サルコペニアとは?気になる症状と診断基準、予防法を解説【セルフチェック表つき】

健康・予防

執筆者:看護師・監修者:薬剤師

「以前より歩くのが遅くなった」
「立ち上がったり階段を上ったりするのがつらくなってきた」
など、年齢とともに感じる体の変化はありませんか?

こうした変化の背景には、加齢に伴って筋肉量や筋力が低下するサルコペニアが隠れていることがあります。サルコペニアが進行すると、転倒や骨折、日常生活の活動低下につながる可能性があるため、早めに気づいて対策することが大切です。

この記事では、サルコペニアの症状や原因をはじめ、自宅で確認できるセルフチェックの方法や診断基準について解説します。さらに、食事や運動を通じた予防・改善のポイントも紹介するので、ご自身やご家族の健康管理に役立ててください。

サルコペニアとは?

サルコペニアについて理解するには、まずどのような状態を指すのかを知ることが大切です。ここでは、サルコペニアの定義や種類、混同されやすいフレイル・ロコモとの違いについて見ていきましょう。

サルコペニアの定義と種類

サルコペニアとは、高齢になるに伴い、骨格筋量の低下に加えて、筋力や身体機能が低下した状態です。加齢が主な要因ですが、疾患や身体活動量の低下、栄養不足などが関係することもあります。

サルコペニアは、原因によって次の2つに分けられます。

種類 主な特徴
一次性サルコペニア 65歳以上で、加齢以外に明確な原因が見当たらない場合
二次性サルコペニア 活動量の低下、低栄養などの疾患、加齢以外の原因が1つ以上ある場合

このように、加齢だけでなくさまざまな要因が関係するため、原因を踏まえて適切に対策することが大切です。

フレイル・ロコモ(ロコモティブシンドローム)との違い

サルコペニアとあわせて耳にすることが多いのが、「フレイル」と「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」です。それぞれ意味する範囲が異なります。

用語 対象範囲 概要
サルコペニア 筋肉 加齢による筋肉量・筋力の低下
ロコモ(ロコモティブシンドローム) 運動器全体(筋肉・骨・関節など) 運動器の障害により移動機能が低下した状態
フレイル 心身全体 運動機能に加え、心理面・社会面も含めた心身の衰え

これらは、筋肉量の減少が引き金となって運動器の機能が落ち、進行すると心身全体が衰えていく、という段階的な関係にあります。

サルコペニアの主な症状と原因

サルコペニアは、日常生活の何気ない変化として現れることがあります。ここでは、主な症状や筋肉量が減少する原因、注意したいサルコペニア肥満について見ていきましょう。

こんな症状に注意!サルコペニアの初期サイン

サルコペニアは、筋力や身体機能の低下といった症状として現れることがあります。日常生活のなかで、次のような変化がないか確認してみましょう。

 ● 以前より歩く速度が遅くなった
 ● 椅子から立ち上がるときに手をつくようになった
 ● 階段の上り下りや歩行が以前よりつらくなった
 ● つまずいたり、転んだりすることが増えた

こうした変化がみられる場合は、加齢によるものと決めつけず、医療機関などで相談してみましょう。

なぜ筋肉量が減る?加齢と生活習慣の関係

サルコペニアの主な要因は加齢ですが、活動不足や栄養不良、疾患なども筋肉量の低下に関係します。特に、次のような状態には注意しましょう。

 ● 活動量の低下
 ● たんぱく質などの栄養不足
 ● 糖尿病や慢性腎臓病などの疾患

加齢による変化は避けられませんが、運動や適切な栄養摂取によって予防につなげられる可能性があります。

見た目ではわからない「サルコペニア肥満」の危険性

筋肉量の減少と体脂肪の増加が重なった状態を「サルコペニア肥満」(隠れ肥満)と呼びます。見た目は太っていなくても、体の内部で内臓脂肪が増えているケースが少なくありません。

また、サルコペニアや肥満をそれぞれ単独で抱える場合と比べ、生活習慣病や転倒・骨折のリスクが高まりやすいとされ、注意が必要です。

【自宅で簡単】サルコペニアのセルフチェックと診断基準

自宅では、道具を使わずに手軽に行える方法として「指輪っかテスト」と「立ち上がりテスト」があります。あわせて、医療機関で用いられる正式な診断基準も見ていきましょう。

