執筆者・監修者:薬剤師
「冬になると毎年のように胃腸炎が流行って心配…」
「もし家族がかかったら、どう対応すればいいの?」
そんな心配をしていませんか?
冬季は、ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎が流行しやすい時期です。ノロウイルスは感染力が非常に強く、学校や病院、高齢者施設などでの集団感染も引き起こします。
だからこそ、予防だけでなく、感染してしまったときの対応まで知っておくことで、いざというときにも落ち着いて行動できます。
本記事では、ノロウイルスの基礎知識、予防のポイント、感染してしまったときの対処法、薬局で受けられるサポートについて、薬剤師の視点からわかりやすく解説します。
ノロウイルスとは
まず、ノロウイルスの基本情報について解説します。
ウイルスの特徴
ノロウイルスは、11月〜3月の寒い時期に流行する感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。冬場の感染性胃腸炎のうち、約6〜7割はノロウイルスによって引き起こされています。ノロウイルスが流行しやすい背景には、以下のようなウイルスの特徴があります。
● 排泄物中のウイルス量が多い
● 感染力が強い
● ウイルスが排泄される期間が長い
感染力が非常に強く、少量のウイルスが体内に入るだけでも感染してしまいます。家庭内や保育園・学校・施設などでの集団感染も起こりやすいウイルスです。ノロウイルスにはアルコール消毒が効きにくい点も、対策を難しくしている要因のひとつです。
主な症状
ノロウイルスの主な症状は吐き気やおう吐、激しい下痢、腹痛などです。感染後、通常24~48時間の潜伏期間を経て発症します。
通常、症状は1〜2日で治まりますが、持病がある方や高齢者、乳幼児などでは繰り返しのおう吐・下痢により、脱水症状になることもあるため注意が必要です。
主な感染経路
ノロウイルスは何らかの経路でウイルスが口に入ることで感染します。感染経路は大きく分けて以下の3つがあります。
● 経口感染
● 接触感染
● 飛沫感染
それぞれの感染経路について詳しく見ていきましょう。
経口感染
ノロウイルスで汚染された食品を加熱不十分で食べた場合に感染します。経口感染の原因としては牡蠣などの貝類が有名です。また、ノロウイルスに感染した人が触れた食品を食べて二次的に感染するケースもあります。
接触感染
感染者の便やおう吐物に直接触れることにより、手指にノロウイルスがついてしまい、その手指で触れたものが口に入ることで感染します。
感染者が排便後に十分に手を洗わずに触れたドアノブなどに触れることで、手指を介して感染することもあります。
飛沫感染
感染者がおう吐した際には、ノロウイルスを含んだ飛沫が1~2メートル程度周囲に飛び散りますが、その飛沫を吸い込むことで感染することもあります。
おう吐物や排泄物を放置すると、乾燥してノロウイルスの一部が舞い上がり、近くを通りかかった人が感染してしまうケースもあるため、おう吐物や排泄物は適切に処理しなくてはなりません。
ノロウイルス感染を予防する4つのポイント
感染力が非常に強いノロウイルスへの感染を予防するためにはどうしたらよいのでしょうか。ここからは、ノロウイルス感染を予防する4つのポイントをご紹介します。
ノロウイルスを「持ち込まない」
ノロウイルス感染を予防する上でもっとも大切なのは、食べ物を扱う場所にノロウイルスを持ち込まないことです。ノロウイルスに感染している人が食品を扱うと、その食べ物を通じて感染が広がるおそれがあります。
家庭で調理を担当する方や食事を作る仕事をしている方は、普段から感染しないように丁寧な手洗いや日々の健康管理を意識しましょう。少しでも腹痛や下痢などの症状がある場合には、食品を取り扱う作業をしないことも大切です。
ノロウイルスを「つけない」
食品や食器、調理器具などにノロウイルスをつけないように、作業前の手洗いを心がけることも大切です。
手洗いが推奨されるタイミングは下記の通りです。
● トイレのあと
● 調理場に入る前
● 料理を盛り付ける前
● 作業用の手袋を着用する前
● 食事の前
● 外から帰ったあと
指先、指の間、爪の間、手首など、汚れが残りやすい部分を意識して、石けんと流水で30秒以上洗いましょう。手洗い後はペーパータオルなどでしっかりと水分をふき取ります。感染予防のためにはタオルの共有は避けるようにしましょう。
ノロウイルスを「やっつける」
食品についたノロウイルスを死滅させるためには、中心温度85℃~90℃で90秒以上加熱しなければなりません。
調理器具は、85℃以上の熱湯で1分以上加熱するか、塩素濃度200ppm【約0.02%】の塩素消毒液に浸して消毒します。塩素消毒液は、市販の塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)を薄めて使用します。希釈方法は以下のとおりです。
<準備するもの>
● 塩素系漂白剤
● 500mlのペットボトル(キャップ付き)
