成長期の子を守る、中学生・高校生のスポーツ障害の基礎知識。セルフケア・薬局・医療機関の活用法も紹介

子育て

執筆者・監修者:薬剤師

中学生・高校生は部活動やクラブ活動で体をよく使う時期でもあり、成長期ならではのスポーツ障害が起こりやすい時期でもあります。放置すると長引いたり再発しやすくなったりするため、保護者としても、早めに気づいて対応することが大切です。

応急処置やセルフケアはもちろん必要ですが、薬局でも湿布・外用薬・サポーターの選び方などを相談することができます。医療機関と連携しつつ、身近な薬局を頼れるようにしておくと安心です。

本記事では、よくあるスポーツ障害とセルフケアのポイント、医療機関との連携の重要性、薬局でできるサポートについて解説します。

中学生・高校生に多いスポーツ障害とは

スポーツ障害とは、身体に過度の負担がかかり続けることによって、特定の部位に疲労が蓄積し、慢性的な痛みが引き起こされる疾患です。初期は、軽い痛みや違和感を感じる程度ですが、適切なケアをせずに運動を続けると思うようなプレーができなくなるだけでなく、日常生活に支障をきたす恐れもあります。

スポーツ障害と類似した言葉として、スポーツ外傷があります。スポーツ外傷とはスポーツ中の転倒や他のプレーヤーとの衝突など、大きな外力を受けて一時的に組織が損傷した状態です。スポーツ障害とスポーツ外傷を厳密に区別せずに、総称してスポーツ障害という場合もあります。

まずは代表的なスポーツ障害について解説します。

成長期に多い障害

成長期には、身長が急激に伸びるため、骨の成長に周辺の筋肉や腱の成長が追いつかず、関節に負担がかかりやすくなります。成長期に多いスポーツ障害を以下の表にまとめました。こうした障害は“成長痛”と混同されやすく、放置すると長引くことがあるため注意が必要です。

オスグッド・シュラッター病 すねの骨の端が太ももの前の筋肉に引っ張られることによって痛みが生じる。
バスケットボールやバレーボールなどジャンプの多い競技の選手に発症しやすい。
シーバー病 かかとの骨の先端に位置する柔らかい軟骨に繰り返し負担がかかることで炎症・痛みが生じる。
サッカー、野球、陸上、ダンスなど、走ったり跳んだりする機会の多いスポーツをしている10歳前後の子どもに多い。
成長期腰椎分離症 体をそらす・ひねる動きを繰り返すことで、腰の骨に小さなヒビ(疲労骨折)ができ、痛みが出る。
野球、バレーボール、バスケットボール、サッカー、ウエイトリフティングなど、体幹の前後屈、回旋を頻回に行う競技の選手に多く見られる。

反復動作による障害

スポーツにおいて、特定の動作を繰り返すことによって起こる障害もあります。これらはオーバーユース症候群(使い過ぎ症候群)と呼ばれます。

主なオーバーユース症候群を以下の表にまとめました。オーバーユース症候群は、無理な練習や急な運動量の増加、フォームの乱れなどが原因で起こります。痛みがあるにもかかわらず、休まずに運動を続けていると症状が悪化するため、早めの治療が必要です。

野球肩 投球動作の繰り返しにより、肩の筋肉・靭帯・軟骨に負担がかかり、肩関節に痛みが生じる。
テニス肘 手や腕への繰り返される負担によって肘に痛みが生じる。
ジャンパー膝 ジャンプや着地動作を頻繁に行うことで膝に痛みが生じる。バレーボールやバスケットボールの選手に多い。
アキレス腱炎 ランニングやジャンプでアキレス腱に負担がかかり、痛みや腫れを引き起こす。

スポーツで突発的に起こりやすいケガ

試合や練習中の転倒・接触で起こる急性のケガもあります。スポーツで突発的に起こりやすいケガについて、以下の表にまとめました。ケガの程度によって手術が必要な場合もありますが、安静に過ごすことで痛みが治まることが多いです。
痛みや腫れが強い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

