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薬局DXが変えるポリファーマシー対策!地域医療での推進策も解説

「ポリファーマシー対策の現状は?」
「薬局DXがポリファーマシーをどのように変える?」
「ポリファーマシーを地域医療において推進する方法は?」

上記のように考える薬剤師の方もいらっしゃるでしょう。
多剤併用による副作用リスクや減薬提案の難しさに課題を感じる方も少なくありません。
薬局DXが進む現在では、薬剤情報の一元化やAIによる分析支援、多職種連携の円滑化が進み、ポリファーマシー対策は大きく変わり始めています。
本記事では、現状と課題から最新事例、薬剤師の今後の役割まで体系的に解説します。
最後まで読むことで、薬局が地域医療の中核として果たすべき方向性と実践のヒントが得られるでしょう。

1.ポリファーマシー対策の現状と課題

多剤併用が常態化する高齢社会において、薬物療法の適正化は重要な課題となっています。
服薬管理を複雑化させる背景を理解し、薬局の現場で直面する実情を踏まえた対応が求められます。

ここでは、ポリファーマシー対策の全体像を整理しながら、詳しく見ていきましょう。

ポリファーマシーの定義と現状

ポリファーマシーとは、多剤併用により有害事象や服薬過誤のリスクが高まる状態を指します。単にお薬の数が多いだけでなく、不適切な処方や重複投与が含まれることが問題です。高齢者では6剤以上の併用で有害事象の発生頻度が高まると報告されています。日本では高齢化の進行にともない、ポリファーマシーの問題が顕在化しており、75歳以上の高齢者では全体の約1/4の方が7剤以上を服用している状況です。
※出典:厚生労働省「令和7年度事業について」

この状況は、患者さんの生活の質を低下させたり、医療費を増加させたりすることにもつながるため、早急な対策が求められています。

薬剤師におけるポリファーマシー対策の状況

薬剤師によるポリファーマシー対策は、診療報酬上で評価される形で実績を上げています。

たとえば「服用薬剤調整支援料1」は、令和4年度に684回算定されており、年々増加しています。
※出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第 550 回) 議事次第」

これは薬剤師が処方医に減薬を提案し、実際に2剤以上の処方薬が削減されたケースが認められたものです。

また、重複投薬などの有無に応じて評価される「服用薬剤調整支援料2」も、令和4年度では、重複投薬等の解消に係る実績あり・なしあわせて1,241件算定されています。
このように、薬剤師の専門性を活かした介入が数値としても明確に評価される制度設計が整えられてきました。

今後は、こうした支援料の活用を通じて、地域医療におけるポリファーマシー解消の取り組みをより一層推進することが期待されます。

ポリファーマシー対策における課題

薬剤師によるポリファーマシー対策は進んでいるものの、実績が少ない状況です。今以上にポリファーマシー対策を進めるには、現場で直面する課題と向き合い、改善策を持って取り組むことが重要です。

以下にポリファーマシー対策における主な課題と、解決に向けたポイントをまとめました。

課題           ポイント
医師との連携が不十分 情報共有の工夫と信頼関係の構築で減薬提案の実行力を高められる
情報の一元管理が未整備 電子処方箋やマイナ保険証などのICT活用により、連携の精度向上が期待できる
薬局内リソースの制約 DX導入で業務を効率化し、対人業務への注力が可能になる

これらの課題に対し、ICT技術の活用や業務の見直しを通じて改善を図ることで、薬局が地域における医療のハブとして機能する道が開かれるでしょう。

2.薬局DXがもたらすポリファーマシー対策の革新

デジタル化が進む中で、薬局業務にも革新の波が訪れています。業務の効率化だけでなく、患者支援の質向上にもつながる技術が次々と登場しています。薬局DXがどのようにポリファーマシー対策に活用されているのか、その具体的な手法を見ていきましょう。

電子お薬手帳や電子処方箋、オンライン資格確認の活用

薬局DXの進展により、薬剤情報の一元管理が現実的になり、ポリファーマシー対策の実効性が高まっています。特にオンライン資格確認によって取得できる薬剤情報や健診結果は、薬歴情報と連携することで、薬剤師による継続的かつ的確な服薬評価に活用されています。

