執筆者・監修者:薬剤師
「災害時にお薬を持ち出せなかった」
「避難先で処方内容がわからなくなった」
こんな状況に備え、お薬手帳を活用できるようにしておくことが大切です。災害時には医療機関や薬局の通常の対応が難しくなることもあり、適切な医療を受けるためにお薬手帳が役立ちます。今回の記事では、災害時にお薬手帳が果たす役割や、事前に準備しておくべきポイントについて解説します。
災害時にお薬手帳が役立つ理由
お薬手帳は、服用中のお薬の名称や用法・用量などを記録しておく手帳です。薬局でお薬を受け取る際に毎回記録していくことで、いつ、どこで、どんなお薬を何日分処方されたのか、どのくらいの期間そのお薬を服用しているのか、過去にどんなお薬を服用したことがあるのかなどを確認できます。
服用中のお薬の情報だけでなく、アレルギー歴や副作用歴も記録できるため、持病があり定期的に服薬しているお薬がある方はいつも持ち歩いておきたいアイテムのひとつです。まずは、災害時にお薬手帳が役立つ理由を解説します。
かかりつけ医以外の医師に必要な情報を共有できる
災害時には、通常の医療体制が大きく乱れ、かかりつけの病院や薬局に通えなくなり、初めて会う医師や薬剤師に対応してもらうケースも珍しくありません。かかりつけの病院や薬局に行けたとしても、停電などの影響でカルテや薬歴(服用している薬などの情報を記録したもの)を確認できないという場合もあります。
そのような場合にお薬手帳を所持していれば、医師や薬剤師は、これまでどんなお薬を処方されていたのか、どんな病気の治療中なのか、お薬に対するアレルギーはあるのかなど、重要な情報をある程度把握できます。
災害時、医師は限られた時間と限られた情報の中で最善の治療方針を決めなくてはなりません。お薬手帳の情報があるかどうかは診療の質を大きく左右します。また、お薬の重複投与や飲み合わせによる副作用のリスクも、お薬手帳をもとに避けることができます。
服薬中のお薬の情報を正確に伝えられる
お薬手帳を見せることで、医師や薬剤師などに服薬中のお薬の情報を正確に伝えられます。普段から服薬しているお薬がある方にとって、災害時にそのお薬を継続して服薬できるかどうかは体調維持に直結します。しかし、自分が飲んでいるお薬の名前や用量、飲み方を正確に覚えている方は意外と少ないものです。「血圧のお薬」「糖尿病のお薬」などと伝えても、治療薬には様々な種類があるため、その情報だけで医療従事者が薬品名を特定することはできません。
そんな時に役立つのが、お薬手帳です。お薬の名前や成分、用法・用量などが記録されているため、仮にかかりつけの医師や薬局に連絡が取れなくても、避難先の医療機関で同じ内容のお薬を処方してもらうことができます。
災害時にはお薬の供給が不安定になるため、類似した作用のあるお薬で代用するケースも多いです。その際にお薬手帳に記載のある副作用歴やアレルギー歴なども役立ちます。自分の体調を守るためにも、最新の内容を記録したお薬手帳を常に持ち歩いておきましょう。
お薬手帳があれば処方箋なしでお薬をもらえる
医療用のお薬は、通常医師が発行する処方箋がなければ薬局で受け取ることはできません。しかし、災害時などの非常時には、厚生労働省の通達により、お薬手帳などで服薬内容が確認できる場合に限り、処方箋がなくてもお薬を受け取ることが一時的に認められるケースがあります。
実際に、令和6年1月に発生した能登半島地震では、多くの医療機関や薬局が被災し、通常の診療や処方箋発行が困難な状況に陥りました。こうした非常事態を受け、厚生労働省は、持病のある被災者が処方箋を持たずに薬局を訪れた場合でも、後日処方箋を発行することを条件に、お薬を受け取れるようにする通知を出しています。
原則として、薬剤師が主治医に連絡し、処方内容の確認が取れたうえでお薬を渡すこととされていました。しかし、医師との連絡が取れない場合でも、お薬手帳やお薬の包装などから慢性疾患に対するお薬であることが明らかな場合に限り、医師への確認を事後的に行うことを前提として薬剤師の判断でお薬を渡せるケースもありました。
とくに、心疾患や高血圧、糖尿病、喘息など慢性疾患で継続的な服薬が必要な方にとっては、こうした対応が命綱となるケースもあります。万が一のときにお薬を切らさずに安心して過ごすためにも、お薬手帳は災害時に欠かせない「命を守る情報ツール」として、常に携帯しておくことをおすすめします。
災害時に備えたお薬手帳の準備
いつ起こるかわからない災害時に備えて、日頃からお薬手帳を活用しておくことが大切です。ここからは、災害時に備えたお薬手帳の準備のポイントについて解説します。
