執筆者:看護師・監修者:薬剤師
「なんだか最近、子どもの元気がない」
「顔色がいつもより白っぽい気がする」
そんな子どもの様子が気になったことはありませんか?もしかすると、それは鉄分不足による貧血が原因かもしれません。今回は、子どもの貧血の原因や症状の見分け方、そして鉄分を効率よくとる食べ物や家庭でできる対策について、やさしく解説します。
子どもの貧血が見逃されやすい理由
子どもの鉄分不足による貧血は、体の成長や日々の生活に紛れて見逃されやすい特徴があります。ここでは、特に見落とされやすい理由について、以下の3つの観点から解説します。
● 症状があいまいで気づきにくい
● 大人と比べて自己申告しにくい
● 成長期の影響と重なってしまう
それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
症状があいまいで気づきにくい
子どもの貧血のサインは、「顔色が悪い」「元気がない」「疲れやすい」など、症状があいまいです。こうした症状は、風邪や寝不足、季節の変わり目などによる体調不良と区別しにくく、日常的なものとして見過ごしてしまうことも少なくありません。
大人と比べて自己申告しにくい
子どもは自分の体調の異変に気づきにくく、感じていてもうまく言葉にできず、自己申告しにくいといった傾向があります。とくに、子どもの年齢が低いほど体調不良を表現しづらいため、保護者が子どもの表情や行動の変化をよく観察することが大切です。
成長期の影響と重なってしまう
思春期や急激に背が伸びる時期には、なんとなく元気がなかったり、疲れやすくなったりすることがあります。このような変化は「成長の一部」とされがちですが、鉄分不足による貧血が隠れている場合もあります。
とくに女子の場合は、初潮を迎えることで鉄分の消耗が増え、貧血リスクが高まります。食生活や体調の変化を見逃さないよう、注意深く見守ることが大切です。
貧血の原因の多くは鉄欠乏性貧血
貧血にはいくつもの種類がありますが、子どもの貧血の主な原因となるものは以下のとおりです。
原因 | 内容 |
鉄欠乏性貧血 | 食事からの鉄分摂取不足や成長に伴う鉄分需要の増加が原因。 最も多いタイプ |
ビタミンB12・葉酸の不足 | 赤血球の合成に必要なビタミンが不足し起こる |
出血 | 鼻血や月経過多、消化器疾患など出血が原因で起こる |
吸収不良 | 鉄や栄養素の吸収がうまくいかない消化器系の問題により起こる |
なかでも、子どもの貧血の多くは「鉄欠乏性貧血」と呼ばれる、鉄分の不足によって起こるタイプです。鉄は、赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビンの材料になる重要な栄養素で、成長期の子どもには特に欠かせません。
ところが、食事の偏りや急速な成長などによって鉄分の摂取が不足してしまうと、体内の鉄が足りず、酸素がうまく運ばれなくなります。その結果、貧血を引き起こしてしまうのです。
鉄分が不足する原因
子どもが貧血になる背景には、体内の鉄分が必要量に満たない「鉄分不足」の状態が大きく関係し、その原因はひとつではありません。ここでは、鉄分が不足する主な原因を3つご紹介します。
● 食事の偏りや好き嫌い
● 急速な成長で鉄分の需要が増える
● 極端なダイエットやスポーツの影響
それぞれ詳しく解説していきます。
食事の偏りや好き嫌い
鉄分は主に肉類や魚、大豆製品、緑黄色野菜などから摂取します。しかし、鉄分を多く含むレバーや赤身肉、ほうれん草などの食材は、味や食感が苦手で避けてしまうといった子も少なくありません。また、子どもはまだ味覚が未発達なため、好き嫌いが激しかったり、特定の食材を好んで食べたりする傾向があります。このように、食事内容が偏ると、自然と鉄分の摂取量も不足してしまうのです。
急速な成長で鉄分の需要が増える
成長期には通常より多くの鉄分が必要になるため、食事だけでは補いきれずに不足してしまうことがあります。また、乳幼児期や思春期など急激に体が成長する時期においても、鉄分の必要量が一気に高まります。とくに、思春期の女子は初潮を迎えると月経による鉄分の損失が加わるため、貧血のリスクが高くなるのです。
極端なダイエットやスポーツの影響
近年では、見た目を気にして早期からダイエットを始める子どもも増えており、栄養が偏った結果、鉄分が不足するケースがあります。また、激しいスポーツを行う子どもも要注意です。運動によって筋肉の微細な損傷や筋肉量の増加により鉄分の消費が増えることも知られています。
鉄分不足によるリスク
鉄分が不足すると、体全体にさまざまな影響が及びます。特に成長期の子どもにとっては、身体面だけでなく心や学習面にもリスクが及ぶため、早めの気付きと対策が欠かせません。ここでは、鉄分不足によるリスクとして知られる以下の3つのポイントについて解説します。
