執筆者・監修者:薬剤師
兄弟姉妹が同じような症状を訴えていると「前にもらったお薬を使っていいのかな?」と迷うこともあるのではないでしょうか。
しかし、小児のお薬は年齢や体重、症状の原因や重症度などによって使い分けが必要です。
本記事では、兄弟姉妹で同じ症状が出た場合に注意したいポイントや比較的問題になりにくいケースについて、薬剤師の視点で解説します。また、薬局で相談できることについてもご紹介します。
兄弟姉妹で同じ症状でも注意が必要
兄弟姉妹が同じタイミングで発熱や咳、鼻水などの症状が出ると、「上の子にもらったお薬が残っているから下の子にも飲ませよう」と考える方もいるかもしれません。
まずは、一見同じように見える症状であっても自己判断で同じお薬を使うのは避けたほうがいい理由について解説します。
同じ症状でも原因が違うことがある
「熱がある」「咳が出る」「鼻水が出る」といった症状は同じでも、その原因は必ずしも同じとは限りません。
例えば、咳であれば風邪によるものだけでなく、気管支炎や喘息、アレルギーなどさまざまな原因が考えられます。また、発熱もウイルス感染だけでなく、細菌感染や中耳炎などが原因となることがあります。
症状だけを見て「同じ病気だろう」と判断し、兄弟姉妹のお薬を使ってしまうと本来必要な治療が遅れてしまう可能性もあるため注意しましょう。
同じ症状でも重症度が異なることがある
同じ症状であっても、症状の程度は子どもによって異なります。
例えば兄は38℃の発熱だけで元気に過ごしていても、弟は高熱に加えて水分も十分に摂れず、ぐったりしているというケースも珍しくありません。
症状が軽く見えても、重症度によっては早めの受診や別のお薬が必要になることがあるため、自己判断はせず注意深く様子を見ましょう。
年齢や体重の違いでお薬の量や使い方が変わる
子どものお薬は、基本的に年齢や体重に合わせて、一人ひとり適切な量が決められています。
例えば体重が15kgの子と25kgの子では、必要なお薬の量が異なることがあります。また、年齢によって使用できるお薬や剤形(シロップ・粉薬・錠剤など)が変わる場合もあります。
兄弟姉妹だからといって同じ量を飲ませると、効果が十分に得られなかったり、副作用のリスクが高まったりすることがあるため注意しましょう。
人によって副作用やアレルギー症状が出ることがある
同じお薬でも、人によって副作用やアレルギー症状の出方は異なります。
以前に兄が問題なく飲めたお薬でも、弟は発疹やじんましんなどのアレルギー症状が出るかもしれません。また、持病や服用中のお薬によっては使用できない場合もあります。
兄弟姉妹であっても体質は一人ひとり違います。お薬を使い回していると、もし万が一副作用が出てしまった場合に医薬品副作用被害救済制度(国が定める救済制度) の対象にならない恐れもあるため、兄弟姉妹でお薬を使い回すのは避けましょう。
※医薬品副作用被害救済制度・・・医薬品(病院・クリニックで処方されたお薬のほか、薬局等で購入したお薬も含みます)を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や年金などの給付をおこなう公的な制度
兄弟姉妹でお薬を使い回してはいけない理由
兄弟姉妹で同じような症状が出ていると、「以前もらったお薬が余っているから使えそう」と思うこともあるでしょう。しかし、処方薬はその子の症状や体の状態に合わせて処方されたものであり、自己判断で処方された子以外に使ってはいけません。
一方で、市販薬の中には、年齢や体重などの条件を満たしていれば兄弟姉妹で一緒に使用できるものもあります。ここでは、処方薬を使い回してはいけない理由を確認しておきましょう。
処方薬はその子専用に処方されている
病院で処方されるお薬は、診察結果をもとに、その子の年齢や体重、症状の程度、持病やアレルギーの有無などを総合的に判断して選ばれています。
たとえ兄弟姉妹で同じような症状があっても、必要なお薬の種類や量は異なることがあります。
