2024年10月より、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある薬に対して先発医薬品(長期収載品)の使用を希望した場合、特別料金が発生する「選定療養制度」が始まりました。この制度による薬剤師業務、患者さんへの影響について等をご紹介します。
1.長期収載品の選定療養とは?
まず、長期収載品の選定療養について振り返り、具体的な計算例を確認しましょう。
長期収載品の選定療養:
同じ有効成分の後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある場合、医療上の必要性が認められないにも関わらず、先発医薬品(長期収載品)を希望する患者さんが「特別料金」を支払う仕組みのこと。
特別料金とは、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を指します。
具体的な計算例は以下の通りとなります。
2.薬剤師業務への影響
- 処方箋様式の改正
長期収載品の処方が選定療養に該当するかどうかを処方箋から判断できるよう、処方欄が以下のように改正されました。
①「変更不可」欄に「(医療上必要)」を追加
②「患者希望」欄を新設
いずれも、医薬品ごとの記載が必要で、医療上必要な場合は、保険医の署名または記名・押印をすることとされています。薬剤師はこれらの項目をチェックし、会計ミスがないように注意する必要があります。また、「変更不可(医療上必要)」欄と「患者希望」欄の両方にチェックが入っている場合は、疑義照会を行うなどの対応を行なう必要があります。
- 長期収載品が処方されている場合、医療上の必要性について薬剤師が判断するケースがある
長期収載品の処方の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」が記載されていない場合において、患者さんが服用しにくい剤形である、長期収載品と後発医薬品で効能・効果の差異がある 等、後発医薬品では適切な服用等が困難であり、長期収載品を服用すべきと判断されることがある場合には、医療上の必要性について薬剤師が判断するケースがあります。
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275325.pdf
- 後発医薬品が銘柄名で処方されている場合でも必要性を認めた場合は長期収載品で調剤できる
後発医薬品が銘柄名で処方されており、「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」が入っていない場合において、患者さんへの聞き取りによって長期収載品での調剤が医療上の必要と認められる場合、当面の間、医師への疑義照会なく薬剤師の判断で長期収載品への変更調剤ができるとされています。
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275325.pdf
3.患者さんへの影響
この制度により、後発医薬品が存在する場合に先発医薬品を選ぶと、患者さんの費用負担が増えることになり、医療機関や薬局側は患者さんへの説明が重要になります。
選定療養の費用がどのように計算されるかをわかりやすく説明し、患者さんが自分の健康や経済的状況に応じた選択を行えるよう支援することが重要です。
※厚生労働省からの周知のポスターが出されています。詳細はこちらよりご確認いただけます。
4.まとめ
新しい選定療養制度は、患者さんの医薬品選択に対する意識を高め、医療費の適正化を図るための重要な一歩です。薬局や医療機関は、患者さんに対して丁寧な説明を行い、適切な選択を支援する役割を果たす必要があります。これからも患者さんが安心して医薬品を選べる環境作りを意識することが重要です。