執筆者・監修者:薬剤師
薬局が通常の応需体制を取っていない時間や、休日・深夜に調剤した場合、要件に応じて時間外加算・休日加算・深夜加算を算定できます。一方、開局していない時間であれば、必ず算定できるわけではありません。
しかし、以下のような疑問を抱えている方もいるでしょう。
「時間外加算は、何時から算定できる?」
「加算とは別に、患者さんから料金を受け取ってもよい?」
「閉局後に処方箋を持ち込まれた場合は、調剤を断れる?」
本記事では、時間外等加算の対象時間や割増率、算定要件、別料金を徴収できる条件を解説します。調剤の応需義務を踏まえた対応や、レセプト請求時の確認事項、夜間・休日等加算との違いも取り上げます。
最後まで読めば、患者さんへ適切に説明しながら、正しく算定するための判断基準を整理できるでしょう。
1.薬局の時間外等加算とは?
時間外等加算は、通常の応需体制を取っていない時間帯や休日・深夜に所定の要件を満たした場合に算定できる加算です。
時間外加算・休日加算・深夜加算では、それぞれ対象となる時間や算定要件が異なります。処方箋の受付日時だけでなく、薬局が通常どの時間帯に応需体制を取っているかも確認が必要です。
本章では、時間外の各加算の対象時間と割増率、算定要件について解説します。
時間外加算・休日加算・深夜加算の対象時間と割増率
時間外等加算では、算定対象となる時間帯や日、加算率が異なります。主な違いは、以下のとおりです。
| 加算区分 | 主な対象時間・日 | 加算率 |
| 時間外加算 | 概ね午前8時前・午後6時以降などで、通常の応需体制を取っていない時間 | 基礎額の100% |
| 休日加算 | 日曜日、国民の祝日、12月29~31日、1月2~3日などで所定の要件を満たす場合 | 基礎額の140% |
時間外加算の対象となる午前8時前・午後6時以降でも、薬局が常態として応需体制を取っている場合は、原則として加算の対象にはなりません。
加算率は患者負担額へ直接乗じるものではありません。調剤基本料や薬剤調製料など、所定の項目を合計した基礎額に対して加算率を適用します。
また、時間外・休日・深夜の複数区分に該当しても、各加算を重ねて算定できません。受付日時や薬局の応需体制を確認し、該当する区分で算定する必要があります。
薬局で時間外等加算を算定するための要件と注意点
時間外等加算は、対象となる時間帯や休日に調剤し、各区分の算定要件を満たした場合に算定します。
たとえば午後6時閉局の薬局で午後5時50分に処方箋を受け付けた場合、調剤終了が午後6時を過ぎても時間外加算は算定できません。また、午後6時以降や午後10時以降でも、その時間帯を通常の開局時間としている場合は原則対象外です。
休日加算も、通常開局しているだけでは算定できず、休日当番や救急医療体制など所定の要件を確認する必要があります。受付時刻や開局時間を適切に記録・掲示し、臨時変更時も実際の運用と一致させましょう。
2.時間外等加算とは別に費用を受け取れるケースと調剤拒否の可否
開局時間外の対応で発生した費用を、すべて保険調剤の加算として請求できるわけではありません。別料金の徴収や調剤拒否を判断するときは、保険給付との関係や患者さんの緊急性を確認する必要があります。
2026年度診療報酬改定では、緊急性のない時間外の調剤について、薬局でも選定療養として特別料金を設定できる仕組みが導入されました。
本章では、保険調剤とは別に費用を徴収できる条件と、応需義務を踏まえた時間外対応について解説します。
保険調剤とは別に実費を徴収できるケースと条件
保険給付の対象外となるサービスは、内容や料金を患者さんへ説明したうえで、制度上認められた範囲で実費を徴収できます。
2026年度からは、開局時間外に緊急性のない患者さんが自己都合で調剤を希望する場合、選定療養として「時間外調剤に係る特別の料金」を設定できるようになりました。特別料金を設定する際は、薬局内への掲示や原則ウェブサイトへの掲載、地方厚生(支)局への報告などが必要です。
一方、急病など緊急やむを得ない場合は特別料金の対象外で、要件を満たせば時間外等加算を算定します。なお、特別料金を徴収する場合、時間外・休日・深夜加算は算定できません。
調剤応需義務と調剤拒否が認められる正当な理由
開局時間外であっても、患者さんの緊急性が低く、地域で代替となる調剤体制が確保されている場合などは、調剤拒否が正当化されることがあります。
薬剤師法第21条では、正当な理由なく調剤の求めを拒んではならないと定められていますが、すべての薬局に24時間対応が求められているわけではありません。2026年7月8日付の厚生労働省通知では、患者さんの緊急性や時間帯、地域の応需体制などを踏まえて判断する考え方が示されています。
※出典:厚生労働省「薬剤師の調剤応需義務等について」
対応しない場合は、次回の開局時間を伝え、必要に応じて休日夜間対応薬局や当番薬局を案内しましょう。
調剤拒否の正当な理由については以下の記事でも詳しく解説しています。
薬局における調剤拒否の正当な理由とは?2026年7月通知の基準を徹底解説
時間外の処方箋持ち込みに対する薬局現場のケース別対応策
時間外の処方箋持ち込みでは、閉局時間を過ぎたかだけで判断せず、患者さんの緊急性や地域の調剤体制を踏まえて対応します。
主なケース別の対応例は、以下のとおりです。
| ケース | 判断と対応のポイント |
| 営業終了間際の来局 | 開局時間内に受け付けた場合は、調剤に必要な時間を説明して対応する |
| 閉局後の来局 | 病状や残薬、次回の服用時刻を確認し、緊急性を踏まえて判断する |