捻挫 関節を不自然な形にひねってしまうことで、軟骨や靭帯を痛める。
肉離れ 筋肉が部分的に切れたり裂けたりすることによって、強い痛みが生じ、内出血が見られることもある。
骨折 転倒や衝撃により、骨が折れてしまう。

スポーツ障害を防ぐための基本的なセルフケア

スポーツ障害は日々の取り組み次第で防げることも少なくありません。ここからは、スポーツ障害を防ぐための基本的なセルフケアについて解説します。

ウォーミングアップ・クールダウンを行う

スポーツ障害を防ぐためにはウォーミングアップとクールダウンが欠かせません。

ウォーミングアップには、体温・代謝を上げ、関節を柔軟にする効果があります。ウォーミングアップをせずに突然激しい運動をすると、筋肉が硬いまま負荷がかかり、ケガの原因になるため、運動前には15〜20分ほど、ストレッチやジョギングをして身体を温めましょう。

運動後は、急激に運動を停止するのではなく、ジョギングやウォーキングなどで徐々に動きを緩め、ストレッチやアイシングなどをしましょう。

成長期に合わせた無理のないトレーニングをする

身長が急に伸びる時期は、一時的に筋力が追いつかず、関節に負担がかかりやすくなります。成長スピードや体格差における個人差も大きい時期なので、それぞれの発育に合わせた無理のないトレーニングをすることが大切です。

正しい指導ができる指導者のもとで適切なトレーニングをするようにしましょう。

正しいフォームを意識する

正しいフォームを意識することも大切です。フォームが間違っていると、身体の特定部位ばかりに負荷が集中し、スポーツ障害の原因となります。フォームを動画でチェックしたり、指導者にアドバイスをもらったりするとよいでしょう。

睡眠・栄養バランスを整える

スポーツ障害の予防のためには、日々の睡眠と食事も重要です。身体を作る基本となる三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)をバランスよく摂るとともに、疲労回復を促すビタミンやミネラルが不足しないようにしましょう。

また、睡眠時に分泌される成長ホルモンは、筋肉や骨の成長を促すだけでなく、疲労回復や筋肉の修復にもかかわっています。遅くとも日付が変わる前には寝て成長ホルモンの分泌を促しましょう。

ケガをしたときの応急処置とセルフケア

ここからはケガをしたときの応急処置として役立つケアを紹介します。あくまでも応急処置なので、痛みが続く・腫れる・歩けない・プレーできないほどの症状があれば、できるだけ早く専門家に診てもらうようにしましょう。

RICE処置(Rest・Ice・Compression・Elevation)

捻挫や肉離れなど、突然のケガをしたときの応急処置として「RICE処置」があります。

 Rest(安静):患部を固定し、損傷部位の腫れや血管・神経の損傷を防ぐ
 Ice(冷却):氷・保冷剤で患部を15~20分ほど冷却する
 Compression(圧迫):テーピング・包帯で圧迫気味に固定し、腫れや内出血を抑える
 Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置に上げる

ケガをしてすぐにRICE処置をすることで、腫れや痛みを緩和する効果があります。RICE処置のあとはできるだけ早く受診するようにしましょう。

サポーターやテーピング

関節への負担を軽減するために、サポーターやテーピングで関節を固定するのも効果的です。薬局やドラッグストアでも購入できる主おもなサポーターやテーピングテープには以下のシリーズなどがあります。

バンテリンコーワサポーター/バンテリンコーワテーピングテープ
ピップ プロ・フィッツ サポーター/ピップ プロ・フィッツ キネシオロジーテープ

サポーターやテーピングは、痛みを隠して無理に練習を続けるための道具ではありません。症状が続く場合は医療機関で痛みの原因を調べてもらうとよいでしょう。

市販薬・外用剤

すぐに医療機関を受診できない場合は、薬局やドラッグストアでも痛み止めや湿布などを購入できます。

ロキソニンSシリーズボルタレンシリーズは医療用と同じ成分が使われています。体質や他に服用中のお薬との兼ね合いで使えないこともあるため、購入の際は、薬剤師に症状の部位や痛みの経過、服用中のお薬などを伝えて、適切なものを提案してもらうとよいでしょう。

