知らないと危険?お薬と食品の組み合わせリスク

お薬

執筆者・監修者:薬剤師

「グレープフルーツジュースと一緒に飲んではいけないお薬があるって本当?」

そんな疑問を感じたことはありませんか?お薬の効果や副作用は、食品との組み合わせによって変わることがあります。今回は、身近な食品とお薬の飲み合わせリスクについて、薬剤師がわかりやすく解説します。

お薬と食品の組み合わせで起こるリスクとは?

お薬同士の飲み合わせに注意している方は多いと思いますが、お薬の中には食品との組み合わせに注意が必要なものもあります。

お薬は体内で「吸収」「代謝」「排泄」といった過程を経て効果を発揮しますが、食品に含まれる成分がこれらのプロセスを妨げたり、逆に過度に促進してしまうことがあります。その結果、本来得られるはずの効果が弱まったり、副作用が出てしまったりするのです。

まず、お薬と食品の組み合わせによって起こるリスクについて解説します。

食品が、お薬の吸収・代謝に影響を与える

口から摂取したお薬は胃や腸で吸収され、肝臓で代謝されます。ところが食品によっては、この吸収や代謝の仕組みに影響を与えることがあります。

お薬の吸収や代謝に影響を与える代表的なケースには以下のものがあります。

 脂っこい食事が一部の薬の吸収を高める
 カルシウムや鉄分を含む食品が抗生物質の吸収を妨げる
 グレープフルーツに含まれる成分が肝臓の代謝酵素の働きを阻害する
 カフェインを多く含む食品と併用すると、薬の代謝が促進される

こうした影響はお薬と食品を同時に摂取した場合だけでなく、時間を空けて摂取した場合でも起こることがあるため注意が必要です。

お薬の効果が強まりすぎたり、逆に弱まってしまう

食品の影響でお薬の効果が変わってしまうことは珍しくありません。

たとえば、一部の血圧を下げるお薬を服用中にグレープフルーツジュースを飲むと、お薬が体に長く作用して効きすぎてしまい、必要以上に血圧が下がることがあります。また、血液を固まりにくくするお薬の中には、納豆や青汁のようにビタミンKを多く含む食品によって、効果が弱くなるものがあることが知られています。

このように、食品によってお薬の効果が強まったり弱まったりするため、初めて服用するお薬が処方されたときは食品との飲み合わせについても医師や薬剤師に確認しておくと良いでしょう。

思わぬ副作用が現れることもある

食品とお薬の相互作用によって、副作用が出やすくなるケースもあります。

たとえばカフェインを多く含む飲料と一緒に喘息の治療に用いられる気管支拡張薬を服用すると、動悸や不眠といった副作用が強まることがあります。また、アルコールと一部の薬を一緒に飲むと、肝臓への負担が増して肝障害を起こしやすくなるほか、眠気やめまいなどの症状が出て転倒などの事故につながる危険性もあります。

お薬を安心して使うためには、お薬そのものの副作用だけでなく、食品との相互作用によって新たに副作用が出る可能性があることも理解しておくことが大切です。

注意が必要な代表的な組み合わせ

注意が必要な食品とお薬の組み合わせにはさまざまなものがあります。ここからは、代表的なものを紹介します。

グレープフルーツジュース × 高血圧などの一部のお薬

グレープフルーツジュースは、高血圧や狭心症の治療薬であるカルシウム拮抗薬との飲み合わせに注意が必要です。

グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分は、消化管でカルシウム拮抗薬の分解にかかわる酵素の働きを阻害します。その結果、お薬が体内で分解されにくくなり、通常よりも血中濃度が高くなってしまいます。

お薬の血中濃度が高くなりすぎると、血圧が下がりすぎてふらつきやめまい、頭痛などの症状が出やすくなります。

グレープフルーツによる代謝酵素の阻害は2〜3日続くため、飲むタイミングをずらせば大丈夫というわけではありません。高血圧や狭心症などでカルシウム拮抗薬を服用している方は、基本的にグレープフルーツジュースの摂取を控える必要があります。

なお、グレープフルーツジュース以外にも注意が必要なものもあるので、不安な時は薬剤師に確認してみましょう。

納豆・青汁 × 血液をサラサラにするお薬

血液を固まりにくくするお薬(ワーファリン)を服用している方は、納豆や青汁に注意が必要です。ワーファリンはビタミンKの作用を阻害することで血液を固まりにくくします。納豆や青汁などのビタミンKが豊富に含まれている食品を一緒にとると、薬の作用を弱めてしまう可能性があります。

