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デジタル化・AI導入補助金2026で薬局はどう変わる?対象ツールと選び方

執筆者・監修者:薬剤師

デジタル化・AI導入補助金2026は、薬局の業務効率化や患者対応の改善に活用できる支援制度です。電子薬歴や在庫管理、オンライン服薬指導などの導入費用を抑えながら、将来の制度改正に備えたIT環境も整備できます。

一方で、補助対象や申請枠、導入手順が複雑で、以下のように疑問を抱く方もいるでしょう。

「デジタル化・AI導入補助金とは?」
「薬局で補助金を使うとどう変わる?」
「どのツールが対象?」

本記事では、制度の概要や補助率、薬局で期待できる変化、対象ツールの選び方、申請から導入までの注意点を解説します。

最後まで読めば、薬局における補助金活用と今後のIT環境の整備を具体的に検討できるようになるでしょう。

 

1.デジタル化・AI導入補助金とは?

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業や小規模事業者等の労働生産性向上に向けて、登録ITツールの導入費用を支援する制度です。令和7年度補正予算事業から、旧「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変更され、AIを含むITツールの導入支援が制度名称にも明示されました。

主な申請枠の違いは、以下のとおりです。

申請枠 主な目的 補助率・補助額 
通常枠 業務効率化やDX、生産性向上 ・原則1/2以内
・一定の最低賃金要件を満たす場合は2/3以内
・5万~450万円
インボイス枠(インボイス対応類型) 会計・受発注・決済機能の導入 ・50万円以下は3/4以内
・小規模事業者は4/5以内
・50万円超350万円以下は2/3以内
インボイス枠(電子取引類型) 取引関係における受発注システムの導入 ・原則2/3以内
・大企業の場合は1/2以内
・上限350万円
セキュリティ対策推進枠 サイバーセキュリティ対策 ・原則1/2以内
・小規模事業者は2/3以内
・5万~150万円
複数者連携デジタル化・AI導入枠 複数事業者が連携する面的なデジタル化 インボイス対応経費、消費動向分析経費、事務費・専門家経費などを支援

ソフトウェア購入費のほか、クラウド利用料、導入設定、操作研修なども、申請枠やITツールの登録内容に応じて対象経費となる場合があります。薬局では、解決したい業務課題と登録ITツールの機能を照合し、補助率だけでなく、対象経費や申請要件も確認して適切な枠を選ぶことが重要です。

2.薬局はデジタル化・AI導入補助金活用でどう変わる?

薬局では、患者対応や対応記録、在庫管理に多くの時間を要し、入力ミスや確認作業が負担になりやすい傾向があります。業務効率を高めるには、各作業に適したデジタルツールを導入することが重要です。

本章では、デジタル化・AI導入補助金活用で期待できる薬局の変化について解説します。なお、同じ種類のシステムでも、補助金の対象年度に登録されていない製品は補助対象になりません。

電子薬歴・オンライン服薬指導システムによる記録と患者対応の効率化

クラウド型電子薬歴には、定型文や入力支援、患者情報の共有機能を備えた製品があり、適切に運用すれば薬歴作成や確認作業の時間短縮が期待できます。

オンライン服薬指導システムには、予約、ビデオ通話、決済、お薬の配送手配まで一連の対応を管理できる製品もあります。

予約や連絡をシステム上で管理できれば、薬局の電話対応や受付業務の負担軽減も期待できます。ただし、お薬を配送する場合は、品質保持や本人への授与を確保し、配送記録等によって受領を確認できる運用が必要です。

導入効果を高めるには、電子薬歴やレセコンとの連携可否だけでなく、患者情報、処方情報、会計情報など、連携できるデータの範囲を確認し、二重入力を防ぐ必要があります。

在庫管理システム・POSレジによる入力ミスと管理負担の軽減

レセコンと会計情報を連携できるPOSレジを導入すると、患者負担額の転記作業を減らせ、窓口会計における入力ミスや二重入力の抑制が期待できます。

在庫管理システムには、処方・出庫実績に応じた発注支援、使用期限の管理、複数店舗の在庫状況を可視化できる製品があります。適切に運用すれば、過剰在庫や期限切れを減らし、廃棄ロスや棚卸し負担の軽減につながるでしょう。

