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門前薬局の生き残り戦略とは?立地依存減算の経営への影響と対応策

執筆者・監修者:薬剤師

2026年度調剤報酬改定では、特定医療機関への依存度が高い新規開設薬局を対象として、門前薬局等立地依存減算が新設されました。既存の門前薬局が直ちになくなるわけではありませんが、特定医療機関への依存度を見直す重要性は高まっています。

しかし、以下のような疑問を抱えている薬局経営者もいるのではないでしょうか。

「門前薬局は、将来的になくなってしまう?」
「立地依存減算によって、薬局経営はどの程度影響を受ける?」
「特定医療機関に依存せず、安定した経営を続けるには何が必要?」

本記事では、門前薬局等立地依存減算の対象や経営への影響に加え、患者さんとの関係構築、在宅医療、薬局DXによる対応策を解説します。対人業務へ取り組む時間を確保するための業務効率化や、2027年に施行予定の調剤業務の一部外部委託についても取り上げます。

最後まで読めば、自薬局の収益構造と業務体制を見直し、地域から選ばれる薬局を目指すための対応策を整理できるでしょう。

 

1.門前薬局はなくなる?立地依存減算から考える今後の経営

門前薬局が一律になくなるわけではありません。ただし、2026年度改定では、都市部や医療モールなどで新規開設する薬局のうち、特定医療機関への処方箋集中率が高い薬局への評価が厳しくなりました。

本章では、門前薬局等立地依存減算の対象と、処方箋集中率が高い薬局が抱える経営リスクについて解説します。

「門前薬局等立地依存減算」の算定要件と対象

門前薬局等立地依存減算は、一定の立地要件と処方箋集中率を満たす薬局について、調剤基本料から15点を減算する仕組みです。原則として、2026年6月1日以降に新規開設する薬局が対象になります。

主な対象は、以下のとおりです。

類型 主な要件
都市部の薬局 都市部に所在し、500m以内に他の保険薬局があり、特定医療機関からの処方箋集中率が85%超。さらに病院との距離や周辺薬局数など所定の立地要件を満たす
医療モール・同一敷地内の薬局 特定医療機関からの処方箋集中率が85%超で、医療機関と同一建物または同一敷地内など所定の要件を満たす

2026年5月31日時点で保険指定を受けている薬局は、当面の間、門前薬局等立地依存減算に該当しない扱いです。

また、同一建物内や同一敷地内に複数の医療機関がある場合は、一つの医療機関として処方箋枚数を合算して集中率を算出します。新規開設時点で集中率以外の要件を満たす場合は、開設月の翌月から3か月間の集中率を確認し、要件を満たせば最終月の翌々月から減算が適用されます。

処方箋集中率が高い門前薬局が抱える経営リスク

特定医療機関への依存度が高い薬局は、診療体制の変化が処方箋枚数や収益へ直接影響しやすい経営構造です。

主なリスクには、以下があります。

  • 医師の退職や診療科の縮小
  • 診療日数の減少
  • 医療機関の移転や閉院
  • 近隣への競合薬局の出店

固定費や人件費は受付枚数に合わせてすぐに減らせないため、処方箋枚数の減少が収益や資金繰りへ影響する可能性があります。

医療機関別の受付枚数や収益構成を定期的に確認し、在宅医療や広域処方箋への対応など、特定医療機関だけに依存しない体制を整えることが重要です。

2.門前薬局の生き残り戦略!対人業務へのシフトと患者さんとの関係構築

立地依存を抑えるには、お薬を受け取る場所ではなく、継続的に相談できる薬局として患者さんから選ばれる必要があります。来局時だけでなく、服薬期間中や在宅療養中にも患者さんとの接点を持つことが重要です。

本章では、服薬期間中のフォローアップ、在宅医療への対応、デジタルツールによる患者さんとの接点の増やし方について解説します。

かかりつけ薬局化と服薬期間中のフォローアップ強化

かかりつけ薬局として選ばれるには、お薬の交付時だけでなく、必要に応じて服薬期間中も患者さんを支援することが重要です。

薬剤師法第25条の2第2項では、必要がある場合にお薬の使用状況を継続的かつ的確に把握し、情報提供や薬学的指導を行うことが定められています。服薬期間中のフォローアップでは、服薬状況、副作用が疑われる症状、残薬、服薬上の困りごとなどを確認します。確認結果は薬剤服用歴へ記録し、必要に応じて処方医へ情報提供しましょう。

対象となる患者さんや連絡時期、確認内容を標準化し、複数の医療機関を受診する患者さんからも継続して相談される関係づくりにつなげることが大切です。

在宅医療への対応強化と収益基盤の多様化

在宅医療への対応は、地域の患者さんを継続的に支援するとともに、外来処方箋とは異なる業務基盤を育てる選択肢になります。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションなどへ、対応可能な地域や時間帯を伝えておきましょう。

在宅では、お薬の配送だけでなく、以下の対応も必要です。

  • 服薬状況や保管状況の確認
  • 残薬調整
  • 多職種との情報共有
  • 麻薬などの医薬品管理
  • 緊急時の連絡対応

受け入れ件数だけを増やすと外来業務を圧迫する可能性があります。訪問ルートや担当者、記録方法を標準化し、人員体制と採算性を確認しながら段階的に対応範囲を広げましょう。

