受動喫煙が健康に与える影響とは?

健康・予防

執筆者・監修者:薬剤師

「自分はタバコを吸っていないのに、咳や喉の違和感が続く…」

そんな経験はありませんか?受動喫煙による健康被害は、喫煙者だけでなく、周囲の人にも及びます。特に子どもや妊婦、高齢者にとっては深刻な影響をもたらすことも。この記事では、受動喫煙の基礎知識と健康への影響について解説します。

受動喫煙とは?

自身がたばこを吸っていなくても、周囲の人が吸っているたばこの煙を吸い込んでしまうことを「受動喫煙」と言います。この「受動喫煙」によって健康被害を受けてしまうことがあります。

受動喫煙は、日常生活において家庭や職場、公共の場など、さまざまな場面で起こり得ます。まずは、受動喫煙の基本的な考え方を整理しておきましょう。

非喫煙者が他人のたばこの煙で健康被害を受ける

受動喫煙とは、非喫煙者が周囲の人の喫煙によって発生するたばこの煙を吸い込んでしまうことを指します。受動喫煙によって自分ではたばこを吸っていないにもかかわらず、喫煙者と同じ有害物質を体内に取り込んでしまい健康被害を受ける点が大きな問題です。

受動喫煙による健康被害については多くの研究が行われており、肺がんのリスクは1.28倍、虚血性心疾患は1.3倍、脳卒中は1.24倍になると報告されています。

このように、受動喫煙による健康被害は科学的根拠に基づいて示されています。

主流煙と副流煙の違い

たばこの煙には「主流煙」、「呼出煙」、「副流煙」があります。主流煙はフィルターなどたばこの吸い口から喫煙者が直接吸い込む煙、呼出煙は喫煙者が吐き出した煙、そして副流煙は火のついたたばこの先端から立ち上る煙です。

たばこによる有害物質は主流煙よりも副流煙に多く含まれているため、受動喫煙によって健康被害を引き起こしてしまいます。

三次喫煙(残留たばこ煙)にも注意

受動喫煙だけでなく、三次喫煙(残留たばこ煙)にも注意が必要です。

その場に喫煙者がいなくても、ホテルやカラオケボックスの喫煙ルームや新幹線の喫煙車両、ヘビースモーカーが所有する車などでたばこのにおいを感じた経験がある方も多いのではないでしょうか?

たばこの火を消したあとも家具やカーテン、壁紙、喫煙者の衣類などにはたばこの煙に含まれる有害物質が残ってしまいます。残った有害物質が空気中で変化し、それを吸い込むことで肺がんや虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群につながる可能性があります。

喫煙者がいない空間であってもたばこの影響が残るため、小さな子どもがいる家庭では特に注意が必要です。

受動喫煙が引き起こす健康リスク

受動喫煙は一時的な不快感だけでなく、長期的な健康リスクとも深く関係しています。影響は年齢や体調によって異なりますが、誰にとっても無視できない問題です。

肺がん、心筋梗塞、脳卒中などのリスク増加

受動喫煙は、肺がんや心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高めることが研究により明らかになっています。2016年の国立がん研究センターの研究により、受動喫煙の影響を受けている人は受けていない人に比べて、肺がんになるリスクが約1.3倍高いということがわかりました。

また、受動喫煙により心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなることもわかっています。これはたばこの煙に含まれる有害物質が血管の内側の細胞を傷つけ、動脈硬化を引き起こすためです。

たばこを吸わない人であっても、わずか30分の受動喫煙で血管の内側の細胞が傷つくとされています。この状態が続き動脈硬化が進むことで、心臓や脳に血液を送る血管に異常が生じ、心筋梗塞や脳卒中につながります。

子どもへのリスク

受動喫煙は、子どもの健康にも影響を与えます。子どもは大人に比べて呼吸器や中枢神経の発達が未熟で、大人よりも受動喫煙の影響を受けやすいため注意が必要です。

受動喫煙によりリスクが高まると考えられている疾患には喘息や中耳炎、虫歯などがあります。また、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高めるという報告もあります。

