執筆者・監修者:薬剤師
薬局によるポイント付与や送料無料広告は、運用方法によって薬担規則(保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則)に基づく口頭指導の対象となります。特に2026年6月の薬担規則の事務連絡では、1%基準や外部サービスを介した還元、薬剤配送の広告に関する考え方が明確化されました。
一方で、事務連絡の内容を実務に落とし込む際、次のような疑問を抱く薬局関係者もいるでしょう。
「最新の事務連絡が出た背景は?」
「ポイント1%上限の考え方は?」
「お薬の配送料無料も指導対象になる?」
本記事では、経済上の利益提供による患者誘引が禁止される背景から、ポイントの合算方法、処方箋受付サイト、送料無料広告の注意点まで解説します。さらに、見直すべきポイント制度や広告、外部サービスの確認項目も紹介します。
最後まで読めば、薬担規則の事務連絡の要点を整理し、薬局の運用へ具体的に活かせるでしょう。
1.薬担規則に関する2026年6月事務連絡の全体像と背景
薬局によるポイント付与や送料無料広告は、患者への経済上の利益提供に該当するか判断が難しい場合があります。適切に対応するには、誘引禁止の背景と問題になり得る事例を把握することが大切です。
本章では、2026年6月に発出された薬担規則に関する事務連絡の全体像について解説します。
経済上の利益提供による誘引禁止の背景
保険調剤では、薬剤料や技術料などの費用が公定価格として定められており、薬局が自由に値引きできる仕組みではありません。患者さんが薬局を選ぶ基準も、ポイント還元などの経済的メリットではなく、調剤や薬学的管理、服薬指導の質であるべきとされています。
薬担規則では、経済上の利益を提供して患者さんを自局へ誘引する行為を禁止しています。利益提供による競争が広がると、医療の質よりも特典の大きさが優先されるおそれがあるためです。
また、療養の給付に関する費用が公定されている保険調剤に、ポイントのような付加価値を付与することは、医療保険制度上ふさわしくないとされています。2026年6月の事務連絡は、患者本位の薬局選択を守るため、従来の原則を改めて明確化したものです。
対象となったグレーゾーン事例
キャッシュレス決済や処方箋受付サイト、薬剤配送サービスが広がるなか、独自・共通ポイントの重複付与や、外部サイトを介したキャッシュバックなどの事例が確認されています。具体的には、決済ポイントへの独自ポイントの上乗せや、受付サイトを介した謝礼名目の還元が挙げられます。
事務連絡では、一部負担金に対するポイントの合計が1%を超える場合、地方厚生(支)局による口頭指導の対象になると示されました。ポイントを一部負担金の支払いに充てられる仕組みや、利益提供を大々的に宣伝する行為も同様に扱われます。
患者さんの希望による薬剤配送について、送料の減額や無料化を広告する行為も対象です。一方、薬局側の在庫不足により後日配送する場合は薬局負担が認められ、患者誘引に当たる場合との違いも整理されています。
2.ポイント付与に関する1%の指導基準と注意点
ポイント付与が指導対象に当たるかは、決済手段ごとの還元率ではなく、患者さんが受け取る利益の総計で判断されます。適切に運用するには、1%基準の考え方と広告表示の注意点を把握することが重要です。
本章では、ポイントの合算方法と説明責任、大々的な広告への対応について解説します。
キャッシュレス決済と独自・共通ポイントは合算して判断
クレジットカードや電子マネーの決済に伴うポイント付与は、患者さんの利便性や薬局事務の効率化を踏まえ、当面はやむを得ない取扱いとされています。ただし、調剤一部負担金に対するポイントの総計が1%相当を超える場合は、地方厚生(支)局による口頭指導の対象です。
2026年6月の事務連絡では、決済ポイントが一部負担金の1%を超えると見込まれる状況で、独自ポイントや共通ポイントをさらに付与する行為も、口頭指導の対象になることが明確化されました。決済ポイントへ複数のポイントを上乗せする場合は、それぞれを分けず、付与されるポイントの総計で判断します。
複数のポイント制度を導入する薬局では、期間限定キャンペーンを含む還元率の把握が必要です。総計が1%を超える見込みがある場合は、独自ポイントや共通ポイントの上乗せを停止するなど、運用の見直しが求められます。
ポイント総計の説明責任と大々的な広告への注意
独自ポイントや共通ポイントを上乗せする保険薬局は、付与されるポイントの総計を把握する必要があります。総計が調剤一部負担金の1%を超えないことについて、地方厚生(支)局へ説明する責任は保険薬局側が負います。
還元率や付与条件を正確に確認できず、説明責任を果たせない場合は、口頭指導の対象です。ポイントを利用して一部負担金を減額できる仕組みも、同様に指導対象として整理されています。
また、建物外の看板やテレビCM、外部から容易に見える店内掲示などによる大々的な宣伝にも注意が必要です。還元率が1%以内であっても、ポイント付与を強調して患者を誘引する広告は口頭指導の対象となるため、表示内容と掲出場所の両面を管理しなければなりません。
3.外部サービスと薬剤配送に関して明確化された指導対象
外部サービスを介した還元や薬剤配送は、利便性を高める一方で、患者誘引に当たるか判断が分かれやすい領域です。適切に運用するには、指導対象となる条件と広告上の注意点を整理する必要があります。