また、電子お薬手帳の活用により、複数の医療機関からの処方内容を薬局で一元的に把握できるため、重複投与や相互作用リスクの早期発見が可能です。

さらに、電子処方箋が本格導入されれば、紙媒体の処方箋を介さずに処方情報が共有され、リアルタイムでの減薬提案や情報フィードバックが可能となります。

これらのデジタルインフラの活用は、薬剤師がポリファーマシー対策に主体的に関わるための基盤整備として、今後ますます重要になるでしょう。

なお、「つながる薬局」であれば、電子お薬手帳や電子処方箋に対応し、患者さんの薬剤情報の一元化に寄与します。LINEで使用できるため、患者さん側の登録ステップが少なく、案内が簡単なのも特徴です。

 

レセプトデータとAIによるリスク分析

レセプトデータとAIを活用したポリファーマシー対策も注目されています。

全国の診療報酬明細書を基に、AIが多剤併用リスクのある患者さんを自動抽出する手法が開発され、対象者の特定が迅速化。また、実際に6剤以上服用している患者群において、AIがリスク因子や併用禁忌を分析し、薬剤師の減薬提案を支援するツールも導入が進んでいます。これにより、経験や勘に頼らない科学的根拠に基づいた介入が可能となり、服薬適正化の実効性が高まっています。

薬局DXの一環として、AIとビッグデータを連携させた対策は、今後の地域医療において重要な柱となるでしょう。

3.地域連携によるポリファーマシー対策の推進策

ポリファーマシー対策を地域で効果的に進めるには、薬局単独の取り組みでは限界があります。関係機関や住民と連携しながら、多角的な支援を展開することが重要です。

地域医療の視点から、ポリファーマシー対策の推進策を見ていきましょう。

多職種連携による処方見直しの実践

多職種連携による処方見直しは、ポリファーマシー対策において重要な取り組みです。医師・薬剤師・看護師・管理栄養士・理学療法士などが協力し、患者さんの全体像を把握することで、薬物療法の適正化が図れます。

たとえば、徳島県では「多職種連携シート」を活用して患者情報を共有することで、処方の見直しや副作用の早期発見に役立てています。
※出典:徳島県「実態調査に基づく、多職種連携体制の構築及びマニュアル作成、普及によるポリファーマシー対策事業」

また、国立長寿医療研究センターでは、医師と薬剤師が中心となり、看護師・管理栄養士・言語聴覚士などと連携して処方の見直しをおこなう体制を整備。これにより、患者さんの生活の質(QOL)向上や医療費の適正化が期待されています。 

このように、多職種が連携して処方を見直すことで、患者さんの安全性が高まり、医療の質向上につながります。今後も、地域全体での連携体制の強化が必須です。

患者教育とナッジ理論の活用

ポリファーマシー対策では、患者さんの行動を自然に変えるナッジ理論の応用が注目されています。

ナッジとは、選択肢の提示や環境の工夫により、強制せずに望ましい行動を促す方法です。病院や大学では、ナッジを取り入れた服薬支援が実践されています。たとえば、聖マリアンナ医科大学では患者さんが自身の服薬内容を正しく理解し、減薬に前向きな意思決定をおこなえるよう支援する介入の有効性が検証されています。

ナッジ理論は、薬剤師による対話的な支援を補完し、患者主体の減薬を後押しする有効な手段となるでしょう。

4.ポリファーマシー対策における薬剤師の役割と今後の展望

ポリファーマシー対策において、薬剤師の役割は今後ますます重要性を増すと考えられます。AI技術の進展により、レセプトデータや服薬情報の分析が効率化され、リスクの高い患者さんの抽出が可能となっています。
しかし、患者さんの生活背景や価値観、服薬への意識など、定量化が難しい要素を踏まえた総合的かつ倫理的な判断は、AIには困難です。薬剤師は、これらの情報を基に医師や多職種と連携し、患者さんに寄り添った減薬の提案や服薬指導をおこなうことが求められます。

今後、薬剤師はAIを活用しつつ、患者中心のケアを実現するためのキーパーソンとしての役割が期待されます。

5.まとめ

ポリファーマシー対策は、高齢化が進む中で薬局に求められる重要な役割の一つです。薬局DXの活用により、薬剤情報の一元管理やAIによるリスク分析が可能となり、効率的かつ根拠ある介入が実現します。多職種連携やナッジ理論による支援を通じて、地域全体での取り組みも進みつつあります。
本記事を参考に、薬剤師の専門性を活かした減薬支援の可能性を広げ、地域医療に貢献する一歩を踏み出してください。

 

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