お役立ちコラム

USEFUL COLUMNS

2025年改正薬機法で何が変わる?変更のポイントと薬局で取るべき対応

「2025年改正薬機法が成立した背景・目的は?」
「改正薬機法のポイントは?」
「改正薬機法はいつから施行される?」

こうした疑問を抱える薬局関係者や医療従事者の方は少なくありません。
2025年に公布された改正薬機法では、調剤業務委託や市販薬の遠隔販売など、薬局のあり方を大きく変える内容が含まれています。

当記事では、2025年に成立した改正薬機法の概要を整理し、薬局に求められる対応や準備すべき体制整備の方向性を解説します。最後まで読むことで、薬局が今後担うべき役割や準備の優先順位が明確になり、制度改正を実務に活かすヒントを得られるでしょう。

 

1.2025年改正薬機法成立の背景と目的

薬機法の改正には、医療の現場や流通体制での課題が影響しています。法制度の整備によって対応が求められる背景には、医療を取り巻く社会全体の変化も密接に関係しています。

ここでは、改正薬機法成立の背景や目的について、詳しく見ていきましょう。

供給不安・不正事案への制度対応

医薬品の安定供給と品質確保を制度的に担保することが、薬機法が改正された目的の一つです。背景には、後発医薬品の製薬会社での不正製造やGMP違反が相次ぎ、全国的に供給不安定な状況が発生した事案があります。特に、製造能力を超えた品目数の展開や経営体制の脆弱さが露呈し、患者さんの治療継続に支障をきたしました。こうした問題は企業の自主的改善では限界があり、行政による制度的対応が不可欠と判断され、法的枠組みの整備を通じて再発防止と信頼回復が求められたのです。

創薬環境の変化と技術革新への適応

革新的な医薬品開発を支援し、迅速な承認対応を可能にすることも改正薬機法の目的の一つです。背景として、再生医療やAI創薬など新技術の進展により、従来の審査制度では新薬実用化の遅れ(ドラッグ・ラグ)が顕在化していました。また、条件付き承認制度の活用が進まない実態があり、探索的試験段階での迅速な承認制度の整備が求められる状況でした。こうした背景をふまえ、国際標準に即した承認制度の柔軟化が必要と判断されたのです。

薬局の社会的役割強化の必要性

地域医療の担い手として、薬局の社会的役割を制度的に強化することも改正薬機法の目的の一つです。背景には、調剤後の継続的な服薬支援や医療機関との連携が今以上に求められる現状の課題があります。高齢化の進展や在宅医療の拡大に鑑み、健康相談・副作用モニタリングなど、薬局に求められる機能がより多様化してきました。こうした事情をふまえ、地域包括ケアに貢献できる薬局像の再定義が求められたのです。

2.薬局に直接関係する改正薬機法の主なポイント

薬局を取り巻く医療環境の変化に対応するため、現場の運営や役割に関わる制度整備が進められています。地域住民への貢献度や利便性向上が重視されるなか、法的な枠組みも見直されました。

ここでは、薬局に関係する改正薬機法のポイントを解説します。

調剤業務の一部外部委託が法制化

調剤業務の一部を他薬局に委託できる制度が法制化され、業務の効率化が可能になります。改正薬機法により、一定の要件を満たす薬局間で、一包化や錠剤分包などの調剤補助業務を委託できます。ただし、都道府県の許可取得、業務内容の事前契約、委託元薬局による最終確認が必要です。制度の活用により、薬剤師は対人業務に専念しやすくなり、薬局サービスの質向上が見込めるでしょう。

薬剤師不在店舗での市販薬販売が解禁

薬剤師不在でも、一定の条件下で市販薬を販売できる制度が新たに導入されます。薬剤師等が遠隔から複数店舗を監督し、購入者には情報提供義務が課される仕組みです。背景には、夜間や地方における医薬品購入の機会不足があり、消費者の利便性を確保することが課題となっていました。改正薬機法により、今後はコンビニエンスストアなどでの市販薬販売も現実味を帯びてきたといえます。

薬局情報の提供義務と公表制度の整備

改正薬機法では、利用者が薬局を選びやすくなるよう、薬局情報の報告義務と公表制度が整備されます。背景には、高齢化の増加や在宅医療の普及によって、住民が薬局の機能や相談対応能力を比較検討したいというニーズが高まったことがあります。

改正薬機法で整備されるのは、以下の仕組みです。

  • 薬局が運営状況や提供サービスを都道府県等に報告
  • 報告内容が「医療情報ネット」により住民に見える化

上記により、かかりつけ薬局や健康サポート薬局などの特徴を、利用者が理解しやすくなる環境が整備されます。

健康増進支援薬局の新設(名称使用の認定制)

改正薬機法では、「健康増進支援薬局」という新たな認定制度が創設されます。認定を受けた薬局のみが、「健康増進支援薬局」の名称を使用できる仕組みとなります。従来の健康サポート薬局は届け出制であったため、制度利用が進まず、住民への認知も限定的でした。そこで、公的認定による信頼性の確保と機能の明確化を図るため、名称の使用に要件を設けた制度へと見直されています。