● ビニール手袋
<希釈方法>
① 空のペットボトルに塩素系漂白剤をキャップ0.5杯弱入れる
② 全体で500mlになるように水を加える
③ キャップをしっかり閉めてよく振って混ぜ合わせる
塩素系漂白剤を扱う際は、皮膚に直接つかないよう必ずビニール手袋を着用し、換気のため窓をあけて作業するようにしましょう。
なお、塩素消毒液については、ウイルスが空気中に飛び散る可能性があるため、スプレー容器の使用は避けてください。塩素消毒液を浸した布やペーパータオルを使って静かに拭き取るようにしましょう。
ノロウイルスを「ひろげない」
身近な人がノロウイルスに感染してしまったときは、環境・食器などの消毒を徹底して感染をひろげないようにすることが大切です。トイレ・洗面所・ドアノブ・スイッチなど、手が触れる場所の消毒を徹底しましょう。タオルは共用せず、洗濯時も分けて洗うと安心です。
ノロウイルスに感染してしまったときの対処法
ここまでノロウイルスの予防法について解説してきましたが、それでもノロウイルスに感染してしまったらどのように対処すればいいのでしょうか。
こまめに水分補給をおこなう
ノロウイルスに対する特効薬はないため、症状に合わせて整腸剤や解熱剤などを使用しながら療養します。おう吐・下痢の症状が続いているときに最も気を付けなければならないのが脱水です。
脱水になると、皮膚の乾燥やめまい、ふらつき、手足の冷えなどの症状が起こります。さらに脱水症状がひどくなると、尿量減少や頭痛といった症状が出てきます。おう吐・下痢の症状が続いているときは、少量ずつこまめな水分補給を心がけるようにしましょう。
その際、水分だけでなく、電解質(ミネラル)も一緒に補う必要があります。水分と電解質をバランスよく補うためには経口補水液を活用するのがおすすめです。
吐き気・おう吐の症状が強く、経口補水液を摂取するのが難しい場合は点滴が必要になることもあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
食事は無理せず、消化の良いものから再開する
おう吐の症状が治まったら、おかゆ、食パン、バナナなど消化の良い炭水化物から少しずつ食事を再開しましょう。最初はいつもの食事量の半分程度を目安にし、下痢の症状を見ながら2〜3日かけて通常の食事に戻していきます。
油分の多いメニュー(ラーメン、菓子パン、揚げ物など)や乳製品、辛い物などは腸を刺激するため、体調が回復するまでは控えるようにしましょう。
おう吐物・排泄物の正しい処理方法
ノロウイルスの感染をひろげないようにするためには、おう吐物・排泄物を適切に処理しなくてはなりません。おう吐物・排泄物の正しい処理方法を紹介します。
使い捨て手袋・マスクを着用
感染者のおう吐物・排泄物を処理する際は必ず使い捨て手袋とマスクを着用しましょう。可能であれば使い捨てのエプロンも使用すると安心です。
ペーパータオルで拭き取り、次亜塩素酸ナトリウムで消毒
おう吐物は乾燥する前にペーパータオルで拭き取ります。その後、おう吐物が付着していた場所を塩素消毒液で消毒します。
拭き取った紙はビニール袋に密閉して廃棄
使用したペーパータオルや手袋などはビニール袋に密閉して廃棄します。廃棄の際は、使用したものが十分浸る量の塩素消毒液(塩素濃度1,000ppm【約0.1%】)を入れることが望ましいとされています。処理が終わったら部屋の換気と手洗いをしましょう。
塩素濃度1,000ppm【約0.1%】の塩素消毒液は、下記の希釈方法で作ることができます。
<準備するもの>
● 塩素系漂白剤
● 500mlのペットボトル(キャップ付き)
●ビニール手袋
<希釈方法>
① 空のペットボトルに塩素系漂白剤をキャップ2杯弱入れる
② 全体で500mlになるように水を加える
③ キャップをしっかり閉めてよく振って混ぜ合わせる
薬局でできるサポート
薬局では、ノロウイルスに感染した際のサポートも行っています。最後に薬局で受けられるサポートについて解説します。
脱水症状を防ぐための水分・電解質補給のアドバイス
ノロウイルスに感染したときに最も心配なのが脱水です。薬局では、適切な水分・電解質補給についてアドバイスをしたり、必要に応じて受診を勧めたりします。
症状に応じた市販薬や整腸剤の相談
薬局では、ノロウイルス感染時に使用できる吐き気止めや整腸剤、解熱剤なども取り扱っています。何を服用していいかわからないときは気軽に相談してみましょう。
感染予防グッズや家庭内ケア用品の紹介など
消毒用品、使い捨て手袋、マスク、経口補水液など、ノロウイルスへの感染に備えておきたいグッズの準備もサポートしています。
なお、ノロウイルスの感染対策や感染時の対処法について薬剤師に相談したい場合は、LINEの「つながる薬局」のサービスがおすすめです。LINEで「つながる薬局」を友だち登録し、お好きな薬局をかかりつけ薬局として設定するだけで、薬局の薬剤師にLINEで気軽に相談できます。
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