ただし、利用中のレセコンとの連携に加え、医療用医薬品とOTC医薬品をどのシステムで管理するか確認しなければなりません。ロット番号、使用期限、店舗間移動など、自局に必要な管理機能を事前に整理することが重要です。

導入後は、自動発注の基準や在庫移動、棚卸し、マスタ更新の手順を定め、担当者間で運用方法を統一します。システムの機能だけに頼らず、定期的に設定や在庫データを点検することで、安定した活用につながります。

3.デジタル化・AI導入補助金の対象ツールと選び方

デジタル化・AI導入補助金を活用するには、補助対象となる登録ITツールを選び、薬局の課題や申請枠に合うかを確認する必要があります。機能だけでなく、ハードウェアの申請条件やセキュリティ、既存システムとの連携性も重要です。

本章では、薬局に適した対象ツールの選び方と確認すべきポイントについて解説します。

登録ITツールでなければ補助対象にならない

電子薬歴や在庫管理システムに該当する製品でも、すべてが補助対象になるわけではありません。申請できるのは、IT導入支援事業者が申請し、事務局に登録・公開された2026年度の登録ITツールに限られます。

対象製品は、公式サイトの「ITツール・IT導入支援事業者検索」で、製品名や事業者名から確認できます。

同じ製品でも、ソフトウェア本体だけが対象となり、追加機能や保守費用が含まれない場合があるため注意が必要です。申請前に登録番号、対象機能、クラウド利用料や導入支援費を含む費用範囲まで確認することが重要です。

登録状況と薬局の課題からソフトウェアを選ぶ

ソフトウェアは、知名度や機能数ではなく、薬局が解決したい課題を明確にしてから選ぶことが重要です。

薬歴作成の負担には電子薬歴、欠品や廃棄には在庫管理、患者対応にはオンライン服薬指導や服薬フォロー等のコミュニケーションツール、調剤ミス対策には処方監査支援などが候補となります。候補を絞った後は、2026年度の登録ITツールに該当するかを公式サイトで確認しましょう。既存のレセコンや電子処方箋、会計システムとの連携可否に加え、データ移行や保守費用も比較が必要です。

なお、LINE公式アカウント「つながる薬局」は、LINEを通じて処方箋送信や服薬フォロー、オンライン服薬指導などを行える薬局向けサービスです。デジタル化・AI導入補助金2026の対象ITツールとして登録されており、患者さんとの接点強化や服薬支援の効率化を進めたい薬局に適した選択肢といえます。

デジタル化・AI導入補助金2026対象ツール「つながる薬局」の詳細はこちら

インボイス対応ソフトと併せて申請できるハードウェアを選ぶ

インボイス枠では、会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つ対象ソフトウェアと併せて、業務に必要なハードウェアを申請できます。

対象機器は、PCやタブレット、プリンター、スキャナー、複合機などです。決済機能を持つソフトウェアを導入する場合は、POSレジやモバイルPOSレジ、券売機も候補に含まれます。

ただし、ハードウェアだけを購入する申請は補助対象になりません。導入するソフトウェアを継続して利用するために必要最小限の機器を選び、対象製品や見積金額をIT導入支援事業者へ確認することが重要です。

患者情報を扱うツールはセキュリティとデータ連携を確認する

患者情報を扱うツールは、機能の多さだけでなく、安全管理の仕組みを確認して選ぶ必要があります。職員ごとのアクセス権限や操作ログ、データのバックアップ、障害発生時の復旧体制が主な確認項目です。

データの保存場所や保存期間に加え、契約終了後に返却・移行・削除できるかも確認が必要です。

業務効率の面では、レセコンや電子処方箋関連システムと、どの情報まで連携できるかも確かめます。連携できるデータが限られる場合は、転記作業が残り、入力ミスや業務負担が増えるおそれがあります。

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインへの対応状況と、必要なデータを円滑に連携できるかを総合的に判断することが重要です。

