執筆者・監修者:薬剤師
「朝起きたとき、顎にだるさを感じる」
「口を開けようとしたとき、カクッと音が鳴ることがある」
食いしばりや歯ぎしりなど無意識の癖が続くと、顎の関節や筋肉に負担がかかりこのような痛みや開けにくさにつながります。とくに、朝起きたときの顎のだるさや、口を開けたときの「カクッ」という音は、顎関節症(がくかんせつしょう)の初期サインかもしれません。
本記事では、顎関節症の基礎知識・初期症状・放置した場合の影響・セルフケアのポイントなどを解説します。また、薬局で受けられるサポートについてもご紹介します。
顎関節症とは
顎関節症は、顎の関節や筋肉に負担がかかることで起こる機能障害です。口の開閉に関わる関節や咀嚼筋(そしゃくきん:噛むための筋肉)に炎症や緊張が生じ、痛みや動かしにくさが出ます。
無意識の強い噛み締め(食いしばり)や歯ぎしりが続くことで、関節や筋肉に慢性的なダメージが蓄積することが主な原因の一つとされています。
若年層から中高年まで幅広く発症し、決して珍しい病気ではありません。仕事や人間関係のストレス、パソコン・スマートフォンの操作による悪い姿勢など、現代ならではの生活習慣の影響を受けやすく、誰にでも起こり得る身近なトラブルです。
初期にみられる代表的な症状
顎関節症は、ある日突然口が開かなくなることもあれば、少しずつ違和感が強くなることもあります。顎関節症 初期症状として見逃しやすい、代表的なサインを解説します。
朝起きたときの顎のだるさや疲労感
睡眠中に無意識に歯ぎしりや食いしばりをしていると、顎の筋肉が休まらず、朝起きたときに重だるさや疲労感が生じます。しっかり寝たはずなのに顎周りが疲れていると感じたら、夜間に強い力がかかっているサインかもしれません。
口を開けたときの音
あくびをしたり、食べ物を噛んだりするために口を開けた時に音(カクッ、ポキッ、ジャリッなど)が鳴る症状です。これは顎の関節にあるクッションの役割をする軟骨(関節円板)がズレることで生じます。痛みがないからと放置されがちですが、顎関節症の代表的なサインの一つです。
大きく口を開けにくい感覚
大きく口を開けようとしたとき、引っかかりを感じたり、スムーズに開けられなかったりする場合は注意が必要です。顎の関節や筋肉がこわばり、可動域が狭くなっている状態であり、無理に開けようとすると痛みを伴うこともあります。
こめかみや耳周囲の痛み
食いしばりは、顎の痛みが起こるだけではありません。噛む筋肉は頭の横(側頭筋)まで繋がっているため、こめかみまで痛いと感じることもあります。
また、顎の関節は耳のすぐ前にあるため、耳の痛みや耳鳴りのように感じる方も少なくありません。
顎関節症が及ぼす影響
顎関節症を放置すると、顎周りだけでなく、全身の不調につながることもあります。ここでは、顎関節の不具合が及ぼす主な影響について解説します。
歯の摩耗や知覚過敏
過度な食いしばりや歯ぎしりは、顎の関節だけでなく歯そのものにも多大な負担をかけます。歯のエナメル質がすり減って知覚過敏を引き起こしたり、最悪の場合は歯が欠けたり割れたりする原因にもなります。
肩こりや首こりの悪化
顎の筋肉(咀嚼筋)は、首や肩の筋肉とも連動しています。顎の筋肉が常に緊張している状態が続くと、その緊張が首や肩にも伝わります。慢性的な肩こりや首こりを引き起こしたり、悪化させたりする要因となるのです。
睡眠の質の低下
就寝中の歯ぎしりや食いしばりによる顎のだるさ、痛み、またはそれらに伴う首・肩の不快感により、睡眠が浅くなることがあります。
十分な休息がとれないことで日中の疲労感が抜けず、さらにストレスが溜まって食いしばりが強くなるという悪循環に陥ることもあります。
顎関節症かもしれないと思ったら
顎に違和感や痛みを感じたとき、悪化を防ぐために日常生活で心がけたいポイントや、医療機関を受診する目安をご紹介します。
まずは顎を安静にし、負担を減らす
硬い食べ物(フランスパン、スルメなど)や、ガムを長時間噛むことは避け、顎の関節と筋肉を休ませましょう。また、頬杖をつく癖や、うつ伏せ寝も顎に負担をかけるため、意識して避けることが大切です。
痛みや開口量の変化を記録する
いつから痛みがあるのか、どのくらい口が開くのか(指何本分か)、カクッという音の変化などをメモしておくと、受診時に医師へ正確な情報を伝えることができます。
症状の波を把握することも、悪化のサインを見逃さないために有効です。
日中の食いしばりに気づく習慣をつける
パソコン作業中や家事の合間など、無意識に上下の歯がくっついていないか確認しましょう。本来、リラックスしているときは上下の歯にはわずかな隙間があります。
