便秘や下痢をくり返す人が気をつけたい「過敏性腸症候群」とは。症状・タイプ・おすすめの市販薬などをご紹介

健康・予防

執筆者:看護師・監修者:薬剤師

「お腹の不調が続いているのに、検査では何も異常がないと言われた」
「ストレスがかかると必ずお腹が痛くなる」
このような経験が思い当たる方はいませんか。

便秘と下痢をくり返す状態を「体質だから」と我慢してしまう方も少なくありませんが、背景に過敏性腸症候群(IBS)が関わっているケースがあります。本記事では、過敏性腸症候群の基礎知識から、タイプ別の特徴、受診のタイミング、症状に合わせた市販薬の選び方まで幅広く解説していきます。

過敏性腸症候群とは

腸が精神的ストレスや自律神経失調などを原因として刺激に対して過敏な状態になり、便通異常を引き起こす疾患が、過敏性腸症候群(IBS)です。有病率は日本人の約10%と報告されており、決して珍しくない疾患のひとつといえます。

まずは症状・タイプ・特徴の3つに分けて整理してみましょう。

主な症状

腸そのものに明らかな異常がないにもかかわらず、慢性的に腹痛や便通異常を繰り返す点が特徴。腹痛や腹部の不快感などの症状が、排便によって軽減されることも多いとされています。

そのほか、お腹の張り・残便感・ガスが溜まりやすいといった症状がみられることもあり、症状の出方には個人差があります。

タイプ

過敏性腸症候群には以下の4つのタイプがあります。

分類 特徴
下痢型 腹痛と下痢症状が主体
便秘型 腹部の張り感と便秘症状が主体
混合型 便秘と下痢をくり返す
分類不能型 上記に当てはまらないタイプ

なかでも、下痢型・便秘型・混合型の3つが代表的なタイプとして広く知られています。

特徴

過敏性腸症候群には、以下のような共通した特徴があります。

幅広い年代にみられる
青年期から20代に発症しやすい傾向がある一方、職場や学校でストレスを抱える世代を中心に、幅広い年代でみられる疾患です。

ストレスや緊張で悪化しやすい
試験や重要な仕事の前など、プレッシャーがかかる場面でお腹の不調が出やすく、要因が和らぐと症状が軽快することも多いとされています。

便の状態が日によって大きく変わる
下痢が続いたかと思えば便秘になるなど、便の硬さや回数が安定しないまま繰り返されやすい点が特徴です。

腹痛や不快感が排便で軽くなる
腹痛や腹部の不快感が排便によって軽減されることが多い点も、過敏性腸症候群に特徴的なサインのひとつとされています。

上記はあくまで一例のため、症状には個人差があることを知っておくことが大切です。

便秘と下痢を繰り返す理由

腸の不調がなぜ繰り返されるのか、その背景にあるメカニズムを3つの視点から確認していきましょう。

腸の動きが過敏になり刺激に反応しやすくなっている

過敏性腸症候群では腸の運動や感覚が通常より敏感になっており、少しの刺激でも痛みや不快感を感じやすい状態になっています。また、健康な腸であれば問題なく処理できる刺激でも過剰に反応してしまうため、腹痛や便通の乱れが繰り返されやすくなるのです。

ストレスや自律神経の乱れが腸に影響している

脳と腸は自律神経を通じてつながっており、「脳腸相関」と呼ばれる密接な関係があるとされています。

ちなみに、緊張や不安を感じると脳から腸へ信号が送られ、腸の動きが乱れやすくなるのはこのため。試験前や大事な場面でお腹が痛くなる経験がある方は、まさにこの脳腸相関が働いている状態といえるでしょう。

なお、脳腸相関の仕組みについては、このメディア内の記事『腸内環境を整える腸活の基本』でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

食事内容や生活リズムの変化が引き金になっている

暴飲暴食・アルコールやカフェインの過剰摂取・脂っこい食事・不規則な生活リズムなども、腸の過敏な反応を引き起こしやすい要因として知られています。

なかでも、小麦・乳製品・豆類・一部の果物など、「FODMAP(フォドマップ)」と呼ばれる特定の食品群が症状のきっかけになるケースも。症状の管理のためには、日頃から食事の内容や食べ方を意識することが大切です。

医療機関を受診すべきタイミング

過敏性腸症候群は自己判断が難しく、似た症状でも別の疾患が隠れている可能性があります。以下のサインがある場合は、早めに消化器内科を受診することが望ましいといえます。

便秘や下痢が数週間以上続いている

お腹の不調が一時的なものではなく、数週間にわたって続いている場合は受診を検討しましょう。過敏性腸症候群は慢性的な経過をたどることが多いとされているため、長引く症状を放置せず早めに相談することが大切です。

腹痛が強く夜間に症状で目が覚める

夜中に腹痛で目が覚めるほどの強い症状は、炎症性腸疾患など他の疾患を疑うサインになることがあります。こうした症状が続く場合は自己判断せず、すぐに医療機関での診察が必要です。

