マイコプラズマ肺炎の特徴と予防法を薬剤師が解説

健康・予防

執筆者・監修者:薬剤師

「長引くせき、熱が下がらない…もしかして風邪?」

子どもから大人までかかることのあるマイコプラズマ肺炎は、風邪と間違われやすい感染症のひとつです。特に秋から冬にかけて流行する傾向があり、注意が必要です。この記事では、マイコプラズマ肺炎の基本や症状、治療法、予防のポイントをわかりやすく解説します。

マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、一般的な風邪と症状が似ているため見逃されがちですが、適切な治療が必要な感染症です。名前の通り「肺炎」ですが、潜伏期間が長かったり軽症であれば出歩くことができる場合もあり、「歩く肺炎」とも呼ばれています。

この感染症の基本的な特徴を知っておくことが、早期発見・早期治療につながります。

病原体の特徴

マイコプラズマ肺炎の原因となるのは「肺炎マイコプラズマ( Mycoplasma pneumoniae )」という細菌です。一般的な細菌と異なり、細胞壁を持たないという特殊な性質があります。そこのため、細胞壁に作用するペニシリン系やセフェム系などの抗生物質が効かないという特徴があります。

ウイルス性の風邪と違って細菌感染であるため、適切な抗菌薬による治療が必要になります。薬剤師として、この点は患者さんに正しく理解していただきたいポイントです。

主な症状と経過

マイコプラズマ肺炎の症状は風邪と似ていますが、特徴的な経過をたどることが多いです。熱が下がらない、咳が長引くといった症状が続く場合は、マイコプラズマ肺炎を疑う必要があります。

初期症状

初期症状は一般的な風邪と区別がつきにくいことが特徴です。

 37〜38℃程度の発熱
 のどの痛み・イガイガ感
 乾いた咳(痰が少ない)
 頭痛
 全身のだるさ

これらの症状だけでは風邪と判断されることも多く、見逃されやすい原因となっています。

症状の特徴

マイコプラズマ肺炎の特徴的な症状は「長引く咳」です。一般的な風邪であれば1週間程度で改善することが多いですが、マイコプラズマ肺炎では以下のような特徴があります。

 咳が2〜3週間、時には1ヶ月以上も続く
 夜間や早朝に咳が悪化することが多い
 徐々に咳が強くなり、胸痛を伴うこともある
 熱が下がったあとも咳だけが長引く

こういった症状が見られる場合は、マイコプラズマ肺炎を疑って医療機関を受診することをお勧めします。

重症化リスク

多くの場合は重症化せず自然に回復しますが、以下のような方は注意が必要です。

 5歳以下の小児や高齢者
 免疫機能が低下している方
 慢性的な呼吸器疾患(喘息など)をお持ちの方
 喫煙者

これらの方々は重症化すると肺炎が進行し、入院が必要になることもあります。症状が悪化した場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

感染経路と流行時期

マイコプラズマ肺炎は特定の季節に流行する傾向があります。感染経路を理解し、流行時期には特に注意することが重要です。

一般的な感染経路

マイコプラズマ肺炎の主な感染経路は「飛沫感染」です。
具体的には以下の通りです。

 感染者の咳やくしゃみによる飛沫
 会話中の唾液の飛沫
 感染者との近距離での接触

感染力はインフルエンザほど強くありませんが、発症前から感染力があり、症状が軽い場合でも他の人に感染させる可能性があります。

感染が広がりやすい環境

主に以下のような環境で感染が広がりやすくなります。

 家庭内(特に子どもから家族への感染)
 学校や保育施設
 オフィスなどの職場環境
 閉鎖的で換気の悪い空間

昨年(2024年)は10月上旬から感染拡大が報告され、特に学校や保育施設でのクラスター発生が多く見られました。

流行時期の傾向

マイコプラズマ肺炎は主に秋から冬にかけて流行する傾向がありますが、数年周期で大きな流行を起こすことが知られています。

 主な流行期:10月〜3月頃
 3〜4年周期で大きな流行が見られる
 室内で過ごす時間が長くなる寒い季節に増加

最近の傾向として、従来の流行パターンが変化している可能性もあり、年間を通じて注意が必要です。

感染した際の治療法

マイコプラズマ肺炎と診断された場合、適切な治療を受けることが重要です。早期の治療開始により、症状の軽減や回復期間の短縮が期待できます。

主に使用される抗菌薬

マイコプラズマ肺炎の治療には、以下のような抗菌薬が用いられます。

 マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)
 テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリンなど)
 ニューキノロン系抗菌薬

