薬局経営では、処方箋枚数を増やすだけではなく、かかりつけ機能を強化し、リピート率や処方箋集中率を適正に管理することが安定した収益につながります。経営指標を数値で把握し、改善につなげる視点こそが、持続可能な薬局運営には重要です。
しかし、次のように感じている方もいるでしょう。
「薬局経営で重視すべき数値は?」
「リピート率の定義は?改善策は?」
「処方箋集中率に着目するのはなぜ?」
当記事では、処方箋枚数・処方箋単価・リピート率・集中率といった経営の基盤となる数値を整理し、それぞれの意味や改善方法、調剤報酬との関係まで解説します。最後まで読めば、自薬局の強みと改善すべき課題が数値を通じて明確になり、経営判断に活かせるヒントが得られるでしょう。
目次
1.薬局経営で重視すべき数値の基礎!売上を構成する処方箋枚数と単価
薬局の売上は処方箋の枚数と単価によって成り立つため、経営状況を正しく把握するには、それぞれの構成要素を理解することが重要です。どちらか一方だけに注目してしまうと、真の課題や改善の糸口を見逃す可能性があります。
ここでは、売上の安定化や利益の質を高めるために必要な視点を整理しながら、売上を構成する要素について詳しく見ていきましょう。
処方箋枚数を構成する新規患者数とリピート数
処方箋枚数を正確に把握するには、新規患者とリピート患者を分けて分析することが重要です。新規患者は薬局の認知度や集客力などを示し、リピート患者は満足度やかかりつけ機能の定着度などを表します。両者を把握することで、課題と強みが可視化できるでしょう。
たとえば、以下のように分類して指標を管理すると有効です。
| 分類 |
指標例 |
| 新規患者 | 月間の新規受付人数 |
| リピート患者 | 再来局率 リピート回数 |
リピート患者が増えることは、薬剤師の対応力や服薬指導の質が評価されている証拠になり、安定した経営にも直結します。数字の背景にある患者さんの行動特性まで分析する視点が欠かせません。
利益の質を左右する処方箋単価と技術料
処方箋単価の向上には、薬剤料ではなく技術料を高める視点が重要です。薬剤料から得られる薬価差益は薬価改定の影響を大きく受け、不安定な利益構造につながります。一方、技術料は服薬指導や情報提供、服薬管理など薬剤師の専門性を評価する収入であり、安定的かつ継続性のある利益源になります。技術料の増加は対人業務の充実を示し、薬局の専門性が患者さんに認識され、信頼性の向上にもつながるでしょう。結果的にかかりつけ機能の強化やリピート率の改善にも寄与し、経営の質を高める要素となります。
2.薬局経営で重視すべき数値であるリピート率(定着率)の計算式と改善施策
薬局経営の安定には、一時的な処方箋枚数の増加よりも、継続的に利用してくれる患者さんを増やす視点が重要です。継続利用の割合を客観的に把握できれば、満足度やかかりつけ機能の定着度を読み解く手がかりになります。
ここでは、薬局経営において重要な指標であるリピート率の考え方について、詳しく見ていきましょう。
リピート率(定着率)の定義
リピート率は、一定期間内に複数回来局した患者の割合を示す指標であり、薬局の定着度や満足度を測る基礎になります。
計算式としては以下のようになります。
リピート率(%)= 一定期間内に複数回来局した患者数 ÷ 一定期間内の総患者数 × 100
リピート率の向上を検討するなら、まず現状のリピート率を算出し、現実的かつ達成可能な目標値を設定しましょう。たとえば、リピート率70%を目標とする場合、現状との差を把握して対策を具体化します。次に、PDCAサイクルに基づき改善施策を実行し、結果を検証します。改善する内容は、服薬指導の質向上やフォロー体制の整備など、数値と連動させて評価できることが重要です。
定義と目的を明確にした管理と改善行動が、経営の安定につながります。
かかりつけ機能強化によるリピート率向上へのアプローチ
リピート率を高めるには、かかりつけ機能を強化し、継続的に選ばれる薬局になることが重要です。患者さんが再来局を選ぶ理由は、安心感や相談しやすさなど、体験価値に影響されます。
体験価値を向上させる具体策としては、以下が有効です。
- 薬歴を活用した個別性のある服薬指導
- LINEや電話による服薬フォローや健康相談
- 待ち時間の短縮とスムーズな会計対応
- プライバシーに配慮した相談スペースの整備
上記の施策は患者さんとの信頼形成につながり、定着率の向上につながるでしょう。
なお、かかりつけ機能を強化するなら、「つながる薬局」がおすすめです。
