執筆者・監修者:薬剤師
「かかりつけ薬剤師ってなに?」
「かかりつけ薬剤師を持つメリット・デメリットは?」
「かかりつけ薬剤師を選ぶうえでのポイントは?」
薬局を利用する方の中には、上記のようにかかりつけ薬剤師に関心を持つ方も多いのではないでしょうか。かかりつけ薬剤師は、信頼できる薬剤師を患者さん自身が指名し、継続的なサポートを受けられる制度です。この記事では、制度の仕組みや登録方法に加え、メリット・デメリット、選び方のポイントまでわかりやすく解説します。登録までの流れも紹介しているため、当記事を参考に信頼できるかかりつけ薬剤師を見つけてください。
かかりつけ薬剤師とは?
薬の適正使用や健康管理を支えるうえで、薬剤師の果たす役割は年々重みを増しています。なかでも、継続的に服薬支援をおこなう仕組みとして注目されているのが、特定の薬剤師との関係性を築くかかりつけ薬剤師制度です。ここでは、制度の成り立ちや一般的な薬剤師との違いについて、解説します。
かかりつけ薬剤師の定義
かかりつけ薬剤師とは、患者さん自らが選び、継続的にお薬の管理や健康相談を任せる薬剤師のことです。処方薬や市販薬、サプリメントなどの情報を一元的に把握し、重複投与や相互作用のリスクを減らす役割を担います。夜間や休日でも相談に応じる体制を整え、在宅医療の支援もおこないます。医師や他の医療機関と連携し、患者さんの健康を多角的にサポートする信頼できるパートナーが、かかりつけ薬剤師です。
制度が導入された背景と目的
かかりつけ薬剤師に関する制度は、2016年に厚生労働省が導入した仕組みで、患者さん中心の医療を実現するために設けられました。制度の目的は、患者さんが信頼できる薬剤師を選び、継続的にお薬の管理や健康相談を受けられるようにすることです。その背景には、医薬分業の進展により薬局の役割が増す中、患者さんの服薬情報を一元的に把握し、副作用の防止や適切な薬物療法を提供する必要性がありました。
また、超高齢化社会に対応し、在宅医療や多職種連携を強化することも制度導入の狙いとされています。
一般的な薬剤師との違い
かかりつけ薬剤師と一般的な薬剤師との違いは、患者さんへの関わり方や求められる条件にあります。一般的な薬剤師は処方箋に基づいて調剤し、服薬指導をおこないますが、かかりつけ薬剤師は以下のような特徴を併せ持ちます。
● 患者さんが指名する専任の薬剤師:患者さん自身が継続的なサポートを受けたい信頼できる薬剤師を指名
● 24時間対応や在宅訪問:夜間や休日でも相談に応じ、必要に応じて自宅への訪問も可能
● 医療機関との連携:医師や他の医療スタッフと情報を共有し、患者さんの治療をサポート
● 一定の条件を満たす必要がある:かかりつけ薬剤師になるには、3年以上の薬局勤務経験や認定薬剤師の資格取得、地域活動への参加などの条件を満たす必要あり
これらの違いにより、かかりつけ薬剤師は患者さん一人ひとりの健康を総合的に支える存在として、より深い関係を築いていきます。
かかりつけ薬剤師を持つ3つのメリット
かかりつけ薬剤師を持つことは、日常の安心や服薬管理の質に直結する重要な選択です。信頼できる相談相手がいることで、お薬への向き合い方も大きく変わります。ここでは、かかりつけ薬剤師を持つことによる3つのメリットについて、解説します。
いつでも同じ薬剤師が対応してくれる
かかりつけ薬剤師を持つメリットは、担当薬剤師が継続的に対応することで得られる安心感です。かかりつけ薬剤師でないと、薬局を訪れるたびに異なる担当者が対応することが多く、患者さんの詳細な情報を把握しづらい傾向があります。
一方、かかりつけ薬剤師では患者さんが指名した専任の薬剤師が継続的に対応するため、服薬状況や健康状態を深く理解し、適切なアドバイスを提供できます。これにより、患者さんは信頼関係を築きやすく、安心して相談できる環境が整うでしょう。かかりつけ薬剤師の存在は、患者さんの体調管理だけでなく、心の支えにもなるのです。