本章では、処方箋受付サイト等の還元と送料無料広告の取扱いについて解説します。
処方箋受付サイト等を介した患者への還元も指導対象になる
処方箋受付サイトやアプリを介した還元は、外部事業者が付与する場合でも、その仕組みによっては口頭指導の対象となります。薬局から登録料や利用料を受け取る事業者が、利用患者へ金銭やポイントを付与する事例が確認されているためです。
アンケート回答への謝礼やサービス利用特典という名目であっても、実態がキャッシュバックであれば、経済上の利益提供と判断されます。また、利益提供によって登録薬局へ患者さんを誘導する仕組みは、薬担規則が禁止する患者誘引に該当する可能性があります。
利益を直接付与した主体が外部事業者であっても、薬局側が規制を免れるわけではありません。対象サービスを通じて処方箋を応需する保険薬局は、地方厚生(支)局による口頭指導の対象となるため、契約前に還元制度の有無や仕組みを確認する必要があります。
患者希望によるお薬配送と送料無料広告の注意点
患者さんや家族等の希望により調剤した薬剤を送付する場合は、関係法令を遵守し、同意を得たうえで、送付に要する費用を療養の給付と直接関係のないサービス等の費用として徴収できます。
一方、患者希望の配送について、送料の一部を減額したり、無料にしたりする旨を宣伝する行為には注意が求められます。送料無料などを広告して患者さんを集める行為は、経済上の利益提供による誘引に実質的に該当するためです。該当する広告を行う保険薬局は、地方厚生(支)局による口頭指導の対象となります。
ただし、必要な薬剤の在庫がなく、薬局側の事情で後日配送する場合は扱いが異なります。たとえば、在庫不足により応需した薬局から後日送付する場合など、薬局側の事情に起因する送付では、保険薬局が費用を負担して差し支えありません。
4.薬担規則に基づく指導を受けないために薬局がすべき対策
薬担規則に基づく指導を避けるには、ポイント制度や外部サービスの契約内容を正確に把握する必要があります。あわせて、店頭やウェブ上の広告が患者誘引に当たらないか確認することも重要です。
本章では、薬局が見直すべき制度運用と広告管理のポイントについて解説します。
導入中のポイント制度と外部サービスの適正化
薬局は、患者さんに付与されるポイントの総計が、調剤一部負担金の1%を超えないか定期的に確認する必要があります。独自ポイントや共通ポイントだけでなく、クレジットカードなどの決済ポイントも合算して判断します。
期間限定キャンペーンによって還元率が上昇する場合もあるため、通常時の設定だけでは十分とはいえません。還元条件や対象期間を記録し、地方厚生(支)局へ根拠を説明できる状態に整えることが重要です。
加盟中の処方箋受付サイトについては、患者さんへの謝礼やキャッシュバックの有無を規約などで確認しましょう。還元原資や処方箋受付との連動条件まで把握し、経済上の利益による患者誘引に該当するサービスは利用を見直す必要があります。
店頭・ウェブ広告と外部サービスの運用を見直す
薬局は、患者誘引につながる広告表現がないか、使用中の媒体を定期的に点検する必要があります。店頭ポスターや看板に加え、ウェブサイト、SNS、デジタルサイネージも確認対象に含めましょう。
特に「送料無料」や「ポイント還元」を強調し、経済的な特典で薬局利用を促す表現には注意が必要です。建物外の看板などでポイント付与を大々的に広告する行為は、口頭指導の対象として明示されています。
処方箋受付サイト等の外部サービスは、契約書や利用規約の確認だけでは不十分です。患者さん向けキャンペーン画面や広告も確認し、自局の利用に伴う金銭やポイントの付与がないか把握しましょう。外部事業者による還元でも薬局が指導対象となり得るため、表示内容まで含めた継続的な管理が重要です。
5.まとめ
2026年6月の薬担規則の事務連絡では、ポイント付与や送料無料広告が経済上の利益提供による患者誘引に当たり得る条件が明確化されました。
調剤一部負担金に対するポイント総計が1%を超える場合や、外部サービスを介した還元、大々的な広告は口頭指導の対象となります。薬局では、決済ポイントや独自・共通ポイントを合算し、処方箋受付サイトや薬剤配送サービスの契約内容まで確認することが重要です。
本記事を参考に、ポイント制度と広告運用を見直し、薬担規則に沿った適正な薬局運営へつなげてください。

執筆者:佐藤 恒一
資格:薬剤師
経歴:総合病院門前薬局、精神科クリニック門前薬局にて勤務。調剤業務・服薬指導を経験後、薬局チェーン本部のDI(医薬情報)部門に所属し、医薬品情報提供や安全性対応に従事。現在は複数薬局の運営を担い、現場業務の効率化、人材育成、収益改善、地域医療への対応など、薬局経営に関わる幅広い業務に携わる。
薬局経営や薬剤師業務は、制度改定や地域医療の変化により、年々複雑さを増しています。執筆では、薬局経営者や薬局従事者が実務に活かしやすいよう、制度や業務課題を具体的に整理し、現場目線でわかりやすく伝えることを心掛けています。最新の調剤報酬改定や薬局経営の動向にも関心を持ち、日々情報収集を続けています。

監修者:岸 敦史
資格:薬剤師
経歴:総合病院前の調剤薬局にて勤務後、循環器病院での病棟勤務を経て、調剤チェーンにて薬局長や担当エリア教育担当、ブロック長(マネージャー)を経験。その後、ファーマシフトにてセールスをメインとして活動後、現在はマーケティングを担当しながら、調剤報酬の内容などの社内周知等を実施。



