吸収されて血液中に入ります。これによって血液中のブドウ糖濃度、いわゆる血糖値が上昇します。通常、健康な方では食後30分から1時間で血糖値がピークに達し、その後インスリンというホルモンの働きによって徐々に下がっていきます。

食事から2時間後の血糖値測定で140mg/dl以上の数値が確認された場合、食後高血糖と判定されます。朝食前などの空腹時血糖値は正常でも、食後の血糖値だけが急上昇するケースも少なくありません。これは健康診断では見逃されがちな問題です。

食後高血糖の主な原因

食後に血糖値が急上昇する原因はいくつかあります。日常生活の習慣や体質的な要因が複合的に影響していることが多いのです。

炭水化物中心の食事や早食い

白米やパン、麺類などの炭水化物を多く含む食事は、血糖値を急上昇させやすい傾向があります。特に精製された炭水化物(白米、白パン、白砂糖など)は消化・吸収が早く、血糖値の急上昇を引き起こします。

また、早食いは食べ物の消化・吸収を早め、血糖値の急激な上昇につながります。脳が食事による満腹感を認識するには、血糖値が上昇してから約15分かかります。そのため、食後高血糖を防ぐには、少なくとも15分以上時間をかけてゆっくり食事することが効果的です。

筋肉量の低下、運動不足

筋肉はブドウ糖を積極的に取り込んでエネルギーとして利用する組織です。筋肉量が少なかったり、運動不足だったりすると、取り込まれるブドウ糖の量が減少し、結果として血液中のブドウ糖濃度が高くなりやすくなります。

加齢や運動不足による筋肉量の減少は、食後高血糖の大きな要因の一つです。特にデスクワークが多い方や日常的に運動習慣がない方は注意が必要です。

遺伝的な要因

食後高血糖は、遺伝的な要因も関係しています。家族に糖尿病患者がいる方は、インスリンが十分に出にくかったり、効きにくい体質を受け継いでいる可能性があり、食後に血糖値が上がりやすくなることがあります。

また、日本人を含むアジア人は欧米人に比べて、同じ体格でも糖尿病になりやすいという特徴があります。これはアジア人の遺伝的体質が関係しており、過剰なカロリーを効率的に処理できない傾向があるためです。

そのため、わずかな食べ過ぎや運動不足による軽度の体重増加であっても、糖尿病のリスクが高まることが指摘されています。

注意したい食後高血糖の症状

食後高血糖は自覚症状が出にくいですが、いくつかの特徴的な症状があります。これらの症状に心当たりがある方は、食後高血糖の可能性を考えてみましょう。

食後の強い眠気、集中力の低下

食後に急激に血糖値が上昇すると、それを下げようとして大量のインスリンが分泌されます。この反応により、血糖値が急激に低下することがあり、強い眠気や集中力の低下として感じられます。

特に炭水化物中心の食事の後に「どうしても眠くなってしまう」「仕事や勉強に集中できなくなる」という症状がある場合は、食後高血糖からの反動である可能性が高いです。

食後2〜3時間で空腹感がある

食後高血糖により大量のインスリンが分泌されると、血糖値が必要以上に下がってしまうことがあります。食後2〜3時間で再び空腹感を強く感じる原因になります。

本来なら4〜5時間程度は持続するはずの満腹感が短時間で消え、間食を欲する場合は食後高血糖のサインかもしれません。

血糖スパイクがある

「血糖スパイク」とは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に下降する現象です。血糖値の乱高下は体に大きな負担をかけ、短期的には疲労感やイライラ、長期的には血管へのダメージを引き起こす可能性があります。

最近では、簡易的な血糖測定器で自分の血糖値の変動を確認できるようになりました。食後1〜2時間の血糖値が急激に上昇する場合は、血糖スパイクが起きている可能性があります。

食事でできる対策

食後高血糖の予防・改善には、食事の内容や食べ方の工夫が非常に効果的です。無理なダイエットをするのではなく、食べ方を変えるだけでも効果が期待できます。

食べる順番を意識する

同じ食事内容でも、食べる順番を変えるだけで食後の血糖値の上昇を抑えることができます。最も効果的な食べ方は「ベジタブルファースト」といわれる方法で、以下の順番で食事を摂ります。

 1.最初に野菜、きのこ、海藻類などの食物繊維を多く含む食品
 2.次にタンパク質を多く含む肉や魚、卵、大豆製品
 3.最後に炭水化物(ご飯やパン、麺類)

この食べ方により、炭水化物の消化・吸収がゆるやかになり、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

よく噛んでゆっくり食べる

食事は最低でも15分以上かけてゆっくりと、一口30回以上を目安によく噛んで食べることをお勧めします。ゆっくり食べることで満腹感を感じやすくなり、結果的に食べ過ぎを防止できます。