なお、LINEの「つながる薬局」のサービスであれば、友だち登録をしてお好きな薬局をかかりつけ薬局として登録することで、LINEで薬剤師への相談を始められます。かかりつけ薬剤師へLINEで気軽に相談したい方は、「つながる薬局」をご利用ください。
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お薬情報一元化により重複投与や相互作用を防げる
かかりつけ薬剤師を持つことで、お薬の重複投与や相互作用のリスクを減らし、安心して服用を継続できます。かかりつけ薬剤師を指名しないと、薬局を訪れるたびに異なる薬剤師が対応することが多く、服薬情報の一元管理が難しい場合もあります。しかし、かかりつけ薬剤師は、患者さんが指名した専任の薬剤師が継続的に対応するため、以下のようなメリットが得られるでしょう。
● 服薬情報の一元管理:複数の医療機関の処方薬や市販薬、サプリメントなどの情報をまとめて管理し、重複投与や相互作用のリスクを低減
● 副作用の早期発見:継続的な服薬状況の把握により、副作用の兆候を早期発見、適切な対応が可能
● 医療機関との連携:必要に応じて、医師や他の医療スタッフと情報を共有し、治療をサポート
このように、かかりつけ薬剤師は患者さんの薬物療法の安全性と効果を高める重要な役割を果たします。
個人の事情をふまえた健康相談ができる
かかりつけ薬剤師を持つことで、個人の事情をふまえた健康相談が可能となり、より安心して日常生活を送れます。かかりつけ薬剤師でないと、薬局を訪れるたびに異なる担当者が対応するため、個人事情をふまえたオーダーメイドのサポートが提供されにくい傾向にあります。しかし、患者さんが指名した”いつもの”薬剤師であれば、以下のメリットが得られるでしょう。
● 生活環境の理解:患者さんの生活習慣や家庭環境を把握し、健康相談に利用
● 服薬状況の把握:処方薬や市販薬、サプリメントの使用状況を一元的に管理し、適切なアドバイスを提供
このように、かかりつけ薬剤師は、患者さん一人ひとりの健康を総合的に支える存在として、より深い関係を築いてくれるでしょう。
かかりつけ薬剤師を持つ3つのデメリット
かかりつけ薬剤師を持つことで多くのメリットがある一方、利用にあたっては事前に知っておきたい注意点も存在します。制度を正しく理解し、自分に合った選択をするために、どのようなデメリットがあるのかを詳しく見ていきましょう。
自己負担額が増加する可能性あり
かかりつけ薬剤師を指名し、算定要件を満たした服薬指導が実施されると、「かかりつけ薬剤師指導料」などが適用され、自己負担額が増加する可能性があります。通常、算定されることが多い「服薬管理指導料」の45~59点に対し、「かかりつけ薬剤師指導料」は76点となるため、3割負担の場合、約50~90円の料金が追加されます。(1点=10円)
ただし、かかりつけ薬剤師は同意が必要なため、「かかりつけ薬剤師指導料」もこの同意なくてして算定できません。かかりつけ薬剤師制度を利用する際は、追加の料金が発生することを理解し、必要性を考慮した選択が重要です。
薬剤師により対応レベルが異なる
かかりつけ薬剤師を登録しても、すべての薬剤師が同じように頼れるとは限りません。薬剤師によって服薬指導の質や対応姿勢に差が見られるため、信頼関係を築けるかを見極めることが大切です。実際の服薬指導を通じて、不安な点や不満があれば無理に継続せず、かかりつけ薬剤師の変更も選択肢として検討する必要があります。サービスの質に納得できる薬剤師と継続的に関わることが、制度を有効に活用するうえで重要です。
他の薬局を利用しにくくなる
かかりつけ薬剤師制度では、患者さんの服薬情報を一元的に管理することが求められます。そのため、原則として処方箋はかかりつけ登録した薬剤師がいる薬局に持参する必要があり、他の薬局を利用しにくくなる可能性があります。たとえば、かかりつけ薬剤師のいない別の薬局に処方箋を持っていった場合、患者さんの詳細な情報を把握していないため、十分なサポートが受けられません。
