2026年2月13日、中医協にて「2026年度調剤報酬改定」の答申が行われ、個別改定項目(短冊)の具体的な点数が明らかになりました。
ファーマシフトでは、調剤報酬改定の背景にある政策の意図を読み解きながら、評価・加算につながる取り組みや、薬局の利益構造や収益への影響を解説したセミナーを2026年2月18日に開催。講師には、薬局向け経営コンサルティングや調剤報酬改定対応支援等を行う、株式会社ValuePresenceの吉田孝仁様を迎えました。
本記事ではその内容の一部をご紹介します。
<スピーカー>
株式会社ValuePresence 代表取締役 薬剤師 吉田 孝仁 様
株式会社ファーマシフト 代表取締役社長 多湖 健太郎
目次
1.2026年調剤報酬改定の背景と本質
今回の調剤報酬改定は、単なる点数の調整ではなく、薬局のあり方を根本から変える「構造転換」そのものです。立地に頼る従来モデルから、地域の医療供給拠点として価値を出す新モデルへの移行が強く求められています。
改定の背景として、以下の4点が挙げられます。
- 物価・賃金・人手不足への対応:物価高騰に対して、賃金の上昇が追いついていない現状から、医療従事者の処遇改善が重点課題とされ、ベースアップ評価料等での対策を設計
- 2040年を見据えた機能分化:高齢者人口がピークを迎える「2040年」を見据え、地域で生活を支える医療へ転換
- 安心安全・質の向上(医療DXの活用):DX推進により、安全性と効率性の両立を目指す
- 効率化・適正化:制度の持続可能性を確保するため、立地優位性を前提としたモデルへの評価は適正化
今回の改定の本質は、物価・賃金の上昇に対応して公定価格を調整する動きと、限られた人材・財源の中で制度を持続可能な形へと転換していく構造改革が、同時に進行している点にあります。これまでの「立地」に依存したビジネスモデルから、提供する「価値」によるモデルへの変化が核心であり、インセンティブを通じて、薬局の在り方を根本から変革するという意図が汲み取れます。
2.薬局経営へのインパクトは?収益シミュレーション
今回の改定による収益の変動幅は、1処方あたり「+1.3点〜+13.3点」の差が生まれることが想定されます。しかし、対策を講じなければ大きな減収となる可能性も少なくありません。
各算定項目の点数設計は以下の通りです。

一般的な算定例としては、基本料1、(旧)地域支援体制加算1を算定し、ベースアップ評価料等も合わせると+5.3点の増収が見込めます。
さらに、目指すべき照準としては(旧)地域支援体制加算において加算1→2(新加算では加算2→3)を算定することです。+13.3点の増収となり、収益を最大化させることができるでしょう。

改定後の要件を満たせない場合、経営に甚大な被害が出ることも想定されます。
処方箋集中率等の基準により調剤基本料が1→2へ転落した場合、-11.7点の減収です。さらに最悪なケースでは、基本料の転落と地域支援体制加算の不取得が重なった場合、-70.7点となり、経営継続が危ぶまれるレベルの影響が発生します。

月間処方箋1,000枚の薬局に換算した各ケースの年間の影響額を整理すると、以下のようになります。
| ケース | 1回あたりの点数変動 | 年間収益への影響額(月1,000枚想定) |
| 最大増収例(照準) | +13.3点 | +約159万円 |
| 一般例 | +5.3点 | +約63万円 |
| 最悪のケース | -70.7点 | -約848万円 |
収益の差を生む最大の要因は、調剤基本料と地域支援体制加算です。特に対策を講じずに算定の区分が下がると、年間800万円以上の減収という致命的なダメージを負うことになります。
3.最優先課題:集中率85%の壁
今回の改定において、多くの薬局が直面するハードルが「処方箋集中率85%」の判定基準です。全国の薬局の約39.3%がこの層に該当しており、門前薬局にとっては死活問題となります。
目標値の逆算:他科処方箋を何枚集めるべきか?
集中率を下げるには、目標値を曖昧にせず、具体的な計算式で「必要枚数」を算出することが重要です。
他科処方箋の必要獲得数の算出式は以下のようになります。
他科処方箋の必要獲得数(x)≧ 特定の医療機関からの受付回数(A)/ 0.85 -(A+その他の医療機関からの受付回数)
例えば、メインの医療機関から月1,800枚の処方を受けている薬局の場合、集中率を85%以下に抑えるには、月に「318枚」以上の他科処方箋を応需しなければなりません。

知っておくべき実績期間の要件
集中率低下への取り組みを進めるうえで、まず押さえておくべきなのが、調剤基本料の区分判定に用いられる処方箋受付回数の実績期間です。
この実績期間は「前年5月1日〜当年4月30日」と定められています。たとえば、2026年6月からの算定に間に合わせるためには、2026年4月末までの実績を積み上げる必要があります。その次のサイクルでの算定を見据える場合は、目標をより具体的に設定することが重要です。「月に他科処方箋が何枚必要か」、さらに「1日に何枚必要か」というレベルまで数値を細分化し、行動目標に落とし込みましょう。
また、他科処方箋を把握し、自店舗へ誘導するためには電子処方箋管理サービスの導入が不可欠です。加えて、チラシを作成して1日20名以上へアプローチする、ターゲットを65歳以上に設定するなど、具体的かつ明確な目標を定めて取り組むことが成果につながります。
集中率の計算対象となる処方箋
すべての処方箋が集中率の分母・分子に反映されるわけではありません。注力すべきところを明らかにするために以下の3つの点を理解しておくことが重要です。
- 受付回数にカウントされない:時間外等処方箋などは受付回数にカウントされません。
- 受付回数には入るが、分母に入らない:施設・居住系の在宅、オンライン服薬指導分などは受付回数に入りますが、集中率の分母(総数)からは除外されます。つまり、これらを増やしても集中率を下げる効果はありません。
- 受付回数に入り、分母だけに入る:特定の医療機関以外の外来処方および個人在宅処方箋などがこれに該当します。
戦略的に集中率を下げるには、受付回数に入り、分母だけに入る処方箋を積み上げることが必須となります。
4.地域支援・医薬品供給対応体制加算の攻略
「地域支援体制加算」は「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へと名称・構造が変わります。また、「後発医薬品調剤体制加算」は廃止され、これまでの単独評価から、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の一部として包括的に評価される仕組みへと見直されます。
加算2〜5については大幅な点数アップ(+27点)となっていますが、後発品加算の廃止分が含まれるため、トータルでは「1点のマイナス」からスタートする厳しい設計です。
加算1の取得に向けた具体的要件
「加算1」は、どの薬局でも取得を目指すべき基本項目です。
まずは、後発医薬品の割合85%を達成するため、上位1~5品目の医薬品を切り替え対象とし、処方元への依頼などをおこなって割合を高めていきましょう。
さらに、施設基準の届出において、以下の8項目を満たす体制を整えることが求められます。