「つながる薬局」は、LINEでの服薬フォローの他、処方箋事前受付・WEB問診・オンライン服薬指導など、患者さんの体験価値を向上させるのに役立つDXツールです。かかりつけ機能の強化だけでなく、DXツールによる薬局運営の効率化も検討するなら、ぜひ「つながる薬局」をご検討ください。
LINEを使って服薬フォローや処方箋事前受付ができる!「つながる薬局」
3.薬局経営で重視すべき数値としての処方箋集中率とリスク管理
特定の医療機関に依存した処方箋集中率が高い状態は、経営面だけでなく診療報酬にも影響し、薬局の評価や安定性を左右します。安定した経営を目指すには、集中率の現状を把握し、適正化に向けた方向性を理解することが重要です。
ここでは、薬局経営にとって重要な指標である処方箋集中率の考え方について、詳しく見ていきましょう。
調剤基本料に直結する集中率の基準値
調剤基本料区分を正しく理解するには、処方箋集中率と受付回数の基準値を押さえることが欠かせません。2024年度の調剤報酬改定では、集中率が高い薬局を基本料2として扱う範囲が拡大されました。
具体的には、チェーン薬局でない場合には、以下が調剤基本料2に該当します。
- 受付回数月4,000回超、かつ上位3医療機関合計の集中率70%超
- 受付回数月2,000回超、かつ集中率85%超
- 受付回数月1,800回超~2,000回、かつ集中率95%超
- 特定医療機関からの受付回数月4,000回超
一方、チェーン薬局ではグループ全体の受付回数と85~95%の集中率に応じて調剤基本料3イ・ロ・ハへ区分されます。自薬局の集中率を把握し、該当する調剤基本料を管理することが調剤報酬の確保とリスク低減につながります。
集中率を適正化するための面分業とかかりつけ戦略
集中率を適正化するには、面分業の推進とかかりつけ機能の強化を軸に、特定医療機関への依存を減らす戦略が重要です。まず、地域の複数医療機関との連携体制を整え、幅広い患者さんを受け入れる体制づくりをおこないましょう。
具体策としては、以下が挙げられます。
- 健康相談や服薬フォローの実施による継続的な関係構築
- ハイリスク薬管理や在宅対応など専門性を示すサービス提供
- 地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定取得
幅広い患者層からの信頼を獲得することで集中率の偏りを防ぎ、安定した経営につなげる視点が欠かせません。
4.かかりつけ機能強化が処方箋単価を押し上げるメカニズム
処方箋単価を安定的に高めるには、薬剤師の専門性を評価する仕組みを活用し、技術料の価値を最大化する視点が重要です。単なる調剤業務にとどまらず、継続支援や地域貢献に結びつく取り組みは、収益性と信頼性の両方を押し上げます。
ここでは、かかりつけ機能強化による収益への具体的な影響について、詳しく見ていきましょう。
かかりつけ薬剤師指導料と通常の指導料の点数差による収益インパクト
処方箋単価を高めるには、かかりつけ薬剤師指導料を算定し、点数差を収益に直結させることが重要です。通常算定することが多い服薬管理指導料は、リピート患者の場合45点ですが、かかりつけ薬剤師指導料は76点であり、1回あたり31点の差が生じます。たとえば、月間100件取得できれば3,100点多く算定でき、金額換算で約31,000円の増収増益となります。さらに、かかりつけ契約により継続算定が可能になるため、高単価を維持できるでしょう。薬剤師の専門性が評価される仕組みを活用することが、収益力の向上につながります。
全処方箋の単価を底上げする地域支援体制加算取得の必須要件
地域支援体制加算はかかりつけ機能を備えた薬局が評価される加算であり、取得できれば全処方箋に加算が適用されるため、処方箋単価の底上げに大きく寄与します。地域支援体制加算1なら32点が算定できるため、たとえば月2,000枚の処方箋に適用されれば64,000点、金額換算で約640,000円の増収増益につながります。
ただし、算定には以下をはじめとしたかかりつけ薬局として求められる各種要件のクリアが必要です。
- 24時間対応体制
- 在宅患者訪問薬剤管理指導の実績
- 重複投薬・相互作用防止加算や服薬情報等提供料の実績
上記の機能整備は、調剤報酬だけでなく、地域から信頼される薬局づくりにも直結します。
5.まとめ
かかりつけ機能を備えた薬局は、処方箋単価の底上げやリピート率の向上、集中率の適正化につながり、経営の安定性が高まります。技術料を中心とした収益構造の強化や、地域支援体制加算の取得による単価上昇も期待できます。さらに、継続的な服薬支援や相談体制の整備により、患者さんから選ばれる薬局づくりが実現するでしょう。薬局経営における経営指標を適切に管理し、薬局の価値向上に役立ててください。