このように、患者さんの服薬管理を一元化することで安全性を高める一方、柔軟な薬局の利用が制限されるというデメリットも存在します。ただし、他の薬局の利用を禁止するものではないため、必要に応じた薬局選択をおこなってください。
かかりつけ薬剤師を選ぶうえでのポイント
かかりつけ薬剤師を選ぶ際は、患者さんの年齢や疾患に応じた適切なサポートが受けられるかを見極めることが重要です。以下に、慢性疾患を持つ方、高齢者、子どもに適したかかりつけ薬剤師を選ぶ際のポイントをまとめました。
対象者 | 選定ポイント |
慢性疾患の方 | ・病状や治療歴を把握し、継続的な服薬管理ができる ・医師との連携が取れる |
高齢者 | ・お薬の飲み合わせや副作用に詳しい ・来局時以外でもお薬に関してサポートをしてくれる ・お薬以外に関しても相談がしやすい |
子ども | ・子どもの体調や成長に配慮した服薬指導をしてくれる ・保護者とのコミュニケーションが良好 |
上記を参考に、信頼できる相手を見つけることが重要です。慎重に判断し、不安があれば遠慮なく解除したい旨を薬局に相談してください。
なお、選んだかかりつけ薬剤師に気軽に相談したいなら、LINEで相談ができる「つながる薬局」のサービスがおすすめです。選んだかかりつけ薬剤師がいる薬局が「つながる薬局」のサービスを提供している場合、つながる薬局をLINEで友だち登録し、かかりつけ薬剤師がいる薬局をかかりつけ薬局として登録するだけで気軽にLINEで相談ができます。この機会に「つながる薬局」の利用を検討してみてください。
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かかりつけ薬剤師の登録方法
かかりつけ薬剤師の登録方法は、薬局での簡単な手続きを通じて進められます。患者さんの同意を得たうえで、以下の流れに沿って登録がおこなわれます。
- 薬剤師が制度内容と役割、料金について説明する
- 患者さんが理解・納得したうえで、かかりつけ薬剤師の登録を希望する意思を伝える
- 指名する薬剤師を確認し、所定の同意書に署名する
- 薬局が同意書を保管し、登録内容を薬歴(患者さん毎に情報や服用歴等を記録するもの)に記録する
- 次回以降の処方時より、かかりつけ薬剤師として対応が始まる
登録はいつでも解除できるため、まずは信頼できる薬剤師であるかを見極めることが大切です。
かかりつけ薬剤師とかかりつけ薬局の違い
かかりつけ薬剤師とかかりつけ薬局は混同されやすい言葉ですが、意味や登録の仕組みが異なります。以下の表にそれぞれの違いについてまとめたので、薬局を利用する際の参考にしてください。
項目 | かかりつけ薬剤師 | かかりつけ薬局 |
対象 | 特定の薬剤師 | 継続利用している薬局 |
登録 | 同意書に署名して登録 | 手続き不要で患者さんの意思決定次第 |
役割 | 一人の薬剤師が継続してお薬や健康の相談に対応 | 薬局全体でお薬の受け取りや健康の相談に対応 |
注意点 | 指導料がかかり、他の薬局を使いづらく感じることがある | 他の薬局を使いづらく感じることがある |
かかりつけ薬剤師は「人」に対する制度で、かかりつけ薬局は「場所」に対する考え方です。それぞれの特性を理解したうえで使い分けることが大切です。
まとめ
かかりつけ薬剤師を持つことで、継続的な服薬管理や個別の健康相談が可能となり、安心した日常生活を送るための支えになります。信頼できる薬剤師を選べば、お薬の重複投与防止や副作用の早期発見にもつながります。登録には同意書への署名が必要ですが、解除や変更も自由にできるため、まずはかかりつけ薬剤師を選んでみるのもおすすめです。当記事を参考に、自身に合った薬剤師を見つけ、かかりつけ薬剤師制度を賢く活用してください。
なお、「つながる薬局」のサービスであれば、LINEで友だち登録後かかりつけ薬局を登録することで、薬局へLINEでの相談が利用可能となります。かかりつけ薬剤師へLINEで気軽に相談したい方は、「つながる薬局」をご利用ください。