「歯が触れている」と気づいたら、深呼吸をして肩の力を抜き、顎をリラックスさせる習慣をつけることが大切です。
鎮痛薬などが必要なときは薬局で相談する
急な痛みでつらいときは、市販の鎮痛薬で一時的に痛みを和らげることも選択肢の一つです。どのお薬を選べばよいか迷った際や、現在飲んでいるお薬がある場合は、薬局の薬剤師に相談して安全なものを選びましょう。
痛みが続く場合は歯科口腔外科へ相談する
セルフケアを行っても痛みが引かない、口が指2本分も開かない、食事がとれないといった場合は、早めに歯科口腔外科や顎関節症を専門とする歯科医院を受診してください。マウスピースの作成など、適切な治療を受けることが重要です。
薬局でできるサポート
顎関節症の治療の主体は歯科医院ですが、薬局でも痛みの緩和やセルフケアのサポートを行うことができます。身近な健康相談の窓口として、ぜひ活用してください。
食いしばりや歯ぎしり対策グッズの紹介
薬局やドラッグストアでは、市販のマウスピースなど、歯ぎしり対策グッズを取り扱っている場合があります。歯科医院で作るオーダーメイドのものとは異なりますが、一時的な保護や予防としてどのような商品があるのか、薬剤師や登録販売者に相談することができます。
鎮痛薬の適正使用アドバイス
顎の痛みに対して市販の鎮痛薬を使用する場合、痛みの強さや体質に合わせたお薬選びを薬剤師にサポートしてもらうことも可能です。
また、胃への負担を減らす飲み方や、長期間使用し続けないための注意点など、適正な使用方法についてアドバイスをしてくれます。
併用薬との飲み合わせ確認
すでに病院から処方されているお薬がある場合、市販の鎮痛薬を一緒に飲んでも問題ないか、薬剤師が専門的な視点で飲み合わせ(相互作用)を確認してくれます。これにより、副作用のリスクを未然に防ぐことができます。
症状のヒアリングと受診目安の案内
痛みの状態や期間、生活習慣などをヒアリングし、市販薬で様子を見てもよい段階か、すぐに歯科医院を受診すべき状態かの客観的なアドバイスをしてくれます。
受診を迷っている場合の最初の相談先としても薬局は役立ちます。
薬局の利用をもっと便利にする「つながる薬局」
顎関節症は必ずしもお薬の常用が必要な疾患ではありませんが、痛みがつらいときの鎮痛薬の相談や、日々のちょっとした健康不安など、薬局は身近な相談窓口として頼れる存在です。そうした薬局の利用をさらに便利にするのが、「つながる薬局」のサービスです。
LINE公式アカウント「つながる薬局」のサービスには、処方箋送信の機能があります。もし歯科医院でお薬が院外処方された場合、薬局に行く前に事前に処方箋の情報を送信すれば、薬局での待ち時間がぐっと短くなります。
「つながる薬局」は処方箋送信のほかにも、LINEから気軽に薬局の薬剤師に健康・お薬相談ができたり、電子お薬手帳の機能があり、日常的なサポートをLINEひとつで手軽に利用できます。顎の痛みや鎮痛薬選びに迷ったときの最初の相談窓口としてもご活用いただけます。
また、「つながる薬局」のサービスからオンライン服薬指導を受けることもできます。
オンライン服薬指導は、スマートフォンやパソコンを使い、ビデオ通話で薬剤師からお薬の説明を受けられるサービスです。自宅にいながら、対面と同様にお薬の飲み方・注意点・飲み合わせなどの説明を受けることができます。
体調がすぐれず外出が難しいときや、忙しくて薬局での待ち時間を減らしたい場合に特に便利です。
お薬の相談先に迷ったときの最初の一歩として、ぜひ活用してみてください。 詳しくは、つながる薬局紹介サイトをご覧ください。
つながる薬局は、薬局への処方箋送信から健康・お薬相談、お薬手帳までLINEひとつでご利用いただけるサービスです!
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執筆者:下田 篤男
資格:薬剤師
経歴:京都大学薬学部総合薬学科卒業。 卒業後は薬剤師として調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務。 総合病院門前などで管理薬剤師として経験を積んだのち、マネジメント業務にも携わる。現在は医療機関で薬剤師として働く傍ら、医療記事の執筆、編集や薬局経営コンサルタントなどをおこなっている。
薬剤師としての現場経験をベースに、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントなど多方面で活動しています。執筆では「難しい医療情報を、日常の言葉でわかりやすく届ける」ことを信条にしています。薬局の窓口で患者さまからいただく素朴な疑問が、記事づくりの大きなヒントになっています。