血液を固まりにくくするお薬は、血栓や脳梗塞の予防に欠かせません。ビタミンKを多く摂るとお薬の効き目が低下し、血栓ができやすくなるリスクが高まります。緑黄色野菜にもビタミンKは含まれていますが、普段の食事で食べる程度なら大きな影響はありません。しかし、青汁などで1度に多量に摂取する際は注意が必要です。

ワーファリンを服薬中の方はこれらを避けるか、主治医に相談したうえで摂取量を調整するようにしましょう。

カフェイン × 一部の解熱鎮痛薬

コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、解熱鎮痛薬や風邪薬との併用に注意が必要です。解熱鎮痛薬や風邪薬にはカフェインが含まれているものがあります。カフェインには、中枢神経を刺激する作用があり、過剰に摂取すると頭痛や不眠、動悸といった副作用が出やすくなる場合があります。

さらに、解熱鎮痛薬にはもともと胃腸に負担をかけやすい性質があるため、カフェインによる胃酸分泌促進と重なって胃の不快感や胃痛が強まることもあります。解熱鎮痛薬以外にも、気管支喘息などの治療に用いられるテオフィリン系のお薬や、痛風の治療に用いられるアロプリノールなどカフェインとの飲み合わせに注意が必要なお薬は多くあります。

日常的にコーヒーや紅茶などを飲む習慣がある方は、お薬への影響について医師や薬剤師にあらかじめ相談しておくと安心です。

乳製品 × 一部の抗生物質

牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、抗生物質の一部(特にテトラサイクリン系やニューキノロン系)と一緒に摂ると吸収を妨げることがあります。これは、乳製品に含まれるカルシウムがお薬と結びつき、お薬が消化管から吸収されにくくなってしまうためです。

お薬が十分に吸収されなかった結果、治療に必要な血中濃度にならず、感染症の治療効果が弱まる可能性があります。

抗生物質は一定期間、適切な血中濃度を保つことで効果を発揮するため、吸収が妨げられると治療が長引いたり、抗生物質が効きにくい菌(耐性菌)が増えてしまうおそれがあります。抗生物質を服用中に乳製品を摂りたい場合は、服薬の前後2時間以上は間隔を空けるようにしましょう。

安心してお薬を使うためにできること

お薬は病気の治療や症状の改善に欠かせないものですが、食品やサプリメントとの組み合わせによっては、効果が変化したり副作用が強まったりすることがあります。

安全に服用を続けるためには、医療機関や薬局で専門家に確認することが重要です。特に、日常的に摂取する飲み物や健康食品、サプリメントは気づかないうちに薬の作用に影響を及ぼす可能性があります。ここからは安心してお薬を使うためにできることを紹介します。

食品との飲み合わせに不安がある場合は、必ず薬剤師に相談を

「この食品と一緒に飲んでも大丈夫かな?」と思ったとき、最も頼りになるのは薬剤師です。薬剤師は処方されたお薬の特徴を理解しており、食品や飲み物との相互作用についても専門的な知識を持っています。

インターネットの情報や自己判断で対処すると、正しい情報を得られないこともあり危険です。薬剤師に相談すれば、飲み合わせを避けるべき食品や服用タイミングの工夫など、生活に合わせたアドバイスをもらえます。不安に思ったときや新しいお薬を服用するときには、迷わず薬剤師に相談する習慣をつけましょう。

サプリメントを飲んでいる場合も事前に伝えておく

ビタミンやミネラル、ハーブ系のサプリメントは一見安全そうに見えますが、食品と同様にお薬の効き方に影響を与える場合があります。たとえば、セントジョーンズワートというハーブは一部の抗うつ薬や免疫抑制剤と相性が悪いことで知られています。自己判断でサプリメントを続けるのではなく、服薬中は必ず医師や薬剤師に伝えましょう。

特に健康のために複数のサプリメントを併用している人は、飲み合わせによる影響を見逃しやすいため注意が必要です。お薬とサプリメントを併用する際には、専門家のチェックを受けることが安心につながります。

お薬の服用前後に特定の食品を避けたほうが良いか確認

一部のお薬は、服用前後に摂る食品によって効果が変化することが知られています。たとえば、抗生物質の中には牛乳やヨーグルトなどの乳製品と一緒に飲むと吸収が妨げられるものがあります。また、カフェインやアルコールも薬の作用に影響を与える代表的な飲み物です。

服用の前後に避けるべき食品があるかどうかを確認しておくことで、治療効果を最大限に引き出したり、副作用を避けたりすることができます。

薬の説明書には、飲み合わせに関する注意点が記載されていることが多いため、必ず目を通すことが大切です。疑問があれば薬剤師に質問して、普段の食生活に合わせたお薬の飲み方についてアドバイスをもらうとよいでしょう。

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