| 電話による相談 | 症状や処方箋の状況を確認し、必要に応じて対応可能な薬局や医療機関を案内する |
自薬局で対応できない場合は、休日夜間対応薬局や医療機関へ案内します。対応後は、相談時刻や確認内容、患者さんへの説明、案内先を記録し、薬局内で対応手順を共有しておきましょう。
3.時間外等加算を正しく請求するための確認ポイント
時間外等加算の算定誤りを防ぐには、処方箋を受け付けた段階から受付日時や算定根拠を正確に記録することが重要です。2026年度のレセプト記載要領でも、算定する際の処方箋受付年月日や時刻について記載事項が定められています。
本章では、処方箋受付時刻の記録方法と、レセプト請求時に確認すべき項目について解説します。
処方箋の受付時刻を正しく確認・記録する
時間外等加算では、薬剤を交付した時刻ではなく、処方箋を受け付けた日時を正確に記録することが重要です。
時間外や深夜加算では、処方箋の受付年月日と時刻を記録し、休日加算でも受付年月日を確認できるようにしておきます。受付時刻の判断が薬局内で分かれないよう、受付からレセプト入力までの運用を統一しておきましょう。
開局時間を変更した場合は、店頭掲示やウェブサイト、システム上の営業時間も更新します。表示内容と実際の応需体制が異なると、算定根拠を説明しにくくなるため注意が必要です。
レセプト請求時の記載漏れや算定誤りを防ぐ
レセプト請求前は、算定区分と受付記録を照合して、記載漏れや重複算定を防ぐことが重要です。
主な確認項目は以下のとおりです。
- 処方箋の受付日・受付時刻が正しく記録されているか
- 通常の応需体制を取っている時間か
- 時間外・休日・深夜の区分が正しいか
- 加算の基礎額に対象外項目を含めていないか
- 夜間・休日等加算や特別料金と重複していないか
- 摘要欄へ必要な受付年月日・時刻を記載しているか
レセプトコンピューター任せにせず、月次請求前に実際の受付状況と照合しましょう。返戻や査定があった場合は、原因を確認し、受付方法やシステム設定、請求手順の見直しにつなげます。
4.時間外等加算と他の加算との違い・関係
時間外の調剤に関連する評価には、夜間・休日等加算や地域支援・医薬品供給対応体制加算もあります。名称が似ていても、算定する場面や評価する薬局機能は同じではありません。
本章では、夜間・休日等加算との違いと、地域支援・医薬品供給対応体制加算との関係について解説します。
夜間・休日等加算との違いを理解する
時間外等加算と夜間・休日等加算では、通常の応需体制を取っている時間との関係が異なります。
主な違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | 時間外・休日・深夜加算 | 夜間・休日等加算 |
| 主な算定場面 | 通常の応需体制を取っていない時間など | 表示した開局時間内の夜間・休日 |
| 評価方法 | 所定の基礎額へ一定割合を加算 | 処方箋受付1回につき40点 |
| 主な対象時間 | 時間外、休日、午後10時~翌午前6時 | 平日午後7時~翌午前8時、土曜午後1時~翌午前8時、休日など |
| 併算定 | 夜間・休日等加算との併算定不可 | 時間外等加算を算定する場合は算定不可 |
単に時刻だけで判断せず、通常の開局時間や応需体制を確認して算定区分を決めましょう。
地域支援・医薬品供給対応体制加算との関係を確認する
地域支援・医薬品供給対応体制加算は、夜間・休日対応や医薬品供給、在宅医療など、地域医療を支える薬局の体制や実績を評価する加算です。
2026年度の施設基準では、直近1年間の処方箋受付回数1万回当たり、時間外加算等と夜間・休日等加算の算定回数について、加算2・3は40回、加算4・5は400回が基準です。受付回数が1万回未満の場合は1万回として判定します。
ただし、算定回数だけで施設基準を満たすわけではありません。医薬品供給体制や在宅医療など、区分ごとの要件も確認し、日々の実績を正確に管理しましょう。
5.まとめ
時間外等加算は、処方箋の受付日時だけでなく、通常の開局時間や応需体制、区分ごとの要件を確認して判断します。午前8時前・午後6時以降であっても、一律に算定できるわけではありません。
2026年度からは、緊急性がなく患者さんの希望で時間外調剤を受ける場合、選定療養として特別料金を設定できます。ただし、時間外等加算との重複請求はできません。
調剤拒否も一律に判断せず、患者さんの緊急性や地域の調剤体制を踏まえて対応しましょう。

執筆者:佐藤 恒一
資格:薬剤師
経歴:総合病院門前薬局、精神科クリニック門前薬局にて勤務。調剤業務・服薬指導を経験後、薬局チェーン本部のDI(医薬情報)部門に所属し、医薬品情報提供や安全性対応に従事。現在は複数薬局の運営を担い、現場業務の効率化、人材育成、収益改善、地域医療への対応など、薬局経営に関わる幅広い業務に携わる。
薬局経営や薬剤師業務は、制度改定や地域医療の変化により、年々複雑さを増しています。執筆では、薬局経営者や薬局従事者が実務に活かしやすいよう、制度や業務課題を具体的に整理し、現場目線でわかりやすく伝えることを心掛けています。最新の調剤報酬改定や薬局経営の動向にも関心を持ち、日々情報収集を続けています。

監修者:岸 敦史
資格:薬剤師
経歴:総合病院前の調剤薬局にて勤務後、循環器病院での病棟勤務を経て、調剤チェーンにて薬局長や担当エリア教育担当、ブロック長(マネージャー)を経験。その後、ファーマシフトにてセールスをメインとして活動後、現在はマーケティングを担当しながら、調剤報酬の内容などの社内周知等を実施。


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