自宅でできるセルフチェック方法1:指輪っかテスト

「指輪っかテスト」とは、ふくらはぎの太さからサルコペニアのリスクを簡易的に確認する方法です。以下の手順を参考に、ご自身の状態を確認してみましょう。

1.膝が直角になり、足の裏がしっかりと地面に着くように椅子に座る
2.両手の親指と人差し指で輪をつくる
3.利き足ではない方の脚を軽く上げる
4.ふくらはぎの一番太い部分を、力を入れずに軽く囲む

囲んだときの状態 目安
囲みきれない 筋肉量が十分である可能性が高い
ちょうど囲める 筋肉量が十分である可能性が高い
隙間ができる 筋肉量が少ない可能性がある

隙間ができた場合は、サルコペニアのリスクが高い可能性があります。ただし、指輪っかテストだけでサルコペニアを診断することはできません。気になる症状がある場合は、医療機関などに相談しましょう。

自宅でできるセルフチェック方法2:5回椅子立ち上がりテスト

「5回椅子立ち上がりテスト」とは、下肢の筋力や身体機能を確認する方法です。

1.背もたれのある椅子に座り、両腕を胸の前で組む
2.座った状態から立ち上がり、再び座る動作を5回繰り返す
3.立ち上がるまでにかかった時間を測る

もしも、5回の立ち上がりに10秒以上かかった場合は、身体機能が低下している可能性があります。気になる場合は、医療機関で筋力や筋肉量なども含めて確認してもらいましょう。なお、転倒の危険がある場合や、膝・腰などに痛みがある場合は、無理に行わないでください。

医療機関でのサルコペニア診断基準(AWGS)

サルコペニアの正確な診断には、握力や骨格筋量などの測定が必要です。アジアにおけるサルコペニアの診断基準であるAWGS2025では、筋力の低下と筋肉量の低下の両方を満たすことが診断の基本となります。

65歳以上の主な基準値の例は次のとおりです。

項目 男性 女性
握力 28kg未満 18kg未満
骨格筋量(DXA法・身長補正) 7.0kg/㎡未満 5.4kg/㎡未満

なお、骨格筋量の測定には専門機器が必要なため、正確な診断は医療機関へご相談ください。

サルコペニアを予防・改善する「食事」と「運動」

サルコペニアの予防・改善には、日頃の食事と運動習慣が重要です。ここでは、筋肉量を維持するための栄養のとり方と、無理なく続けられる運動のポイントを紹介します。

【食事対策】筋肉を作るタンパク質と必須栄養素

筋肉量の維持には、たんぱく質の摂取が重要です。肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などを、毎食取り入れることを意識しましょう。サルコペニア対策では、体重1kgあたり1日1.0g以上を目安に、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などを毎食取り入れましょう。

ただし、腎臓病などで食事制限を受けている場合は、自己判断で増やさず、主治医に相談してください。

【運動対策】無理なく続ける筋トレと有酸素運動

サルコペニアの予防・改善には、筋力トレーニングを継続することが大切です。スクワットや椅子からの立ち上がりなど、無理なくできる運動から始めましょう。

また、ウォーキングなどの有酸素運動を組み合わせるのもおすすめです。痛みや体調に不安がある場合は、無理をせず医療機関に相談してください。

まとめ:親や自身の体調変化に気づいたら早めに対策を!

サルコペニアは「年のせい」で片付けられがちですが、放置すると転倒や骨折、要介護状態につながるおそれがあります。まずは、指輪っかテストや5回椅子立ち上がりテストで、ご自身やご家族の状態を確認してみてください。気になる症状があれば、早めに医療機関へ相談しましょう。

そのうえで、日々の食事でたんぱく質をしっかり摂り、無理のない範囲で筋トレと有酸素運動を続けることが、予防・改善への近道です。今日からの小さな習慣が、将来の健康を守る一歩になります。

なお、サルコペニアに限らず、普段のお薬や体調について気になることがあれば、薬局の薬剤師に相談するのも一つの方法です。

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隈﨑 愛樹

執筆者:隈﨑 愛樹

資格:看護師

経歴:聖マリアンナ医科大学看護専門学校卒業後、救命センターや集中治療室から在宅といった幅広い現場で約10年勤務。現在は医療ライターをメインにフリーランスとして活動しています。

看護師として救命センターや集中治療室、在宅医療などで約10年間勤務。臨床経験を活かし、2023年より医療ライターとして活動しています。医療・ヘルスケア分野を中心に記事執筆やコンテンツ制作を行い、医療現場の視点から正確で分かりやすく、読者の疑問や不安に配慮した情報発信を心がけています。プライベートでは5歳と1歳の母。料理や薬膳茶づくりが趣味です。

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