「前回よく効いたから」「兄も同じ症状だったから」という理由だけで処方薬を飲ませると、本来必要な治療が遅れたり、副作用が現れたりする可能性もあるため使い回してはいけません。
抗生物質や咳止めなどは症状や診断によって使い分けが必要
子どもによく処方される抗生物質や咳止めも、症状だけで選ばれているわけではありません。
例えば、抗生物質は細菌感染に対して使用するお薬であり、ウイルスによる風邪には基本的に効果がありません。
また、細菌の種類によって使用する抗生物質が異なります。処方された抗生物質は、指示どおり最後まで飲み切るようにしましょう。
咳止めについても、乾いた咳なのか痰が絡む咳なのか、喘息が関係しているのかなどによって適したお薬が変わります。見た目の症状が似ていても、原因に合わせた治療を受けることが大切です。
飲ませ方や飲む回数で効果や安全性が変わる
処方薬は、「いつ」「どのくらいの量を」「何日間飲むか」を検討した上で医師が処方しています。
例えば、抗生物質は症状が良くなったからといって途中で飲むのをやめると、十分な効果が得られなかったり、お薬が効きにくい細菌(耐性菌)が増えたりする原因になります。
また、兄弟姉妹でお薬を使い回すと、本来必要な量や日数を満たせなくなることもあります。処方されたお薬は、必ず本人が指示どおりに使用しましょう。
条件によっては同じお薬を飲んでもいい場合がある
一方で、市販薬については、年齢や体重、用法・用量を守れば兄弟姉妹で使用できるものもあります。
例えば、小児用の解熱鎮痛薬や風邪薬の多くは、対象年齢や体重ごとの服用量が決められており、その条件に当てはまれば使用できます。
ただし、市販薬であっても「同じ症状だから」と安易に判断するのではなく、対象年齢や使用上の注意をよく確認することが大切です。
持病がある場合や、ほかのお薬を飲んでいる場合、症状が長引く場合などは、医師・薬剤師に相談してから使用するようにしましょう。
市販薬と処方薬では考え方が違う
兄弟姉妹でお薬を使い回してはいけないと聞くと、「市販薬もダメなの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実は、処方薬と市販薬ではお薬の考え方が大きく異なります。処方薬は一人ひとりに合わせて処方されるのに対し、市販薬は一般の方が自分で選んで使用できるよう設計されています。それぞれの違いを理解しておきましょう。
処方薬は診察結果をもとに個別に調整されている
処方薬は、医師が診察して症状や診察結果をもとに一人ひとりに合わせて処方します。
子どもの場合は、年齢や体重だけでなく、症状の程度、持病の有無、アレルギー歴、ほかに服用しているお薬なども考慮して、お薬の種類や量が決められます。
例えば、同じ「熱がある」という症状でも、インフルエンザや中耳炎、肺炎など原因はさまざまです。診断によって必要なお薬は異なるため、兄弟姉妹で同じ症状に見えても、同じ処方になるとは限りません。
処方薬はその子の診察結果をもとに選ばれたお薬であることを理解しておきましょう。
市販薬は年齢・体重別の目安で使う設計になっている
市販薬は、医療機関を受診しなくても一般の方が自分で選んで使用できるように対象年齢や服用量、使用上の注意があらかじめ定められています。
例えば、小児用の解熱鎮痛薬や風邪薬には、年齢や体重の目安が記載されており、その範囲内であれば兄弟姉妹でも一緒に使用できる場合があります。
ただし、市販薬でも年齢制限や使用できない病気、ほかのお薬との飲み合わせなどには注意が必要です。また、高熱が続く、呼吸が苦しそう、水分がとれないなど症状が重い場合は、市販薬で様子を見るのではなく、医療機関を受診するのがおすすめです。
兄弟姉妹で一緒に使っても問題になりにくいお薬
市販薬の中には、年齢や体重などの使用条件を満たしていれば、兄弟姉妹で一緒に使用できるものがあります。
ただし、症状が長引く場合や悪化している場合は、市販薬だけで対応せず、医療機関を受診しましょう。
頭痛薬・解熱鎮痛薬
