医療DX推進体制整備加算の適用条件として、マイナ保険証の利用率が一定の基準を満たすことが求められています。しかし多くの薬局がこの要件をクリアできず、次の段階への移行に悩んでいる状況です。
本記事では、加算制度の概要や算定要件のポイントに加え、マイナ保険証利用率を高めるための具体的なアプローチを解説します。
目次
1.医療DX推進体制整備加算とは?
医療DX推進体制整備加算は、薬局や医療機関がデジタル技術を活用し、効率的かつ質の高い医療を提供するための基盤整備を支援する加算制度です。2024年度の調剤報酬改定で新設され、2024年10月より施設基準や利用率による加算点数の差が新たに設けられました。また、2025年1月29日には4月以降の要件・点数引き上げも発表されています。
算定要件と加算点数
【算定要件】
医療DX推進体制整備加算を算定するには、のちほど紹介する厚生労働大臣が定める「施設基準」を満たした上で届け出る必要があります。
【加算点数】
加算点数は、マイナ保険証の利用率に応じて変動します。
施設基準と具体的な加算点数の見直し内容については以下の通りとなります。
施設基準について
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、以下の8つの施設基準を満たす必要があります。
(1)オンライン請求を行っていること。
(2)オンライン資格確認を行う体制を有していること。
(3)保険薬剤師が、オンライン資格確認の仕組みを利用して取得した診療情報を閲覧又は活用し、調剤できる体制を有していること。
(4)電子処方箋を受け付ける体制を有していること。(経過措置 令和7年3月31日まで)
(5)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置 令和7年9月30日まで)
(6)マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること。(令和6年10月1日から適用)
(7)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医 療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること。
(8)電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理の体制を有していること。
※引用元:「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて(厚生労働省)」より
加算点数の見直しについて
2024年10月から医療DX推進体制整備加算の算定要件が見直され、マイナ保険証の利用率に応じて点数が3区分に設定され、利用率が高いほど高い点数を取得可能に。
2025年1月からマイナ保険証の利用率の基準は上がり、4月からは点数と利用率がさらに引き上げられることが発表されました。(2025年1月29日発表)
この見直しにより、多くの薬局が利用率の基準を満たせずにいます。利用率の基準引き上げの中で、今後薬局は利用率向上に向けて具体的な早期対策が求められています。
2.マイナ保険証利用率向上のためのポイント
利用率向上のために必要なポイントを解説します。
患者さんへマイナ保険証を利用することで得られる具体的なメリットをアピール
患者さんにマイナ保険証を使うメリットを理解していただくことが、マイナ保険証の利用率向上につながります。
- 医療費負担軽減の説明:マイナ保険証を利用すると、窓口での医療費の支払いがスムーズになることや、高額医療費制度も即時適用が可能となるため、医療費負担を軽減できる場合があります。この制度により、自己負担限度額を超えた場合でも、適切に負担軽減が行われ、患者さんにとっては経済的なメリットとなります。
- 情報共有の利点を伝える:マイナ保険証を使うことで、医療機関間や薬局間で薬剤情報や検査結果が共有され、より適切な医療が受けられることを説明します。
- パンフレットやポスター、ホームページ活用:薬局内に分かりやすい案内資料を設置し、患者さんがマイナ保険証のメリットをすぐに理解できるようにします。厚生労働省が提供する資料を活用することで、コストを抑えつつ効果的に周知することができます。※受付時のトークスクリプトやリーフレット・ポスター等は厚生労働省作成の周知素材をご活用ください。
受付での利用促進策
受付でのアプローチが利用率向上のカギです。
- 積極的な声掛け:受付時、「保険証をお持ちですか」ではなく「マイナンバーカード(マイナ保険証)をお持ちですか。」と声掛けをするなどして、会計時にスタッフが直接利用を促すことで、関心を高めます。
- QRコードでの案内:マイナポータルの登録方法や利用方法を記載したQRコードを提供し、登録をサポートします。
- タブレットの導入:利用方法が分からない患者に、その場で簡単に操作説明ができる端末を設置します。
スタッフの教育強化
スタッフがマイナ保険証について十分な知識を持つことが重要です。
- 説明力の向上:マイナ保険証のメリットや利用方法をスタッフが分かりやすく説明できるよう、定期的な教育や研修を実施します。
- トラブル対応力の強化:マイナ保険証が利用できない場合の対応方法(読み取りエラーやシステム障害)を事前に共有し、スムーズな対応を可能にします。
DXツールを活用した効果的なアプローチ
マイナ保険証の利用促進には、患者さんへの適切なタイミングでの情報提供が欠かせません。受付時の声掛けやポスター掲示に加え、来局前から周知することで、よりスムーズな対応が可能になります。
最近では、DXツールを活用し、患者さんへのリマインド通知を行う薬局もあります。 例えば、事前に「次回のご来局時にはマイナンバーカード(マイナ保険証)をご持参ください」と案内を送ることで、患者さんが事前に準備でき、受付時のやりとりがスムーズになります。こうしたリマインド通知の仕組みは、業務の負担を軽減しながら、患者さんの利便性を高める効果的な方法のひとつです。
「つながる薬局」では、こうした情報提供をサポートする「お知らせ配信機能」を提供しています。LINEを活用し、患者さんに事前にメッセージを送ることで、受付時の負担を軽減し、よりスムーズな対応が可能になります。
3.まとめ
医療DX推進体制整備加算の算定を目指すためには、マイナ保険証の利用率向上が不可欠です。患者さんへの情報提供やスタッフ教育の徹底に加え、DXツールを効果的に活用することで、利用率を効率的に向上させることができます。これにより、業務効率の向上と患者満足度の向上を実現できるでしょう。特に、患者さんとの積極的なコミュニケーションを通じて、マイナ保険証の利用促進を図ることが大切です。患者さんにその利便性や安全性を理解していただくためには、単発的な案内ではなく、継続的に情報提供を行うことが必要です。医療現場のデジタル化を積極的に進め、質の高い医療提供を目指していきましょう。