3.2025年改正薬機法の施行スケジュール

改正薬機法の施行には、現場である薬局が混乱しないよう配慮された移行期間が設けられています。内容によって適用時期に差があるため、準備に向けた正確な把握が欠かせません。

ここから、施行時期の特徴と注意点について解説します。

施行時期は段階的に設定(6か月・1年・2年・3年以内)

改正薬機法では、改正内容ごとに段階的な施行スケジュールが設けられています。
改正された内容は、公布後6か月以内に施行されるのが基本ですが、以下の項目は公布後1~3年以内に施行すると定められています。
※参照:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)の概要

公布後施行までの期間 項目
1年以内 ・有効性が見込まれる医薬品を条件付きで早期承認
・小児向け医薬品の開発計画を製薬企業に要求
・乱用のおそれがある医薬品の、若年者への販売量制限
2年以内 ・製薬企業に品質・安全管理責任者の配置を義務付け
・特定の医薬品について、副作用情報の収集計画を義務付け
・法令違反時、責任役員の変更命令が可能に
・医療用医薬品の供給責任者を置き、出荷停止の届出や増産要請に対応
・電子処方箋のデータを使い、医薬品の需給状況を監視
・都道府県の許可を得て、調剤業務の一部を他薬局に委託
・薬剤師がいない店舗でも、遠隔管理で市販薬を販売
3年以内 ・製造販売承認の変更手続きにおいて、中程度の内容変更に対応する承認手続きの簡略化

各段階ごとに必要な政省令の整備や現場調整が求められるため、薬局としては施行時期の確認と対策検討が重要です。

公布後すぐ対応が求められる改正項目あり

改正薬機法は、基本的に公布後6か月以内に施行されるため、公布直後にも重要改正項目が施行される可能性があります。また、若年層に向けた薬物乱用対策は公布後1年以内に施行とされていますが、施行までの間に対応策などの準備も必要です。改正薬機法の施行を待つだけでなく、早期の制度理解と体制整備により、改正薬機法を薬局進化の機会として活用できるでしょう。

4.改正薬機法施行に向けて薬局が準備すべきこと

薬局を取り巻く制度が大きく変わるなかで、現場では事前の準備が求められています。新たな法制度に円滑に対応するには、機能面と運用面の両方で体制整備が欠かせません。

ここでは、改正薬機法における各対応項目ごとの準備ポイントを確認していきましょう。

委託業務の対象選定と内部体制の見直し

改正薬機法により、調剤補助業務の外部委託を円滑に進めるには、委託業務対象の精査と内部体制の再構築が不可欠です。まず、委託可能な業務範囲(一包化など)や委託先との情報共有体制をふまえ対象を選定します。次に、品質管理・安全確保の観点から、委託元での最終チェック体制や受託先との設備・災害時対応の連携を整備する必要があります。
上記により、薬局は調剤効率を高めつつ業務品質を維持できるでしょう。

遠隔販売に向けたICT・薬剤師管理体制整備

改正薬機法では、薬剤師不在店舗での市販薬販売が遠隔で可能になるため、対応する場合にはICTを活用した説明・管理体制の構築が不可欠です。まず、QRコードやデジタルサイネージなど、ICT技術を通じた必要な情報提供の仕組みづくりが求められます。薬剤師が映像・音声による遠隔対応で適切に管理できる体制整備も重要となります。市販薬の遠隔販売を実施する場合には、上記対応による内部統制と安全管理の両立が欠かせません。

薬局評価指標・情報提供の強化策構築

改正薬機法により利用者への情報公開が強化されるため、利用者が薬局を選びやすい環境になります。そのため、薬局が選ばれるには、公開情報の整備が不可欠です。

薬局は以下の項目で情報提供・公表体制を強化するとよいでしょう。

  • 基本情報(営業時間、認定制度等)
  • 提供サービス(在宅医療、副作用対応数)
  • 地域連携状況(連携薬局や実績)

これらを都道府県への報告と併せて、店頭やオンラインでも分かりやすく提示できる体制構築が必要です。
上記取り組みによって、薬局評価指標が明示され、利用者の信頼確保につながるでしょう。

5.まとめ

2025年改正薬機法は、医薬品の安定供給体制の強化、革新的な創薬支援、薬局の社会的役割の明確化を目的に制度が大きく見直されました。薬局では、調剤業務の外部委託や遠隔販売に向けた体制整備、薬局情報の公表義務など、実務レベルでの準備が求められます。施行時期は段階的に設定されており、内容ごとに対応スケジュールが異なるため注意が必要です。改正内容を正しく理解し、早期に対応を始めることで、地域医療に貢献できる薬局としての信頼と機能を高められるでしょう。

記事一覧に戻る

CONTACT

つながる薬局の活用方法を
もっと知りたい方へ

お問い合わせはこちら

タイトルとURLをコピーしました