執筆者・監修者:薬剤師
寒くなってくると、気になるのが「肌の乾燥」です。
冬は気温・湿度の低下や暖房の使用によって、肌の水分が失われやすくなります。乾燥を防ぐには、保湿剤の種類や使用タイミングを正しく理解して、自分の肌質に合ったケアを行うことが重要です。
本記事では、保湿剤の選び方・正しい使用方法・今日からできるセルフケア・薬局でできる乾燥肌サポートなどについて詳しく解説します。
冬の乾燥肌はどうして起こる?
冬の乾燥肌には、さまざまな要因がかかわっています。
要因の一つは気温・湿度の低下です。気温が低下すると血液循環が悪くなり、肌の生まれ変わるサイクル(ターンオーバー)が遅れたり乱れたりします。肌のターンオーバーの乱れにより、肌が乾燥したり、外部からの刺激に敏感になったりします。
さらに、冬は空気が乾燥しているため、肌表面の水分が奪われやすい季節です。加えて、暖房の使用によって室内の空気も乾きやすく、肌の乾燥が進みやすい状況になります。また、寒くなってくると、お風呂の設定温度を上げる方も多いでしょう。熱いお湯は肌に必要な皮脂まで洗い流してしまうため、肌の乾燥につながってしまいます。
保湿剤の種類は?代表的な保湿成分の違い
乾燥肌のケアに欠かせないのが保湿剤です。保湿剤といっても、成分ごとに役割の違いがあるため、目的に合わせて選ぶことが重要です。代表的な保湿成分の特徴について解説します。
ヒアルロン酸(保水力)
ヒアルロン酸は保水力(水を抱え込む力)に優れた成分です。もともと体内に存在している成分ですが、年齢とともに徐々に減少してしまうため、スキンケアで補う必要があります。
ヒアルロン酸には複数のタイプがあり、それぞれで保湿できる範囲が異なります。下記の表にヒアルロン酸の種類をまとめました。
| 種類 | 保湿できる範囲 |
| ヒアルロン酸 | 肌表面 |
| アセチルヒアルロン酸 | 肌表面と内側 |
| 加水分解ヒアルロン酸 | 肌の内側 |
ヒアルロン酸を配合した保湿剤を選ぶ際は、ヒアルロン酸の種類までチェックするとよいでしょう。
ワセリン(水分の蒸発を防ぐ)
ワセリンは肌の表面に膜をつくり、水分の蒸発を防いでくれる油性の成分です。軟膏のベースとなる材料としてもよく使われており、刺激が少なく安全性も高いため、赤ちゃんや敏感肌の方でも使用できます。
ワセリンは他の保湿成分で水分を補ったあとに蓋をする役割として使用するのがおすすめです。
セラミド(バリア機能のサポート・敏感肌向け)
セラミドは肌の角質層(肌の一番外側の層)で水分を抱え込み、肌を外部刺激から守る重要な成分です。もともと角質層内に存在する成分ですが、肌内部のセラミドが不足すると肌が敏感になります。
敏感肌で肌荒れしやすい方やアトピー体質の方におすすめの成分です。
尿素(角質を柔らかくする)
尿素は肌が乾燥してごわつきが気になるときや、角質が厚くなった部分のお手入れに適した成分です。硬くなった角質を柔らかくすることで、肌をなめらかな状態に整えてくれます。
尿素が配合されたクリームには尿素の配合量が10%と20%のものがあります。10%のものは、効果がマイルドで広範囲の軽い乾燥にも使用できます。一方20%は角質を柔らかくする作用が強いため、かかとや肘、膝など、特に角質が厚くなりやすい部位への使用に適しています。
ヘパリン類似物質(保湿効果・抗炎症作用・血行促進)
ヘパリン類似物質は保湿効果だけでなく、抗炎症作用や血行促進作用もある成分です。ヘパリン類似物質を含む保湿剤には、医薬品と医薬部外品があります。
医薬品の方が成分の配合量が多く、乾燥肌の改善に適しています。一方で医薬部外品は日々の乾燥肌対策、スキンケアとして使用するのがおすすめです。
保湿剤を選ぶ際のポイント
使用目的や肌の状態に合わせて保湿剤を使い分けることで、乾燥対策の効果をより実感しやすくなります。ここでは、保湿剤を選ぶ際のポイントをわかりやすく解説します。
うるおいをキープするもの(高い保湿力)
肌に水分を与え、その水分をしっかり抱え込むタイプの保湿剤です。これらは美容業界では「モイスチャライザー」と呼ばれることがあります。代表的な成分には、ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸、セラミドなどがあります。
ローション、クリームなど種類が豊富なので、
● 広範囲にはローション
● 乾燥がひどい部分にはクリーム
といったように使用部位や乾燥の程度に合わせて使い分けるのがおすすめです。
肌の守る力を整えるもの(乾燥刺激からの保護)
皮膚の表面に保護膜をつくり、水分の蒸発を防ぐタイプです。専門的には「エモリエント」と呼ばれますが、皮膚を保護して水分を逃がさないようにする保湿剤と理解すれば問題ありません。
代表的な成分はワセリンで、刺激が少ないのが特徴です。ただし、ベタつきやすく広い範囲には塗りづらいので、主に乾燥しやすい部分・ひび割れやすい部分に局所的に使うと良いでしょう。
硬くなった角質をやわらげるもの(角質軟化作用)
