2026年度調剤報酬改定に向けた議論が進められています。薬局としては、改定内容の最新動向を把握し、早い段階から戦略的な準備や対策を進めておくことが重要です。
ファーマシフトでは、調剤報酬改定に関する最新情報(ウェビナー開催時点)を元に、今後の薬局経営や算定で押さえておきたいポイントを解説し、改定対応の一例として、薬局のかかりつけ化や各種実績にも活用できる「つながる薬局」の新機能をご紹介したウェビナーを2025年11月19日に開催しました。本記事ではその内容の一部をご紹介します。
<スピーカー>
株式会社ファーマシフト 代表取締役社長 多湖 健太郎
株式会社ファーマシフト サービス事業部 プロダクトマネージャー 江河 翔太
目次
1. 2026年度調剤報酬改定に向けた動向
2026年度調剤報酬改定が迫る中、財務省の財政制度等審議会や社会保障審議会、中医協の資料からは、薬局業界の構造的な変化を促す議論が読み取れます。
財政制度等審議会のポイント
11月5日の財政制度等審議会の資料では、主に以下のような方針が示されました。
- 現役世代の保険料負担軽減: 医療費の増加は現役世代の保険料負担増加に直結するものであるとし、軽減に向けた対策が必要とされています。
- 経営の改善や従事者の処遇改善:物価が高騰する中で、経営の改善や従事者の処遇改善につながる的確な対応が必要であるとされています。
- 病院への重点的な支援: 診療所や薬局と比較し、病院の経営状況は厳しい状況にあると指摘。病院への重点的な支援の必要性が示されています。
- 薬局の集約化・大規模化: 薬剤師数の多さや薬局の多さを背景に、産業構造の改革を重要課題として認識。薬局の集約化や大規模化に向けた取り組みが求められています。
- 調剤基本料・地域支援体制加算の見直し:
- 調剤基本料1: 受付回数次第で集中率が高い場合でも高い点数が適用される現状について、適正化の余地があるとして見直しの議論が上がっています。
- 地域支援体制加算: 調剤基本料の区分よって要件が変わる現状は見直すべきとし、調剤基本料1への優遇を廃止し、地域フォーミュラリへの参画やOTC薬の普及啓発、リフィル処方箋の促進などを評価対象とする方向性が示されています。
- 対人業務へのシフト: 対人業務を評価する加算を拡充したが、実績が十分に出ていない現状を指摘。より一層強く推進されるべきとされています。
社会保障審議会のポイント
OTC類似薬の保険適用除外が議論されています。薬局においてもOTCを安全に患者さんに届けるための体制整備や相談体制の構築が継続的なテーマとなります。
中医協のポイント
ますます社会的需要が高まる在宅医療について、今まで以上に適正に評価していく方向性が示されています。
2. 「選ばれる薬局」と「取り残される薬局」の分岐点
次期改定に対する議論の中で、より厳しい評価が予想されるものや、より推進され評価がつくものなど、変化が予想されるキーワードとして以下が挙げられます。

特に薬局の努力で実績を積み上げられる項目に対しては、薬局内で注力項目の方針を統一し、構造的な対策を講じることが重要です。さらに、効率的な取り組みを可能にするツールの導入など、具体的なアクションを起こすことが求められます。

3. 実践的なDX施策:「つながる薬局」のLINE問診による成果
対人業務における実績づくりで重要なのは、効率的に患者さんとの接点を作り、情報を取得することです。これを実現する手段として効果的な「つながる薬局」のLINE問診機能の具体的な成功事例を紹介します。
LINE問診機能のアップデートと効果
「つながる薬局」のLINE問診機能は、直近のアップデートにより、患者さんと薬局スタッフの往復作業がなくなり、利用促進と成果が大幅に向上しました。

| 従来の運用(改修前) | 新しい運用(改修後) | |
| 薬局スタッフの負担 | 友だち登録QRコードの発行→患者さんへのQR読み込みの案内→問診票の送信作業 | 受付でQRコードを1回提示し、後は患者さんの回答を待つだけ |
| 患者さんの負担 | QRコードから友だち登録→薬局からの問診通知を待つ→回答 | QRコードを1回読み込むだけで、友だち登録と問診回答を連続で実施可能 |
以下は、75店舗を運営する企業における、実際にLINE問診機能を活用した実績です。
- 友だち登録率の向上:薬局の案内負担が軽減したことで、患者さんへの声かけ回数が増え、12%だった友だち登録率が51%まで上昇しました。
- 利用店舗の継続率:当初1店舗だった利用が、改修後の利用促進開始2ヶ月後には67店舗(約9割)が利用し、その後も高い継続率を維持しています。

副次効果:面処方の獲得と服薬フォローの強化
友だち登録率の向上は、薬局経営に直結する以下の副次的な効果も期待できます。
- 処方箋獲得: LINE問診から友だち登録をすることで、患者さんの薬局検索画面に登録した薬局が優先的に表示されるようになり、検索の手間なく送信が可能に。門前の医療機関だけでなく、他医療機関からの面処方の獲得につながる可能性も高まります。
- 服薬フォローの促進: 患者さんへメッセージを送れるようになり、連絡手段が増えます。特に、「回答ボタン機能」を活用することで、患者さんはテキスト入力をせずにボタン一つで返信可能。通常の質問よりも返信率がアップし、活発な服薬フォローが実現できます。
LINE問診機能の詳細については、こちらからお問い合わせください。
4. 調剤報酬改定を迎え撃つための3つのアクション
2026年調剤報酬改定を見据え、選ばれる薬局になるためには、以下の3つのアクションに注力することが重要です。
アクション1:面処方の獲得
既存の患者さんに対してしっかりと声かけをし、能動的なアクションを行うことが必要です。また、声かけをきっかけに、患者さん本人だけでなくその家族も含めたかかりつけ薬局化を進めることが、処方箋の増加と集中率の低下に直結する、最も効果的で取り組みやすい施策です。
アクション2:地域支援体制加算の実績づくり
加算の算定は薬局経営上重要ですが、それ以上に「地域医療の担い手」として貢献し、対外的にアピールすることが重要です。 算定要件となる実績項目を意識し、効率的なツールも活用しながら、確実に実績を積み重ねる構造的な対策が求められます。
アクション3:残薬問題&ポリファーマシーへの取り組み
残薬問題やポリファーマシーへの取り組みは、患者さんの利益、国の医療財源の確保、そして薬局のメリットにつながる、意欲的に取り組むべき領域です。
5.まとめ
2026年度調剤報酬改定では、対人業務の実績がより一層評価されるようになることが予想されます。「選ばれる薬局」になるためには、改定の方向性を正しく理解し、DXツールを活用して患者さんとの接点を強化するとともに、面処方や加算実績といった結果を追い求めることが重要です。薬局全体で実績づくりの体制を整え、今から戦略的に取り組みを進めましょう。
本ウェビナーのオンデマンド動画を期間限定でご視聴いただけます。ぜひご覧ください。
▶【オンデマンド】みなさんの薬局は大丈夫?2026年調剤報酬改定で「選ばれる薬局」と「取り残される薬局」の分岐点