また、服用薬剤調整支援料2の見直しに伴い、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の実績要件から服用薬剤調整支援料が削除されました。これは、体制評価と個別の薬学的介入評価を分離する方向性を示すものといえます。
その中で新設されたのが、「薬学的有害事象等防止加算」と「調剤時残薬調整加算」です。いずれも調剤時の薬剤師の介入を評価する加算ですが、対象や算定要件には違いがあります。それぞれの内容を見ていきましょう。
薬学的有害事象等防止加算(新設)
薬剤師が薬学的知見に基づき、残薬調整「以外」の内容で、処方変更を伴う質の高い介入を行ったことを評価する加算です。
算定要件として、薬剤服用歴や、電子処方箋の仕組み(電磁的記録)を用いた重複投薬の確認等に基づき判断することが求められます。
算定に向けた対応策として以下が提案されました。
- 電子処方箋管理サービスを導入
- 工数を考慮し、まずは「65歳以上」の患者に絞って重複・禁忌、副作用、アレルギー歴、腎機能を調査
- 服薬期間中のフォローアップを通じて会話の糸口を作り、信頼関係を構築する
調剤時残薬調整加算(新設)
患者さんや家族等からの聞き取りにより残薬を確認し、医師の指示下で処方日数を調整した際の評価項目です。
算定要件として、新たに変更量の条件が付きます。
- 原則:残薬調整のために「7日分以上相当」の処方日数変更を行った場合に算定
- 例外:薬剤師が必要と判断した「6日分以下相当」の変更でも、その理由をレセプトに記載すれば算定可能
算定に向けた対応策として以下が提案されました。
- 処方日数が長い患者さん(60日以上等)を特定し、5月末までに1回の実績作りを目指す目標設定
- 「お薬の棚卸し」などのキャッチコピーを使い、患者さんが残薬を持ってくることへの心理的ハードルを下げ、即時メリット(待ち時間の短縮、次回の安心)を伝える
かかりつけ薬剤師の評価
今回の改定では「かかりつけ薬剤師指導料」が廃止され、「服薬管理指導料1のイ」に組み込まれます。そして、かかりつけに関する新しい加算が2つ新設されています。
新設された評価項目は以下です。
- かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点):電話等での継続的な服薬状況・残薬状況の確認を評価
- かかりつけ薬剤師訪問加算(230点):求めに応じた患家への訪問、残薬整理・指導を評価

さらに、かかりつけ薬剤師については「人」の要件が一部緩和され、勤務時間は週31時間以上、在籍期間は継続して6か月以上となります。
そして、薬剤師個人の要件だけでなく、薬局の体制要件が新たに追加されます。施設基準の届出時点で、常勤薬剤師の在籍期間が平均して1年以上であること、管理薬剤師が継続して3年以上在籍していることのいずれかを満たすことが求められる見通しです。
5.ITツール「つながる薬局」で実現する効率化
人的リソースが不足する中、これらの要件をクリアするにはデジタルツールの活用が不可欠です。ファーマシフトが提供する「つながる薬局」は、LINEを活用して患者さんとの接点を効率的に増やします。
- 他科処方箋の獲得:LINEでの処方箋送信により、患者さん本人だけでなくご家族の利用も拡大し、集中率を下げるための「面処方」を効率的に集めます
- 服薬フォローの効率化:電話でのフォローに対し、1件あたり約7分の工数削減が可能となります
- 在宅業務のDX:計画書や報告書などの書類をデジタルで作成・送信でき、現場の事務負担を軽減します
つながる薬局について詳しくはこちら
6.まとめ:今後の薬局経営に向けて
今回の改定に対して、経営者が取るべきアクションを3つのステップにまとめました。
- 早期の現状把握:集中率、DX対応状況、備蓄体制など、自局がどの程度要件を満たしているか数値化する
- 具体的な対策実施:実績の可視化と並行して、DX投資(電子処方箋等)を優先的に進める
- 継続的なモニタリング:収益影響を定期的に試算し、変化に応じた経営判断を行う
今回の改定は、変化に対応できる薬局にとっては「地域医療の主役」となるためのチャンスです。しかし、対策を講じないままの薬局には非常に厳しい淘汰が待っています。まずは自局の現状を把握することから始めましょう。
本ウェビナーのオンデマンド動画を期間限定でご視聴いただけます。以下よりぜひご覧ください。
【オンデマンド】[最速]2026年調剤報酬改定のポイントと対策を大解剖!点数の裏にある”意図”と薬局が実施すべき対応とは?
