執筆者:看護師・監修者:薬剤師
「急にお腹が痛くなった」
「下痢や吐き気が続いてつらい…」
その症状は、食あたり(食中毒)が原因かもしれません。
食あたりになると、「食あたりに市販薬を使ってもいいの?」「下痢止めを飲めば早く治る?」と迷う方も多いでしょう。しかし、食あたりの場合、自己判断で下痢止めを使用すると、原因となる細菌やウイルスを体内にとどめてしまい、回復が遅れる可能性があります。
この記事では、食あたりの原因別の症状や潜伏期間のほか、治るまでの期間から正しい市販薬の選び方まで詳しく解説します。辛い症状に落ち着いて対応するための参考にしてください。
食あたり(食中毒)とは?主な症状について
食あたりと食中毒は日常的に使い分けられることがありますが、医学的にはほぼ同じ意味で使われています。まずは症状と定義を整理しておきましょう。
食あたりと食中毒の違いは?
食あたりとは、細菌やウイルス、寄生虫、自然毒などが付着した飲食物を口にすることで起こる体調不良の総称です。一方「食中毒」はこれらが原因となって起こる健康被害を指す医学的な名称で、一般的には同じ意味で使われることが少なくありません。
また、食あたりは季節によって原因が異なります。気温や湿度が高い時期は細菌性食中毒が増えやすく、冬場はノロウイルスなどウイルス性の食あたりが多くみられます。食品の保存方法や調理方法に気を付けることが、予防につながります。
食あたりの主な症状
食あたりの症状は原因によって異なりますが、代表的な症状は以下のとおりです。
● 下痢
● 腹痛
● 吐き気・嘔吐
● 発熱
● 倦怠感
症状の程度は人によってさまざまで、軽い下痢だけで改善することもあれば、激しい腹痛や繰り返す嘔吐、高熱を伴うケースもあります。下痢や嘔吐が続くと体内の水分や電解質といった成分が失われ、脱水症状を起こすこともあるため注意が必要です。
食あたりに効く市販薬の選び方と注意点
「とにかく早く楽になりたい」という気持ちから市販薬に頼りたくなりますが、食あたりの場合はお薬の選び方に注意が必要です。
下痢止め・解熱鎮痛剤の自己判断はNG!?
下痢や嘔吐といった症状はとても辛いものですが、食あたりにおいては、原因となる細菌やウイルス、有害物質を体外へ排出するための大切な防御反応でもあります。そのため、下痢止め(止瀉薬)を自己判断で服用すると、病原体が腸内にとどまり、症状が長引いたり悪化したりする可能性があり注意が必要です。
また、発熱や腹痛に対して解熱鎮痛剤を使用すると、一時的に症状が和らぐことはありますが、病状の変化に気付きにくくなる場合もあります。高熱や激しい腹痛、血便を伴う場合は、市販薬だけで対応せず医療機関を受診しましょう。
市販薬を使用する際の注意点
もし市販薬を使う場合は、胃腸の働きを止めることなく腸内環境を整える整腸薬や胃腸薬を選ぶようにしましょう。これらは、胃腸の働きを整えながら自然回復をサポートする働きが期待でき、副作用も少ないためです。
ただし、症状が重い場合や改善がみられない場合は、薬剤師に相談したうえで判断することが大切です。
自宅でできる正しい対処法
食あたりの多くは、安静と水分補給を中心とした対処で回復に向かいます。自宅でできる正しいケアの方法を把握しておきましょう。
こまめな水分補給
食あたりの対処で最も重要なのが脱水予防です。下痢や嘔吐によって失われた水分や電解質を補うため、少量ずつこまめに水分を補給しましょう。
なお、脱水のリスクがある際の水分補給としておすすめなのは経口補水液です。経口補水液は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も補えます。
嘔吐があるときは「横向き」に寝る
嘔吐が続くときは、吐いたものが気管に入る誤嚥を防ぐため、横向きの姿勢で休みましょう。
特に、乳幼児や高齢者では誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)につながる恐れもあるため、周囲の人が様子を見守ることも大切です。
食事は無理せず、消化の良いものを少しずつ
吐き気や腹痛が落ち着いてきたら、おかゆやうどん、スープなど消化の良いものから少しずつ摂り始めましょう。
