執筆者・監修者:薬剤師
薬局経営の安定には、集中率を意識した運営が欠かせません。調剤報酬改定やかかりつけ機能の評価を踏まえると、特定医療機関への依存を減らす取り組みが今後の収益を左右します。
しかし、日々の業務に追われる中で、次のように感じる方もいるでしょう。
「薬局は集中率を下げるべき?」
「集中率を下げる理由は?」
「集中率を下げるための具体的な方法は?」
当記事では、集中率が経営に与える影響や、DX活用・リフィル処方箋・在宅医療・通し営業など、現場で実践しやすい具体策を解説します。最後まで読めば、薬局の評価と収益の両立を目指すためのヒントが得られるでしょう。
目次
1.薬局の集中率を下げるべき理由とは?
集中率は薬局経営の安定性を左右する重要な指標であり、放置すると評価や収益構造に影響が及びやすくなります。調剤報酬改定の動向や地域で求められる役割を踏まえると、早い段階から集中率を意識した運営が欠かせません。
薬局の集中率を取り巻く背景や考え方を詳しく見ていきましょう。
集中率の超過が招く調剤基本料・地域支援体制加算への影響
集中率が高い薬局は調剤基本料1を算定できず、地域支援体制加算の届け出が難しくなることと、算定点数も下がるので、収益性が下がりやすくなります。調剤報酬の制度上、調剤基本料1が地域支援体制加算1・2の前提条件とされているためです。
集中率が高い場合、以下の状態に陥りがちです。
- 特定医療機関の処方箋に業務が偏る
- 複数医療機関への対応や地域活動の実績が評価されにくい
結果として、かかりつけ機能や地域貢献を評価する加算を算定できず、経営の選択肢が限定される点が課題といえます。
次期改定を見据えた「かかりつけ機能」と集中率の関係
次期改定を見据えた「かかりつけ機能」の評価では、集中率の低い経営体質が重要になるでしょう。厚生労働省が推進するかかりつけ薬局像が、特定の医療機関に依存せず、地域住民を継続的に支える体制を前提としているためです。
具体的には、以下のような実態が評価されやすくなるでしょう。
- 複数医療機関の処方箋を受け付けている
- 服薬情報の一元管理や継続的な相談対応をおこなっている
集中率が高い状態では取り組みの幅が狭まり、調剤報酬上の評価との乖離が生じやすいため、経営面からも見直しが欠かせません。
2.具体策①:薬局の集中率を下げるDX活用!LINEやアプリで広域処方箋を獲得
集中率を下げるうえで、特定医療機関への依存を和らげる仕組みづくりが欠かせません。近年はDXの活用により、患者さんとの接点や受け付け方法を見直す動きが広がっています。
本章では、LINEやアプリで広域処方箋を獲得する方法を解説します。
在庫不安を解消する「事前チャット」で患者の取りこぼしを防ぐ
LINEやアプリの事前チャットの活用方法を患者さんに周知すれば、在庫不安は大きく軽減できます。LINEやアプリの利用方法が明確になることで、来局前の確認行動が定着しやすくなるためです。
具体的には、以下の内容を案内しましょう。
- 処方内容の写真送付で在庫確認が可能
- 入荷目安や代替案を即時提示可能
掲示物や案内文で手順を伝えることで利用が進み、面処方の受け付け機会を安定して確保できるでしょう。
オンライン服薬指導と配送サービスの組み合わせによる商圏拡大
オンライン服薬指導と配送サービスの併用は、商圏を地理的制約から解放し、集中率低下に有効です。オンライン診療や電子処方箋の普及により、来局せずに服薬支援を完結できる環境が整ってきました。
ただし、オンライン診療や電子処方箋は患者さんへの浸透が不十分なため、以下を周知する必要があります。
- 薬局近く、遠方どちらの病院の電子処方箋でも受け付けできること
- ビデオ通話による服薬説明が可能であること
- 薬局へ来なくても自宅へ医薬品を配送できること
近隣住民が遠方の医療機関を受診した場合でも自薬局を選択しやすくなります。結果として、特定医療機関への依存を抑えた持続的な受け付け体制が構築できるでしょう。
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3.具体策②:リフィル処方箋の2回目以降を獲得
リフィル処方箋は、患者さんとの継続的な関係構築につながり、集中率を安定的に下げる手段として注目されています。一度きりの来局で終わらせず、次回以降の利用を意識した関わり方が重要です。
現場で実践しやすいリフィル処方箋の2回目以降を獲得する工夫について、詳しく見ていきましょう。