医療機関と連携したケアの必要性

「痛いけど動けるから大丈夫」「そのうち治るだろう」

安易な自己判断が長引く痛みや選手生命の短縮につながることもあります。ちょっとした痛みや違和感であっても早めに医療機関を受診して、適切にケアしていくことが大切です。

自己判断で放置するとどうなるか

スポーツ中に生じた痛みや違和感を自己判断で放置すると、以下のようなリスクがあります。

 慢性的な痛みが残る
 関節や腱に負荷がかかりやすい体の使い方がクセになる
 将来の運動パフォーマンスが低下
 大きなケガにつながる

特に成長期のスポーツ障害については、我慢してプレーを続けていると将来的に障害が残る可能性もあるため、長期的な視点をもって早めに対処することが重要です。

子どもたちの中には、痛みを訴えたり練習を休んだりすると、試合に出してもらえないと思い、無理して練習を続けてしまう子どももいます。指導者をはじめとする周囲の大人が注意深く様子を見るとともに、「痛い」と言い出しやすい環境を作ってあげるようにしましょう。

整形外科やリハビリ科への受診が必要なサイン

整形外科やリハビリ科への受診が必要なサインには以下のものがあります。

 3日以上経っても痛みが良くならない
 痛みのある部位に明らかに腫れや熱感がある
 痛みのせいで歩き方やプレーの様子がおかしい
 特定の動き(ジャンプ、ボールを投げるなど)をしたときに必ず痛みが出る
 夜、痛みで眠れない

これらの症状が見られる場合は、早めに専門家に相談するようにしましょう。

医師・トレーナー・薬局との連携のメリット

スポーツ障害の治療は長期にわたることが珍しくありません。医師・トレーナー・薬局と連携して治療していくことで、以下のようなメリットがあります。

 ケガの原因を見極められる
 適切な治療・リハビリを受けられる
 サポーターや薬の正しい使い方を教えてもらえる
 再発予防のためのトレーニングの提案を受けられる

薬局では、「病院に行くべきか迷う」「湿布やテーピングの使い方がわからない」といった場合の日常の相談ができます。

医療機関受診後、薬局でできるサポート

薬局は、治療終了までの継続サポートの場にもなります。最後に薬局でできるサポートをご紹介します。

湿布・塗り薬・鎮痛薬の適切な使用アドバイス

薬局では、湿布・塗り薬・鎮痛薬の適切な使用アドバイスを受けられます。お薬を使用していく中でなかなか症状が良くならない場合や湿布かぶれなどのトラブルがあった場合は、まず薬剤師に相談してみましょう。

テーピングやサポーターの選び方と使い方指導

テーピングやサポーターはさまざまな種類のものが販売されており、選び方や使い方に迷うこともあると思います。薬局では、必要に応じてスポーツ用のテープや関節サポーターを提案し、使い方までサポートします。

体調不良やオーバートレーニングの早期発見のための相談窓口提供

薬局では、疲労がとれない、生理不順、食欲がないなど、痛み以外の症状についても相談できます。このような不調に関してのセルフケアを提案するとともに、必要に応じて適切な医療機関の受診を勧める場合もあります。

受診するか迷う場合や、まずはセルフケアで様子を見たいという場合は薬局で相談してみましょう。

成長期のスポーツには、スポーツ障害のケアをはじめ、適切なトレーニング、食事、休息など、周囲の大人が適切にサポートしていく必要があります。長期にわたってサポートしていくために、かかりつけ薬局を決めておくことをおすすめします。

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