また、脂っこい料理や香辛料の多い食事、アルコール、カフェインなどは胃腸への刺激となるため、症状が改善するまでは控えることをおすすめします。
二次感染を防ぐポイント
ノロウイルスなどウイルス性の食あたりでは、吐物や排泄物から家族へ感染が広がることがあります。
吐物・排泄物を処理する際は使い捨ての手袋やマスクを着用し、処理後は次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒しましょう。
なお、ノロウイルスについての詳細は、このサイト内の「冬は食中毒に注意。ノロウイルスによる感染性胃腸炎の予防・対処のポイントを紹介」で紹介していますので、ご覧ください。
【原因別】食あたりの潜伏期間と治るまでの期間
食あたりは原因によって症状が出るまでの時間(潜伏期間)と回復にかかる期間が大きく異なります。「いつ食べたものが原因か」を知る手がかりとして参考にしてください。
細菌性の食あたり(カンピロバクター・サルモネラ菌など)
カンピロバクターの潜伏期間は2〜5日間で、腹痛・下痢・発熱・吐き気などの症状が現れ、基本的に7日以内に改善するとされています。サルモネラ菌は1〜3日程度の潜伏期間を経て、同様の消化器症状が現れ、1〜4日で症状が治るのが特徴です。
なお、潜伏期間や症状の経過には個人差があるため、あくまで目安として考えましょう。
ウイルス性の食あたり(ノロウイルスなど)
ノロウイルスの潜伏期間は24〜48時間で、嘔吐と下痢を中心とした症状が現れます。症状は1〜2日続き、その後回復することが多いとされていますが、感染力が非常に強く二次感染に注意が必要です。
なお、冬季を中心に流行し、カキなどの二枚貝の生食が主な原因のひとつとして知られています。
寄生虫・自然毒による食あたり(アニサキスなど)
アニサキスの潜伏期間は1時間〜数日で、みぞおちの激しい痛み・悪心・嘔吐が主な症状です。アニサキスはサバ・サケ・イカなどの刺身に潜む寄生虫で、胃壁や腸壁に侵入することで激しい痛みが生じます。
また、胃アニサキス症では、内視鏡で虫体を摘出する治療が行われることがあります。疑わしい症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
判断に迷ったらすぐに病院へ!受診の目安
次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
● 水分がほとんど摂れない
● 激しい腹痛が続く
● 血便が出ている
● 38℃以上の高熱が続く
● 半日以上尿が出ない
● 意識がぼんやりしている
また、乳幼児や高齢者のほか、妊娠中や持病のある方は重症化しやすいため、症状が軽く見えても早めの受診をお勧めします。
なお、このサイト内には食中毒に関する記事も掲載しています。「夏の食中毒から子どもを守る!保護者が知るべき対策法」もあわせてご覧ください。
まとめ
食あたりは多くの場合、安静と水分補給を中心とした対処で回復に向かいます。ただし、下痢止めの自己判断使用は症状を長引かせるリスクがあるため、市販薬を使う場合は整腸薬を選ぶことが基本です。
もし「どの市販薬を選べばいいか迷う」「症状が続いているが受診すべきか判断できない」という場合は、薬局の薬剤師への相談も選択肢のひとつです。たとえば、LINE公式アカウント「つながる薬局」のサービスを活用すれば、お好きな薬局をかかりつけ薬局として登録するだけで、登録した薬局の薬剤師に体調についてLINEから相談できますよ。
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執筆者:隈﨑 愛樹
資格:看護師
経歴:聖マリアンナ医科大学看護専門学校卒業後、救命センターや集中治療室から在宅といった幅広い現場で約10年勤務。現在は医療ライターをメインにフリーランスとして活動しています。
看護師として救命センターや集中治療室、在宅医療などで約10年間勤務。臨床経験を活かし、2023年より医療ライターとして活動しています。医療・ヘルスケア分野を中心に記事執筆やコンテンツ制作を行い、医療現場の視点から正確で分かりやすく、読者の疑問や不安に配慮した情報発信を心がけています。プライベートでは5歳と1歳の母。料理や薬膳茶づくりが趣味です。