「つながる薬局」などデジタルツールの導入による接点拡大

デジタルツールを活用すると、患者さんとの接点を来局時だけに限定せず、処方箋送信や服薬フォロー、お薬に関する相談へ広げられます。

「つながる薬局」では、LINEを通じて処方箋送信や服薬フォローなどを行えます。処方箋を事前に送信してもらえば、在庫確認や調剤準備を来局前に進めやすくなり、患者満足度の向上にもつながるでしょう。

門前以外の医療機関を受診した患者さんからも、処方箋を送ってもらいやすい環境づくりにつながります。来局後も服薬フォローや相談を継続できるため、患者さんとの接点を増やし、継続して利用してもらえる関係づくりにも活用できるでしょう。

LINEを通じて患者さんとのコミュニケーションを強化!「つながる薬局」

3.門前薬局の生き残り戦略を支える業務効率化とリソース創出

対人業務や在宅医療を強化するには、薬剤師が患者さんへの対応に充てる時間を確保する必要があります。受付からお薬交付までの工程を見直し、システムや機器によって効率化できる業務を整理しましょう。

本章では、薬局DXによる対物業務の効率化と、2027年に施行予定の調剤業務の一部外部委託について解説します。

薬局DXの推進と対物業務の効率化

薬局DXでは、システムを導入するだけでなく、効率化によって生まれた時間を対人業務へ振り向けることが重要です。

活用できる仕組みには、以下があります。

  • 電子処方箋
  • 在庫管理システム
  • 散薬監査システム
  • 自動錠剤分包機
  • 電子薬歴や患者連絡ツール

電子処方箋や電子処方箋管理サービスを活用すれば、処方情報や過去のお薬情報を電子的に確認しやすくなります。

システム導入前後で作業時間や調剤過誤の発生状況などを比較し、効率化によって確保した時間を服薬フォローや在宅対応へ振り向けるところまで目的を明確にしましょう。

2027年施行予定の調剤業務外部委託を見据えた体制整備

調剤業務の一部外部委託は、一定の調剤業務を別の薬局へ委託し、業務効率化と薬剤師業務の質向上につなげる制度で、2027年5月20日に施行予定です。

対象となる主な業務は、以下のとおりです。

  • 計量による調製を含まない一包化
  • 一包化した薬剤と同じ服用時点に使用する、一包化されないお薬を組み合わせる作業

散剤の計量調製や外用薬などを含め、幅広い調剤業務を自由に委託できる制度ではありません。

委託を検討する場合は、一包化件数や作業時間を把握し、委託費用と削減できる時間を比較しましょう。患者さんへの説明や同意、委託先との情報連携、輸送、記録、確認手順なども整備する必要があります。

政令・省令はすでに公布されているため、今後示される通知や運用上の取り扱いも確認しながら準備を進めてください。

※参考:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について」

調剤業務の外部委託については以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。
「調剤業務の外部委託で薬局はどう変わる?薬剤師向けの対策と将来像」

4.まとめ

門前薬局等立地依存減算が新設されても、既存の門前薬局が直ちになくなるわけではありません。ただし、特定医療機関の処方箋に依存する経営は、制度改定や診療体制の変化による影響を受けやすい構造です。

安定した経営を続けるには、服薬期間中のフォローアップ、在宅医療、デジタルツールを通じて患者さんとの接点を広げる必要があります。同時に、薬局DXや調剤業務の一部外部委託も活用し、薬剤師が患者さんへの対応に取り組める時間を確保することが重要です。

自薬局の処方箋集中率や応需先、業務時間を把握し、立地だけではなく対人業務が充実した薬局機能を理由に選ばれる経営体制へ移行しましょう。

執筆者:佐藤 恒一

資格:薬剤師

経歴:総合病院門前薬局、精神科クリニック門前薬局にて勤務。調剤業務・服薬指導を経験後、薬局チェーン本部のDI(医薬情報)部門に所属し、医薬品情報提供や安全性対応に従事。現在は複数薬局の運営を担い、現場業務の効率化、人材育成、収益改善、地域医療への対応など、薬局経営に関わる幅広い業務に携わる。

薬局経営や薬剤師業務は、制度改定や地域医療の変化により、年々複雑さを増しています。執筆では、薬局経営者や薬局従事者が実務に活かしやすいよう、制度や業務課題を具体的に整理し、現場目線でわかりやすく伝えることを心掛けています。最新の調剤報酬改定や薬局経営の動向にも関心を持ち、日々情報収集を続けています。

監修者:岸 敦史

資格:薬剤師

経歴:総合病院前の調剤薬局にて勤務後、循環器病院での病棟勤務を経て、調剤チェーンにて薬局長や担当エリア教育担当、ブロック長(マネージャー)を経験。その後、ファーマシフトにてセールスをメインとして活動後、現在はマーケティングを担当しながら、調剤報酬の内容などの社内周知等を実施。

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