また、よく噛むことで唾液の分泌が促進され、消化を助けるだけでなく、満腹ホルモンの分泌も促進されます。これにより、食後の血糖値上昇がゆるやかになります。

血糖値の急上昇を防ぐ食材を取り入れる

血糖値の上昇を緩やかにする食材を積極的に取り入れましょう。

 食物繊維が豊富な野菜、きのこ、海藻類
 良質なタンパク質(魚、鶏肉、豆腐など)
 健康的な脂質(オリーブオイル、アボカド、ナッツ類)
 低GI食品(玄米、全粒粉パン、オートミールなど)
  *低GI食品とは・・・摂取後の血糖値が上昇しにくい食品

また、酢や柑橘類に含まれる酸は、炭水化物の消化・吸収を遅らせる効果があります。酢を使った料理や、食前に少量の酢を摂取することも効果的です。

運動でできる対策

運動は食後高血糖の改善に非常に効果的です。特別なトレーニングではなく、日常生活に取り入れやすい方法から始めましょう。

食後の軽い運動の習慣化

食後の軽い運動は、上昇した血糖値を下げるのに効果的です。食後30分以内に始める15〜30分程度の軽い運動が理想的です。
おすすめの運動は以下となります。

 食後のウォーキング(時速4〜5kmの早歩き)
 階段の上り下り
 家事や庭仕事
 軽いストレッチ

激しい運動は消化を妨げる可能性があるため、食後はあくまで軽い運動を心がけましょう。定期的な筋トレも筋肉量を増やし、血糖値を下げる効果が期待できます。週に2〜3回、各部位を鍛える簡単な筋トレを取り入れると良いでしょう。

薬局で受けられるサポート

薬局は病気になってから行く場所ではなく、健康維持や疾病予防のための相談窓口としても活用できます。特に最近の薬局では、さまざまな健康サポートを受けることができます。

薬局で手軽に検査ができる検体測定室(ゆびさきセルフ測定室)

最近では「ゆびさきセルフ測定室」という名称で、薬局内に自己採血による検査が可能な設備を設けている薬局が増えています。指先から少量の血液を採取し、HbA1c(過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する指標)や血中脂質などを測定することができます。

健康診断の間の血糖値チェックや、食後の血糖値変動を確認したい場合に便利です。検査結果はその場で出るため、薬剤師に相談しながら自分の健康状態を把握できます。詳しくはゆびさきセルフ測定室のサイトをご確認ください。

ゆびさきセルフ測定室について詳しく知りたい方はコチラ

血糖値を意識した食事・生活アドバイス

薬剤師は医薬品の専門家であるだけでなく、生活習慣病予防のためのアドバイスも行っています。あなたの生活習慣や食事内容をもとに、血糖値の上昇を抑える具体的な方法をアドバイスすることができます。

血糖値について気になることがある方や詳しく知りたい方は、お近くの薬局で相談をしてみましょう。

気軽に薬局の薬剤師に相談してみたい方には、LINEの「つながる薬局」というサービスを使ってみるのもおすすめです。LINEのつながる薬局を友だち追加し、お好きな薬局をかかりつけ薬局として登録すると、「薬局に相談」という機能を使って気軽に薬局の薬剤師に健康相談ができます。

つながる薬局は、薬局への処方箋送信から健康・お薬相談お薬手帳までLINEひとつでご利用いただけるサービスです!
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血糖値対策サプリメントや機能性表示食品の相談

薬局では、血糖値対策に役立つサプリメントや機能性表示食品についての相談も受け付けています。「機能性表示食品」とは、特定の保健機能について科学的根拠に基づいた機能性を表示している食品です。

血糖値の上昇を抑える成分としては、難消化性デキストリン、サラシア由来成分、ギムネマ酸、桑の葉エキスなどがあります。これらの製品は、医薬品ではなく食品ですので、効果の現れ方には個人差があります。購入前に薬剤師に相談し、自分に合ったものを選ぶことをお勧めします。

既に糖尿病治療中の方への薬の飲み方や副作用フォロー

糖尿病の治療を受けている方にとって、薬局は身近な医療サポートの場です。薬の飲み方や副作用の対処法、薬と食事の関係などについて、いつでも薬剤師に相談できます。

特に食後高血糖を抑える薬(速効型インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬など)は、服用するタイミングが効果に大きく影響します。正しい服用方法や気をつけるべき点について、薬剤師にご相談ください。

食後高血糖は目に見えにくい健康リスクですが、自分の体調の変化に気づき、適切な対策を取ることで、より健康的で活力ある毎日を送ることができるでしょう。まずは、食後の眠気やだるさを「仕方がない」と諦めるのではなく、食後高血糖の可能性を考え、小さな改善から始めてみませんか?

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