執筆者:看護師・監修者:薬剤師
「胸が張って痛むけれど、妊娠の心当たりはない」
「毎月この時期になると胸が重くなる」
そんな症状を感じながら、原因がわからずに不安を抱えていませんか。
胸の張りは月経にともなう自然な変化の場合もありますが、ホルモンバランスの乱れや乳腺の病気が背景にあることも。本記事では、妊娠していないのに胸の張りが起こる原因や関連する疾患、受診の目安と治療法について紹介します。
妊娠していないのに胸の張りが起こる原因とは?
胸の張りには、女性ホルモンの変動が深く関わっています。どのようなメカニズムで起こり、どのタイミングに出やすいのかを確認しておきましょう。
胸の張りが起こるメカニズム
胸の張りの多くは、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響によるものです。月経周期に応じてこれらのホルモン分泌量が変化し、乳腺や乳房の組織に働きかけることで、張りや痛みが生じます。
エストロゲンは乳腺全体の発育を促し、プロゲステロンは乳腺の小葉・腺房の発達と乳汁産生の準備を担っており、月経前の黄体期にこの両ホルモンの分泌が上昇することで乳房の張りや痛みが起こりやすくなるとされています。
これらのホルモン変動は、月経のある女性の場合、誰にでも起こるものであり、胸の張りが周期的に繰り返されるのはそのためです。
胸の張りがよく起こるタイミング
胸の張りが起こりやすいタイミングとして、主に以下の3つが挙げられます。まず、生理前の時期。プロゲステロンが乳腺の発達を促し、体内に水分をためこむ作用があるため、胸の張りや重さを感じやすくなります。
次に、排卵後の黄体期。プロゲステロンの分泌が増加し、同様の影響が出やすい時期です。また、ストレスや睡眠不足が続くと、自律神経の乱れを通じてホルモンバランスが崩れ、月経周期とは無関係に張りが生じることもあります。
胸の張りに関係する可能性のある疾患
胸の張りが続く場合、何らかの疾患が関係していることがあります。代表的なものを確認し、気になる症状と照らし合わせてみてください。
乳腺症
乳腺症は30〜40歳代の女性に多くみられる、乳腺のさまざまな良性変化をひとくくりにした総称です。また、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが関わっており、乳房の痛みや張り、乳頭からの透明〜血液混じりの分泌物などがみられることがあります。
このほか、乳房の表面にでこぼこしたしこりが現れるのも主な症状のひとつです。
乳腺炎(うっ滞性または細菌性)
主に授乳中の女性に起こりやすい疾患です。母乳が乳腺の中にたまってスムーズに排出されない状態(乳汁うっ滞)や、乳頭からの細菌感染が原因となります。
また、胸の張りや授乳時の痛みのほか、胸の赤み・腫れ・発熱・乳頭からの膿といった症状が現れることがあります。
高プロラクチン血症
乳汁分泌を促すホルモン「プロラクチン」が過剰に分泌される状態です。脳の下垂体に腫瘍がある場合や、神経症状に用いる薬・降圧剤の一部が原因となることもあります。
また、胸の張りのほか、出産していないのに母乳が出る、月経異常などが見られることがあります。
乳がん
血縁者に乳がん罹患者がいる・初経が12歳以前・出産や授乳の経験がないといった特徴は、乳がんのリスク因子として知られています。ただし、これらはあくまで傾向であり、該当するからといって必ず乳がんになるわけではありません。
また、該当しない場合でも発症するケースはあります。胸の張り以外に、硬くゴツゴツしたしこり・左右の胸の大きさの変化・皮膚のへこみや引きつれ・毛穴が部分的に目立つといった変化があれば、早めの受診が望ましいとされています。
医療機関を受診するサイン
以下のような症状が見られる場合は、乳腺外来や婦人科への相談を検討してください。
● しこりがある、または形・左右差が急に変わった
● 片側だけ強い痛みが2〜3週間以上続く、または悪化している
● 胸の赤み・腫れ・熱感がある
● 乳頭から分泌物が出る(とくに血液が混じる場合)
上記に当てはまらない場合でも、気になる変化や不安を感じたときは、早めに受診する習慣が大切です。胸の赤みや腫れ、熱感といった症状は乳腺炎などの場合もあるため、自己判断で様子を見続けないようにしましょう。
必要な検査や治療方法
症状や原因によって、必要な検査と治療の内容は異なります。受診の際にどのような流れになるのかを事前に把握しておくと、診察をよりスムーズに受けられるでしょう
必要な検査
受診時に行われる主な検査として、乳腺エコー(超音波検査)・マンモグラフィ・ホルモン検査の3つが挙げられます。
乳腺エコーは痛みがなく妊娠中でも受けられる検査で、乳腺症・線維腺腫・乳腺炎など幅広い病変の確認に用いられます。マンモグラフィは乳房をX線で撮影する検査で、乳がん検診に用いられ、がんのサインのひとつである石灰化の確認が可能です。
ただし、若い人は乳腺が発達していて写りにくい場合があるため、年齢や症状に応じて選択されます。
このほか、ホルモン検査は血液検査でプロラクチン・甲状腺ホルモン・女性ホルモンなどのバランスを調べるもので、高プロラクチン血症や甲状腺の異常が胸の張りの原因かどうかを確認できます。
主な治療方法
治療は原因や症状によって異なります。痛みが強い場合はイブプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬が用いられます。また、月経前の胸の張りが辛い場合やホルモンの乱れが原因の場合は、婦人科で低用量ピルや黄体ホルモン剤による治療が検討されることがあります。
なお、胸に赤みや熱感・強い痛み・発熱がある場合は細菌感染の可能性があるため、抗菌薬(抗生剤)が処方されます。
医療機関を受診した後、薬局でできるサポート
受診後も「薬の飲み方がよくわからない」「日常のケアはどうすれば?」と迷うことがあるかもしれません。かかりつけ薬局は、そんな場面でも気軽に相談できる場所です。
たとえば、処方薬の飲み方の確認や再診の目安についてのアドバイスのほか、日常のセルフケアに役立つグッズの提案も行っています。また、ピルや他のお薬が胸の張りに影響することもあるため、現在服用中のものがあれば薬剤師に伝えておくと安心です。
なお、LINE公式アカウント「つながる薬局」のサービスを活用すれば、お好きな薬局をかかりつけ薬局として登録するだけで、薬局の薬剤師にLINEで相談ができます。「処方薬の飲み方がわからない」「症状がまだ続いているけど再診すべきか」といった相談も、気軽に送れる点が特徴のひとつです。
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執筆者:隈﨑 愛樹
資格:看護師
経歴:聖マリアンナ医科大学看護専門学校卒業後、救命センターや集中治療室から在宅といった幅広い現場で約10年勤務。現在は医療ライターをメインにフリーランスとして活動しています。
看護師として救命センターや集中治療室、在宅医療などで約10年間勤務。臨床経験を活かし、2023年より医療ライターとして活動しています。医療・ヘルスケア分野を中心に記事執筆やコンテンツ制作を行い、医療現場の視点から正確で分かりやすく、読者の疑問や不安に配慮した情報発信を心がけています。プライベートでは5歳と1歳の母。料理や薬膳茶づくりが趣味です。