● 疲労感、集中力低下
● 食欲不振や免疫力の低下
● 学習や運動への影響
ぜひ参考にしてください。
疲労感、集中力低下
鉄分は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンを作るために欠かせない栄養素です。鉄分が不足すると酸素が体内に十分行き渡らなくなり、疲れやすくなるほか、頭がぼーっとする、集中力が続かないといった状態が起こりやすくなります。
もし、授業中に集中力が続かない、すぐに横になりたがるなどの様子があれば注意が必要です。これらは一見すると日常生活の疲れや睡眠不足と見分けがつきにくいため、身近な大人の方が注意して観察する必要があるでしょう。
食欲不振や免疫力の低下
鉄分不足は消化機能にも影響を与えることがあり、食欲がなくなることも。また、免疫力が下がることで風邪を引きやすくなったり、治りにくくなる傾向もあります。「最近食欲が落ちた」「なんとなく体調を崩しがち」といった変化は、鉄分不足が影響している可能性もあるため、見逃さずにチェックしておきたいポイントです。
学習や運動への影響
鉄分が不足して脳への酸素供給が不十分になると、記憶力や判断力、思考力にも影響が出ることがあります。また、体がだるくなって運動を嫌がるようになったり、体育の授業や部活動で力を出しきれなくなったりするケースも少なくありません。
たとえば、以前より成績が落ちたり、体育の授業でついていけなくなったりする場合は、鉄分不足によるパフォーマンス低下が関係していることもあり注意が必要です。
家庭でできる対策
子どもの貧血を予防・改善するためには、毎日の食べ物の工夫がポイントです。ここでは、家庭で今日から始められる具体的な対策を3つご紹介します。
● 鉄分の多い食べ物を日々の食事で取り入れる
● 吸収を助けるビタミンCと一緒に摂る
● 必要に応じて鉄分入り食品やサプリを活用
特別なことをする必要はなく、ちょっとした工夫や意識の積み重ねで、鉄分不足は予防できるので、ぜひ参考にしてください。
鉄分の多い食材を日々の食事で取り入れる
貧血の予防や改善には、日々の食事に鉄分を多く含む食材を取り入れるのがおすすめです。身近で手に入りやすい食材には、以下のものがあります。
ヘム鉄※1 | 非ヘム鉄※2 |
レバーや牛などの赤身肉 | 小松菜やほうれん草などの緑黄色野菜 |
カツオやマグロなどの魚介類 | ひじきやすじ青のりなどの海藻類 |
もし、これらの食材が苦手な場合は、レバーを刻んでハンバーグに混ぜる、炒め物に少量加えるなど、調理の工夫で食べやすくするのもよいでしょう。
※1 ヘム鉄:動物性食品に多く、単体でも吸収されやすい
※2 非ヘム鉄:植物性食品に多く、ビタミンCやタンパク質とあわせて摂ると吸収されやすい
吸収を助けるビタミンCと一緒に摂る
鉄分のなかでも植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高まります。たとえば、鉄分豊富なひじきの煮物と一緒に、梅干しやお酢などの酸味のある小鉢を添えると、スムーズな鉄分吸収の促進が期待できるでしょう。
必要に応じて鉄分入り食品やサプリを活用
日々の食事だけでは補いきれない場合、鉄分入りのジュースやおやつ、子ども向けのサプリメントを活用するのも選択肢のひとつです。
最近は味や成分に配慮した製品も増えており、子どもが嫌がらずに摂取できるよう工夫されています。ただし、過剰な摂取は副作用のリスクもあるため、使用する際は医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。
専門家への相談も選択肢に
子どもの食事や栄養について不安を感じたときは、ひとりで悩まず専門家へ相談するのもおすすめです。ここでは、健康・栄養に関する専門家の薬剤師や管理栄養士に相談できる内容についてご紹介します。
食事や栄養の悩みは薬剤師や管理栄養士に相談できる
「この献立で十分?」「子ども向けの鉄分サプリはどれがいい?」といった栄養に関する疑問は、薬剤師や管理栄養士に相談するものおすすめです。子どもの年齢や体質、ライフスタイルを踏まえて、無理のない方法での鉄分補給をアドバイスしてくれるでしょう。
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まとめ
子どもの貧血は、症状がわかりづらくつい見過ごしてしまいがちですが、そのままにすると成長や学力、生活全体に影響を及ぼす可能性があります。お子さまのすこやかな成長のため、体調面や食べ物・サプリメントなどで気になることは、ぜひ薬剤師に相談してみてはいかがでしょうか。