子どもの受動喫煙というと、子どもと一緒にいる家族が吸っているたばこの煙を子どもが吸い込んでしまうことだけを考えがちです。しかし、子どもの受動喫煙の大部分は室内の空気中に滞留しているたばこの煙を気づかないうちに吸ってしまうことで起こっています。

子どもの受動喫煙を防ぐためには、子どもがいないときであっても子どもが過ごす家の中でたばこを吸わないようにすることが大切です。

妊婦へのリスク

妊婦が受動喫煙にさらされると、胎児への影響も懸念されます。

たばこの煙に含まれる有害物質は、胎児や胎盤への酸素供給を妨げるほか、胎盤の老化を早めて働きを弱めることが知られています。その結果、低出生体重児や早産のリスクが高くなります。

また、子宮外妊娠や常位胎盤早期剥離、前置胎盤との関連についても報告があります。

高齢者へのリスク

高齢者はもともと持病を抱えていることが多く、受動喫煙による影響が重なりやすい傾向があります。心臓や肺の機能が低下している場合、症状が悪化しやすくなる点にも注意が必要です。

職場・家庭で受動喫煙の影響を避けるのが難しい理由

受動喫煙は避けたいと思っていても、現実には完全に防ぐのが難しい場面があります。その理由を知ることで、より適切な対策を考えやすくなります。

ここからは職場・家庭での受動喫煙対策が難しい理由を解説します。

家庭内での完全分煙は困難

家庭内では、喫煙場所を分けたとしても完全な分煙は困難です。たとえば、換気扇を回しながら喫煙していたとしても、煙の一部は室内に残ってしまいます。また、壁などにたばこの煙が付着し、そこから長期間にわたって有害物質が揮発することが知られています。

家庭内での受動喫煙を防ぐためには、喫煙は必ず屋外でしなければなりません。

屋外喫煙でも衣類や髪に煙が付着

屋外で喫煙していた場合でも、衣類や髪にはたばこの煙が付着しています。そのまま室内に入ることで、三次喫煙が起こる可能性があります。

空気清浄機では受動喫煙は防げない

「空気清浄機を使っているから室内で喫煙しても大丈夫」と考えている人も多いですが、空気清浄機にはたばこの匂いを消す作用はあるものの、たばこの煙に含まれる有害物質を除去する効果はほとんどありません。

たばこの煙には、200種類以上の有害物質が含まれており、ガス相(気体)と粒子相(細かい粒子)で構成されます。空気清浄機の中には、たばこの煙に含まれる粒子状の有害物質をある程度除去できるものもあります。しかし、ガス状の有害物質まで十分に取り除ける機種はほとんどないのが実情です。

そのため、喫煙室専用として設計されたものでない限り、空気清浄機だけでたばこの煙による健康影響を防ぐのは難しいと考えられます。

さらに、空気清浄機を使用する際は換気の方法にも注意が必要です。使い方によっては、処理しきれなかったガス状成分が室内に拡散してしまうおそれがあります。

受動喫煙による症状がある場合の対応

もし受動喫煙による体調不良を感じた場合、我慢せずに行動することが大切です。早めの対応が健康被害を最小限に抑えることにつながります。

かかりつけの医師や薬剤師に相談

咳や頭痛、めまいなどが続く場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。また、薬剤師も健康相談の窓口として活用できます。

なお、受動喫煙による影響はすぐに症状として現れない場合もあります。体調不良の原因がはっきりしないまま、咳や倦怠感、頭痛などが続くケースも少なくありません。特に、日常的にたばこの煙にさらされる環境にいる場合は、本人が自覚していなくても身体に負担がかかっている可能性があります。

「気のせいかもしれない」と我慢せず、少しでも不調を感じたら専門家に相談する姿勢が大切です。

家族や周囲の喫煙者に禁煙支援を行う薬局を紹介

受動喫煙を防ぐためには、身近な人に禁煙してもらうことがもっとも有効な手段です。禁煙支援を行っている薬局や医療機関を紹介するのも良いでしょう。禁煙は喫煙者本人だけでなく、周囲の健康を守る行動でもあります。無理に責めるのではなく、支援につなげる視点が大切です。

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