アセトアミノフェンという解熱鎮痛作用のある成分を含む小児用の解熱鎮痛薬は、年齢や体重に応じた用量を守れば、兄弟姉妹それぞれに使用できる市販薬です。
例えば、発熱や頭痛、のどの痛みなどがある場合に使用できます。
ただし、高熱が続く場合や生後3か月未満の赤ちゃんが発熱している場合は、自己判断で市販薬を使用せず、速やかに小児科を受診してください。
軽い風邪薬
鼻水や鼻づまり、咳などに使用する小児用の風邪薬も、市販薬であれば対象年齢や用量を守って使用できます。
ただし、風邪薬は症状を一時的に和らげるためのお薬であり、病気そのものを治すものではありません。
発熱が長引く、咳がひどく眠れない、呼吸が苦しそうなどの症状がある場合は、早めに小児科を受診しましょう。
胃腸薬
子ども用の整腸薬や消化薬なども、市販薬で対象年齢に合っていれば兄弟姉妹で使用できる場合があります。
一方で、腹痛や嘔吐、下痢の原因は胃腸炎だけでなく、虫垂炎(ちゅうすいえん)や腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)などの病気が隠れていることもあります。症状が強い場合や、水分が摂れないほどの嘔吐が続く場合は、市販薬だけで様子を見ずに医療機関を受診してください。
外用薬
虫刺されやあせも、軽い湿疹などに使用する市販の塗り薬も、使用できる年齢や部位を守れば兄弟姉妹で使用できることがあります。
ただし、同じような発疹に見えても、とびひや水ぼうそう、ヘルペスなど感染症が原因の場合は、市販薬では対応できないことがあります。
また、容器の先端を患部に直接触れさせるタイプのお薬は、細菌やウイルスが付着する可能性もあるため、使用後は清潔に保ち、衛生面にも配慮しましょう。
市販薬で対応できるのは、あくまでも軽い症状の場合です。症状が改善しない場合や悪化している場合は、自己判断を続けず、医師や薬剤師へ相談することが大切です。
なお、兄弟姉妹で一緒に使っても問題になりにくいのは「市販薬」の場合であり、医療機関で処方されたお薬ではありません。
兄弟姉妹で絶対に一緒に使ってはいけないお薬
基本的に病院で処方されるお薬は一緒に使うことはできません。
処方薬は病気の種類や重症度、体質などを考慮して一人ひとりに処方されています。自己判断で使用すると、十分な効果が得られないだけでなく、副作用や病気の悪化につながるおそれもあるため注意しましょう。
抗生物質
抗生物質は、細菌による感染症に対して使用するお薬です。
一見同じような発熱や咳、鼻水の症状でも、原因が細菌とは限りません。原因が細菌でない場合に不必要に抗生物質を服用すると、症状が改善しないだけでなく、耐性菌ができる原因にもなります。
また、細菌感染であっても、病気によって適切な抗生物質の種類や服用期間は異なります。兄弟姉妹で分け合うことはせず、指示された期間しっかりと服用しましょう。
喘息・アレルギー治療薬
喘息やアレルギーの治療薬も、兄弟姉妹で使い回してはいけません。
喘息の治療では、症状の程度や発作の頻度に応じて吸入薬や内服薬の種類・量が細かく調整されています。また、アレルギー治療薬も年齢や体重、症状に合わせて処方されています。
同じように咳や鼻水が出ていても、喘息によるものなのか、風邪によるものなのかで必要なお薬は異なります。自己判断で使用せず、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。
てんかん・心臓のお薬
てんかんや心臓病の治療薬は、特に慎重な管理が必要なお薬です。
体重だけでなく、病気の種類や重症度、血液中のお薬の濃度なども考慮して処方されているため、兄弟姉妹での使い回しは非常に危険です。
誤って服用すると重い副作用につながる可能性もあるため、処方された本人以外には絶対に使用しないでください。
ステロイドの内服薬
ステロイドの飲み薬は、強い炎症やアレルギー反応を抑えるために使用されます。
病気によって必要な量や服用期間が大きく異なり、急に中止すると体に影響が出ることもあります。そのため、医師の指示どおり続けることが大切です。