硬くなった角質をやわらげる作用のある成分として、尿素があります。尿素入りのクリームは、肘・膝やかかとなど、特に角質が厚くなりやすく、ごわつきを感じる部位に塗るのがおすすめです。
保湿剤の正しい使用方法
保湿剤の効果を最大限に引き出すためには、正しい使用方法で使うことが大切です。ここでは保湿剤を使用する際に意識したいポイントを紹介します。
塗るタイミング
保湿剤は、「皮膚がしっとりしているタイミング」に塗るのが最も効果的です。
朝は洗顔後、夜は入浴後、できるだけすぐ保湿剤を塗るようにしましょう。基本は朝夜の1日2回塗布すれば十分ですが、日中も皮膚の乾燥を感じる場合は、追加でこまめに塗ったり、朝夜の保湿剤の使用量を少し増やしたりしましょう。
塗り方のコツ
保湿剤を塗る際に皮膚をこすりすぎてしまうと、それが刺激となり皮膚の乾燥や炎症を悪化させる恐れがあります。清潔な手に保湿剤をとり、手のひらでやさしく丁寧に、すり込み過ぎないように塗り広げましょう。
使用量目安
保湿剤には、効果をしっかり発揮するための「適切な量」があります。少なすぎると十分な保湿効果が得られないため、下記の目安を参考にして塗布してみてください。
| 保湿剤の剤形 | 使用量の目安 【大人の手のひら2枚分の面積に塗布する場合】 |
| 軟膏・クリーム(チューブの場合) | 人差し指の先から第1関節までにのせた量(約0.5g) |
| ローション | 1円玉大の大きさに出した量(約0.5g) |
今日からできる乾燥肌セルフケア
乾燥肌の改善には、保湿剤を適切に使用するとともに、生活習慣を見直すことも大切です。ここからは乾燥肌を改善するためのセルフケアについて解説します。
室内の加湿
室内の加湿は乾燥対策の基本です。特に冬場は暖房の使用により湿度が下がりやすいため、加湿器を使用して湿度40〜60%を保つようにしましょう。加湿器がない場合は、濡れたタオルを部屋干しするなども効果的です。
入浴方法の見直し
皮膚の乾燥を防ぐためには入浴方法も大切です。以下の点を心がけましょう。
● お湯の温度は低め(38~40℃)に設定し、長湯しない
● ボディタオルは柔らかいものを使用し、皮膚をこすらないようにする
● 洗浄力が強い石鹸の使用は避ける
寒い季節は熱めのお風呂にゆっくり浸かりたいという方も多いと思いますが、熱いお湯に長時間浸かると必要以上に皮脂や角層内の保湿成分が洗い流されてしまいます。
お湯の温度は上げ過ぎないように注意しましょう。
食事と水分補給
乾燥肌対策には、身体の内側からのケアも大切です。栄養バランスのよい食事を心がけましょう。特に肌がうるおいを保つための成分(保湿因子)の原料となるたんぱく質や、肌のうるおい維持に役立つビタミンA、Eなどを積極的にとるようにしましょう。
乾燥肌対策には、こまめな水分補給も欠かせません。必要な水分量は体格や活動量によって異なりますが、1日あたり1.5〜2L程度が目安です。ただし、一度に大量に飲むと体に負担がかかることがあるため、少量ずつ数回に分けて飲むようにしましょう。
また、コーヒーや紅茶などのカフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、水分補給としては不向きな場合があります。のどが渇いたときは、できるだけ水やノンカフェインのお茶を選ぶとよいでしょう。
薬局でできる乾燥肌サポート
薬局でも乾燥肌を改善するためのサポートをしています。最後に薬局で対応できる乾燥肌対策のサポートをご紹介します。乾燥肌でお悩みの方は薬局で気軽に相談してみましょう。
肌の状態に合わせた保湿剤・外用薬などの提案
薬局では、肌の状態に合わせた保湿剤・外用薬などを提案することができます。
● かゆみの有無
● 赤みや湿疹の有無
● 乾燥の度合い
● 症状が出ている部位
上記のような症状に関する事柄を伺いながら、適切なサポートをします。
敏感肌やアトピー体質などの相談対応
薬局では、敏感肌やアトピー体質などを改善するための生活習慣やスキンケアについてのアドバイスもしています。
湿疹が長期間続く、かゆみが強い、じゅくじゅくした液が出ているなど、医療機関への受診が必要な場合もありますが、症状が軽い場合は生活習慣やスキンケアの見直しで症状が改善することもあります。
塗布量や塗布方法などのアドバイス
保湿剤の効果を最大限に引き出すためには、適切な塗布量や塗布方法を守って使用することが大切です。薬局では、保湿剤の使用量や塗り広げ方、塗るタイミングなどについてアドバイスしています。
また、乾燥肌や保湿剤の使用について薬剤師に相談したい場合は、LINEの「つながる薬局」のサービスもおすすめです。LINEで「つながる薬局」を友だち登録して、お好きな薬局をかかりつけ薬局として登録するだけで、症状に合った保湿剤の選び方や保湿剤の正しい使用方法などについて薬局の薬剤師にLINEで気軽に相談できます。
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