患者への声かけ用トークスクリプトとポスター掲示
リフィル処方箋の継続利用を促すには、患者さんへの周知を徹底する仕組みづくりが重要です。
実際には、リフィル処方箋がどの薬局でも使える点を理解していない患者さんが多いため、以下の工夫が有効です。
- 待合室に「リフィル処方箋は当薬局で継続利用可能」と掲示する
- 投薬時に「次回は受診せず、同じ処方箋で来局できます」と声をかける
視覚と会話の両面から伝えることで理解が深まり、2回目以降の来局につながります。
フォローアップによる患者定着化
リフィル処方箋ではフォローアップをおこなうことで患者さんが定着しやすくなり、2回目以降の来局を促せます。服薬期間中に接点を持つことで、不安や疑問が早期に解消され、信頼関係が深まるでしょう。
具体的には、以下の対応が有効です。
- LINEで「体調に変化はありませんか」と確認する
- 電話で服薬状況を簡潔に聞き取る
継続的な声かけは信頼関係構築につながり、他薬局への流出を防ぐ仕組みとして機能します。
4.具体策③:お薬手帳の確認と声かけで他科処方箋を集約化
お薬手帳の確認と声かけは、他科処方箋の集約化を進め、集中率低下に直結する取り組みです。既存の患者さんが他院で処方されているお薬を把握し、一元管理の必要性を具体的に伝えられるためです。
実際の声かけでは、患者さんにとってのメリットとして、以下の内容を伝えましょう。
- お薬の重複や飲み合わせによる体調不良や副作用を防ぎやすくなる
- 服薬内容を一括管理でき、受診時の説明負担が減る
- お薬の数や管理方法が整理され、残薬や飲み忘れ防止につながる
医療的安全性と生活面の利便性を併せて伝えることで納得感が高まり、処方箋集約が自然に進むでしょう。結果として、薬局の集中率低下にもつながります。
5.具体策④:在宅医療への参入で処方元を分散
在宅医療への参入は、処方元を分散させ、集中率を中長期で安定させる有効な選択肢です。高齢化の進行により、居宅や施設での薬学的支援ニーズは着実に高まっています。
本章では、在宅医療で集中率を下げる方法について、詳しく見ていきましょう。
ケアマネジャーとの連携強化による新規患者の獲得ルート開拓
ケアマネジャーとの連携強化は、門前ドクター以外の処方箋を獲得し、処方元分散を進める有効な方法です。ケアマネジャーは在宅療養者の支援計画を担い、利用する薬局の選定に関与します。実際に、定期的なケアマネジャーへの訪問や情報提供をおこなった薬局が、他院の往診医による処方箋を紹介された事例もあります。
具体的なケアマネジャーとの連携手法として、以下の取り組みが効果的です。
- 服薬管理や残薬調整の対応実績を共有する
- 往診医や訪問看護師との連携体制を説明する
信頼関係が構築されることで、新たな処方箋獲得ルートが定着します。
服薬支援ロボット等のツール活用による業務効率化と差別化
服薬支援ロボットや服薬管理システムの活用は、在宅業務の効率化と差別化を同時に実現します。在宅対応では配薬準備や確認作業が負担になりやすく、人的対応だけでは患者数拡大に限界が生じます。
配薬ロボット等を導入すると、以下のような効果が期待できるでしょう。
- 配薬ミスの防止と確認時間の短縮
- 服薬状況の記録と共有の自動化
業務負担を抑えながら在宅患者数を増やすことで、外来処方の比率が相対的に下がり、集中率低下に結び付くでしょう。
6.具体策⑤:夜間・休日以外の通し営業
夜間や休日以外に薬局を通し営業することにより、近隣の医療機関以外の処方箋流入を増やし、集中率低下に寄与する可能性があります。近隣医療機関が平日休診の場合、薬局もあわせて閉局していることが多いです。通し営業することにより、患者さんは「いつも開いている薬局」と認識しやすくなり、薬局近隣以外の医療機関の処方箋も持参しやすくなります。
なお、以下の時間であれば夜間・休日等加算の対象外であり、集中率低下に寄与します。
- 月曜~金曜の8時~19時
- 土曜日の8時~13時
ただし、通し営業により人件費は増加するため、導入には中長期的な視点が必要な点に注意が必要です。
7.まとめ
薬局における集中率対策は、薬局の評価と収益の両立を図るうえで欠かせない取り組みです。DX活用やリフィル処方箋、在宅医療、通し営業などを組み合わせることで、処方元の分散と患者さんの定着が進みます。早期に取り組むことで次期改定への備えにもつながるでしょう。当記事を参考に、自薬局に合った施策を検討し、安定した経営基盤づくりに役立ててください。