皮膚の湿疹や咳など、兄弟姉妹に似た症状があったとしても、自己判断で飲ませることは避けましょう。
小児薬について薬局で相談できること
子どものお薬について、「飲ませ方が合っているかわからない」「市販薬を選びたいけれど種類が多くて迷う」と感じる保護者の方は少なくありません。
そんなときは自己判断せず、薬剤師に相談するのがおすすめです。薬局では、お薬を渡すだけでなく、小児のお薬に関するさまざまな相談に対応しています。
年齢・体重に合ったお薬選びの方法
子どものお薬は、年齢だけでなく体重によって使用できる種類や量が異なることがあります。
市販薬を選ぶ際はその子の年齢や体重、症状に合ったものを選ぶことが大切です。
薬剤師に相談すれば、現在の症状や体重などを確認したうえで、適切な市販薬の選び方や受診が必要かどうかについてアドバイスを受けられます。
飲ませ方の工夫
お薬を嫌がって飲んでくれないという悩みは、薬局で保護者の方からよく相談される悩みの一つです。
粉薬を飲ませるコツや、ゼリーや少量の飲み物・食べ物に混ぜてもよいかなど、お薬ごとの特徴に合わせた工夫を薬剤師が提案してもらえます。
また、飲み忘れた場合や吐いてしまったときに飲み直しが必要かどうかなどもお薬によって対応が異なるため、迷ったときは相談すると安心です。
保管方法
お薬は保管方法を間違えると、品質を保てなくなることがあります。粉薬やシロップの中には、冷蔵保存が必要なものや使用期限が短いものもあるため、適切に保管する必要があります。
「このお薬は冷蔵庫に入れた方がいい?」「いつまで使える?」といった疑問も、薬剤師に確認しておくと安心です。
なお、お薬の保管方法については、このサイト内の「薬剤師が解説!お薬の正しい保管方法」にも詳細が載っていますので、ぜひご一読ください。
医療機関を受診すべきかどうか
「市販薬で様子を見ても大丈夫?」「すぐに受診した方がいい?」と判断に迷うこともあるでしょう。
市販薬で対応できそうか、それとも早めに医療機関を受診した方がよいかの目安については、症状を確認した上で薬剤師からアドバイスをもらうことができます。
子どものお薬についての疑問や不安がある場合は、LINE公式アカウント「つながる薬局」のサービスがおすすめです。「つながる薬局」を友だち追加して、お好きな薬局をかかりつけ薬局として登録するだけで薬局の薬剤師にLINEから相談できます。
また、つながる薬局では、病院でもらった処方箋の画像をスマートフォンから事前に薬局に送信できます。お薬の準備ができたと連絡を受けてから受け取りに向かうこともできるため、具合の悪い子どもと一緒に薬局で長時間待つ必要がありません。ぜひ活用を検討してみてください。
まとめ
兄弟姉妹で発熱や咳、鼻水など似たような症状が出ていても、原因や症状の重さ、年齢・体重などによって必要なお薬は異なります。そのため、病院で処方されたお薬を兄弟姉妹で使い回すのはやめましょう。
一方、市販薬の場合は、対象年齢や体重などの条件を満たしていれば、兄弟姉妹で一緒に使用できるものもあります。
ただし、高熱が続いている、呼吸が苦しそう、水分がとれない、症状がなかなか改善しないといった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
「このお薬を使っても大丈夫?」「兄弟で同じ市販薬を使える?」など、お薬について迷ったときは、薬剤師に相談してみましょう。
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執筆者:Rika
資格:薬剤師
経歴:大学卒業後、調剤薬局勤務(7年)。現在は慢性期病院勤務。
5歳と0歳の男の子を育てているママ薬剤師です。一般の方にもわかりやすい記事の執筆を心がけています。精神科病院でのパート勤務のかたわら、東洋医学を学んで不妊治療を乗り越えた経験を生かして、妊娠に向けた体づくりや不妊治療についての情報発信にも取り組んでいます。