日頃からお薬をもらう時はお薬手帳を持参し、記録を残す
お薬手帳は、お薬をもらうたびに服薬歴を記録できる大切なツールです。災害時にこの記録があれば、医師や薬剤師が初めて診る患者であっても、これまでのお薬の内容や治療の流れを把握できます。
しかし、薬局へ行く際にお薬手帳を持参しないと、記録が抜けてしまい「何をいつ飲んでいたのか」が不明瞭になります。これは緊急時に大きなリスクとなります。たとえば、お薬の重複や相互作用などを見落とす原因にもなりかねません。
そのため、日頃から処方薬を受け取るときは、忘れずにお薬手帳を持参して記録することを習慣づけましょう。これが災害時に自分の身を守るための大切な情報源になります。お薬手帳を持参するのを忘れてしまった場合は、お薬手帳に貼れる紙やシールをもらえます。帰宅したら忘れずにお薬手帳に貼るようにしましょう。
薬局に行かない日も常に持ち歩く習慣をつける
お薬手帳は病院や薬局に行く日だけでなく、普段の生活でも常に持ち歩くことが大切です。なぜなら、災害はいつ、どこで起こるかわからないからです。例えば外出先や旅行中、あるいは勤務中に被災した場合、かかりつけの病院や薬局に行けないこともあります。その際、お薬手帳を携帯していれば、自分が服薬しているお薬の情報をすぐに伝えることができ、適切な治療につながります。
また、緊急時には本人が意識を失っている可能性もあるため、救護にあたる医療スタッフにとっても重要な判断材料になります。財布や通勤バッグ、スマホケースなど、常に身につけるものと一緒に持ち歩く習慣をつけておくと安心です。
持ち忘れを防ぐためにスマホアプリの活用も検討
持ち忘れを防ぐためにスマホアプリの活用もおすすめです。紙のお薬手帳は非常時にとても役立ちますが、つい忘れてしまったり、かさばって持ち歩きにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。そんな時は、スマホのアプリ版お薬手帳を活用するのも一つの手です。
最近では多くの薬局がアプリに対応しており、QRコードやバーコードで処方情報を読み込むことで簡単に記録できます。災害時にもスマホが手元にあれば、お薬の履歴をすぐに提示できます。
ただし、スマホは充電切れのリスクもあるため、紙のお薬手帳も併用するのが理想的です。両方を活用して備えておくことで、より安心できる災害対策になります。
災害時も安心 「つながる薬局」のお薬手帳機能
災害時にも安心して使用できる電子お薬手帳ならLINEの「つながる薬局」のサービスがおすすめです。LINEのアプリがあれば新しいアプリのインストールをする必要がなく、すぐにサービスを利用開始できます。
QRコードで簡単にお薬情報を共有可能
LINEの「つながる薬局」のサービスに備わっているお薬手帳には、令和6年1月に発生した能登半島地震を受け、医療従事者が患者さんのお薬に関する情報を迅速に把握し、より多くの患者さんがに適切なに治療を受けられるように、QRコードを読み込むだけで電子お薬手帳の内容がWebブラウザ上で確認できる新機能が追加されました。
新機能の追加により、医療機関は服薬情報などを閲覧するためのツール導入やコード入力が不要となり、平常時の外来受診時や入退院時はもちろんのこと、災害時でもお薬手帳の内容を簡単に確認できるようになりました。患者さんはスマホを第三者に手渡すことなく情報共有ができ、情報にアクセス可能な時間が決められていることからも、安心してサービスを利用できます。
「つながる薬局」は電子お薬手帳としての機能だけでなく、処方箋の送信やお薬について薬剤師に相談したいときにも活用できる機能があるサービスなので、ぜひ登録を検討してみてください。
つながる薬局は、薬局への処方箋送信から健康・お薬相談、お薬手帳までLINEひとつでご利用いただけるサービスです!
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まとめ
災害時にお薬手帳が果たす役割や、事前に準備しておくべきポイントについて解説しました。災害によって避難などが必要になる時には、医療機関や薬局の通常の対応が難しくなることもあるので、適切な医療を受けるためにお薬手帳が役立ちます。ご自身の健康を守るために、お薬手帳を所持し日頃から携帯するようにしましょう。今はスマホでお薬の管理ができる電子お薬手帳のアプリもあるので、ご自身の生活スタイルにあわせて活用することをおすすめします。