これらの薬は細胞壁を持たないマイコプラズマに効果的です。ただし、近年マクロライド耐性のマイコプラズマが増加しており、効果が見られない場合は他の抗菌薬に変更されることもあります。

薬の服用期間は通常5〜14日間程度ですが、症状や重症度によって医師が判断します。処方された抗菌薬は、症状が改善しても指示された期間はしっかり服用することが大切です。

薬に関する不安があれば薬剤師に相談を

抗菌薬には、副作用や他の薬との相互作用があることがあります。特に以下のような場合は、お薬を受け取る際に薬剤師にご相談ください。

 他の薬を服用している場合
 過去に薬でアレルギー反応が出たことがある場合
 妊娠中または授乳中の場合
 子どもへの投与で心配がある場合

症状を和らげるための対症療法(解熱鎮痛薬や咳止め薬など)についても、市販薬を含めて適切な選択ができるよう薬剤師がサポートいたします。

薬剤師は、あなたの健康状態を継続的に把握し、日々の健康管理から慢性症状の改善まで、あなたの健康をトータルでサポートします。マイコプラズマ肺炎などの感染症も、専門家に相談することで適切な治療や安心感につなげることができるでしょう。

薬剤師に相談する際には、LINEの「つながる薬局」のサービスを利用してみませんか。「つながる薬局」のサービスは、LINEで友だち登録後にお好きな薬局をかかりつけ薬局として登録すると、薬に関する疑問をLINEを使って薬局の薬剤師に気軽に相談できます。

また、このサービスには処方箋を薬局に事前送信できる「処方箋送信機能」があるので、薬局を訪れる前に処方箋の画像を事前送信しておくと、薬局を訪れた際スムーズにお薬を受け取ることが可能です。ぜひご利用をご検討ください。

日頃からできる予防法

マイコプラズマ肺炎は予防が可能な感染症です。日常生活での基本的な感染対策を心がけることで、感染リスクを下げることができます。

手洗い・うがい

感染予防の基本は手洗いとうがいです。

 外出先から帰ったとき、食事前、トイレの後などこまめに手を洗う
 石けんを使って30秒以上、指の間や爪の間も丁寧に洗う
 うがいは喉の粘膜の保湿にも役立つため、定期的に行う

特に流行時期には、これらの基本的な習慣を徹底することが大切です。

定期的な換気

マイコプラズマは空気中に漂い、閉鎖的な空間では感染リスクが高まります。定期的な換気をすることが大切です。

 室内では1時間に1回程度、数分間の換気を
 家族に感染者がいる場合は、より頻繁に換気を
 空気清浄機の使用も補助的な効果がある

特に冬場は窓を開けたくない季節ですが、短時間でも定期的に換気することが重要です。

気になる症状がある場合は早めの受診

風邪のような症状が続く場合、特に以下のような場合は早めに医療機関を受診しましょう。

 咳が1週間以上続く
 熱が下がらない、または一度下がった後に再び発熱
 息苦しさや胸痛がある
 顔色が悪い、唇が紫色になる

早期の診断と治療が症状の悪化を防ぎ、周囲への感染拡大を防止することにつながります。

咳エチケットの大切さ

マイコプラズマ肺炎の主な感染経路は飛沫感染です。感染を広げないためには、一人ひとりが「咳エチケット」を実践することが非常に重要です。

感染を広げないために一人ひとりができること

咳エチケットの基本は以下の通りです。

 咳やくしゃみをする際は、マスクを着用する
 マスクがない場合は、ティッシュやハンカチ、袖などで口と鼻を覆う
 咳やくしゃみの際は、他の人から顔をそむける
 使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨てる
 咳が出る時は外出を控える、または必ずマスクを着用する

厚生労働省の指針によると、咳エチケットは感染症対策の基本であり、特に公共の場では徹底することが求められています。症状があるときだけでなく、無症状でも感染している可能性があるため、流行時期には予防的にマスクを着用することも効果的です。

予防や早期治療に薬剤師を活用しよう

マイコプラズマ肺炎は適切な知識と対策でがあれば、予防や早期治療が可能な感染症です。特に「咳が長引く」「熱が下がらない」といった症状が見られる場合は、マイコプラズマ肺炎の可能性を考慮し、早めに医療機関を受診しましょう。

薬剤師は、マイコプラズマ肺炎に関して以下のようなサポートを提供できます。

 抗菌薬の適切な飲み方や注意点の説明
 症状を和らげる市販薬の選択アドバイス
 抗菌薬と他のお薬との飲み合わせの確認
 抗菌薬の副作用や対処法についての情報提供
 予防法や感染対策についての相談

薬剤師に相談する際には、LINEの「つながる薬局」のサービスを利用してみてください。

タイトルとURLをコピーしました