体重減少や血便・発熱などほかの症状を伴う

日本消化器病学会のガイドラインでは、血便・体重減少・発熱などの危険因子がある場合には大腸内視鏡検査などを行う必要があるとされています。これらの症状は過敏性腸症候群以外の疾患が原因である可能性が高いため、速やかな受診が必要です。

市販薬や生活改善で改善がみられない

市販薬を使用したり生活習慣を見直したりしても症状が改善しない場合は、専門医による診断と治療が必要な段階といえます。症状が日常生活に支障をきたしている場合も、受診を優先してください。

過敏性腸症候群に使える市販薬

症状が軽めの場合や、以前に診断を受けたことがある方の再発時には、市販薬での対処も選択肢のひとつです。症状に合わせた選び方を確認しておきましょう。

腹痛・お腹の張りを和らげるお薬

過敏性腸症候群の効能・効果をもつ市販薬として、腸の平滑筋の異常な収縮を抑制するペパーミントオイルを主成分とする「コルペルミン」と、腸の働きを正常に戻すトリメブチンマレイン酸塩を主成分とする「セレキノンS」の2種類があります。

ただし、これらはいずれも過去に過敏性腸症候群と診断・治療を受けたことがある方の再発時にのみ使用できるものです。はじめて症状が出た方は使用できないため、まずは医療機関へ受診しましょう。

下痢を落ち着けるお薬

下痢症状には、腸の過剰な運動を抑えて水分を吸収し下痢を止めるロペラミド塩酸塩を含む市販薬がおすすめです。たとえば、「ストッパ」や「トメダインコーワ」などがあります。

なお、いわゆる「下痢止め薬」は、感染性腸炎による下痢の場合はウイルスや細菌の排出を妨げてしまうため原則として使用は推奨されません。そのため、下痢症状に悩む際には、購入前に薬剤師に症状を伝えたうえで選ぶようにしましょう。

便秘を緩和するお薬

便秘型の症状には、便に水分を含ませて柔らかくする「酸化マグネシウムE便秘薬」などの酸化マグネシウム系の下剤や、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を促す「スルーラックS」などのビサコジル系のお薬が広く用いられています。

なかには習慣性が生じやすいものもあるため、用法・用量を守ることに加えて、長期間の連用は避け、症状が続く場合は医師や薬剤師に相談することが大切です。

腸内環境を整えるお薬

整腸剤は、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌など腸内細菌のバランスを整える善玉菌を含んだお薬が用いられます。たとえば「新ビオフェルミン(R)S」「強ミヤリサン®︎錠」などが代表的です。

これらは、副作用が少なく幅広い年代に使いやすい点が特徴で、下痢・便秘のどちらのタイプにも活用されています。

市販薬を使うときのポイント

市販薬は手軽に入手できますが、正しく選んで使うことが前提です。購入前に、以下のポイントを押さえておきましょう。

自己判断で購入せず薬剤師に相談

症状が複数ある場合や、どのお薬を選べばよいか判断に迷う場合は、薬剤師への相談が最も確実な対応です。似た症状でも原因が異なることがあるため、自分で決めるよりも症状をしっかり伝えたうえで選んでもらうほうが安心でしょう。

服用中のお薬がある場合は必ず飲み合わせを確認

処方薬やほかの市販薬をすでに服用している場合、新たにお薬を加えると飲み合わせの問題が生じることがあります。「大丈夫だろう」と自己判断せず、服用中のお薬を薬剤師に伝えたうえで確認することがセルフケアするうえでのお約束です。

症状が長引く場合は医療機関での相談が必要

市販薬で対処しても改善がみられない場合や、症状が悪化している場合は、使用を続けるよりも医療機関を受診することが重要です。

また、過敏性腸症候群は慢性的な疾患であり、適切な診断と治療によって症状の管理が可能になることも多いため、一人で抱えずに専門家に相談する環境を整えておくことが大切です。

もし「どのお薬を選べばよいか分からない」「症状が続いていて受診すべきか迷っている」という場合は、かかりつけ薬局への相談も選択肢のひとつです。

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隈﨑 愛樹

執筆者:隈﨑 愛樹

資格:看護師

経歴:聖マリアンナ医科大学看護専門学校卒業後、救命センターや集中治療室から在宅といった幅広い現場で約10年勤務。現在は医療ライターをメインにフリーランスとして活動しています。

看護師として救命センターや集中治療室、在宅医療などで約10年間勤務。臨床経験を活かし、2023年より医療ライターとして活動しています。医療・ヘルスケア分野を中心に記事執筆やコンテンツ制作を行い、医療現場の視点から正確で分かりやすく、読者の疑問や不安に配慮した情報発信を心がけています。プライベートでは5歳と1歳の母。料理や薬膳茶づくりが趣味です。

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