4.薬局の制度改正を見据えてIT環境を整備する必要性

薬局を取り巻く制度改正では、調剤業務の外部委託や地域連携薬局の実績管理など、正確な情報共有が一層求められます。対応を進めるには、業務記録や連携状況を継続して管理できるIT環境の整備が重要です。

本章では、今後の制度改正を見据えたIT活用の必要性について解説します。

2027年5月施行の調剤業務外部委託等とIT環境整備の必要性

2027年5月20日から、薬局機能の強化に向けた調剤業務の一部外部委託や、認定薬局制度の見直しが施行されます。

外部委託では、委託元が処方内容や患者情報を正確に伝え、委託先の作業内容や確認結果を把握できる体制が欠かせません。情報伝達を電話や紙だけに頼ると、記載漏れや確認の遅れが生じるおそれがあります。安全性と記録性を確保する方法として、委託元・委託先間で情報共有できるシステムの活用が有効です。併せて、委託内容や作業結果、確認状況などを記録し、問題発生時に経緯を確認できる仕組みも重要です。

患者情報を扱うため、アクセス権限や通信の暗号化、操作ログなどの安全管理策を講じ、委託元と委託先が適切に情報共有できる環境を整えましょう。

地域連携薬局の在宅・情報連携実績を管理するIT活用

地域連携薬局の新基準では、居宅等での調剤、情報提供および薬学的指導を、原則として年48回以上行った実績が求められます。入院時・退院時・居宅等での療養時に、医療関係者へ報告・連絡した実績も原則年60回以上が基準です。

実施日や対象患者、訪問先、連携先、情報提供内容を正確に集計するには、電子薬歴や在宅管理システムが役立ちます。情報共有ツールを併用すれば、報告内容や対応履歴も一元的に管理しやすくなるでしょう。

在宅対応の実績は、地域支援・医薬品供給対応体制加算や在宅薬学総合体制加算の施設基準にも関係しますただし、対象行為や集計期間が異なるため、制度ごとに区分して記録することが重要です。

ITを活用した継続的な実績管理は、認定更新や届出時の確認負担を軽減するのに役立ちます。

5.デジタル化・AI導入補助金申請から導入までの手順と注意点

デジタル化・AI導入補助金は、申請準備から導入後の運用まで見通して計画を立てる必要があります。支援事業者の選定や自己資金の確保が不十分だと、申請や導入が滞るおそれがあるためです。

本章では、デジタル化・AI導入補助金を活用したITツールの導入計画の立て方と、申請時の失敗を防ぐポイントについて解説します。

IT導入支援事業者の選び方と自己資金を含む導入計画

IT導入支援事業者は、申請手続きだけでなく、導入後まで支援できるかを基準に選ぶことが重要です。確認したい主な項目は、以下のとおりです。

  • 2026年度のIT導入支援事業者として登録されているか
  • 薬局への導入実績や既存システムとの連携経験があるか
  • データ移行、職員研修、実績報告まで支援できるか

複数社を比較し、費用だけでなく支援範囲や対応体制まで確認すると、導入後の負担を抑えやすくなります。

補助金は導入費用の支払いと実績報告を終えた後に交付されるため、薬局側で一時的に全額を負担する必要があります。交付決定前の契約や支払いは対象外となるため、自己資金と導入時期を含む計画を事前に整えることが欠かせません。

補助金申請におけるよくある失敗と回避策

補助金申請では、手続きの順序や申請内容の不一致によって、補助対象外となるケースがあります。特に注意したい失敗は、以下のとおりです。

  • 交付決定前に契約・発注・支払いを進める
  • GビズIDプライムの取得が締切に間に合わない
  • SECURITY ACTIONの宣言を申請前に済ませていない
  • 未登録ツールや対象外経費を申請に含める

GビズIDプライムの取得やSECURITY ACTIONの手続きには時間を要する場合があるため、早めに準備を始める必要があります。

導入後は、見積書や契約書、請求書、振込記録など、事務局から指定された証憑を適切に保管します。申請した製品や金額と実際の契約内容を一致させ、不明点や変更が生じた場合は支援事業者へ確認することが重要です。

6.まとめ

デジタル化・AI導入補助金2026を活用すれば、電子薬歴や在庫管理、オンライン服薬指導などの導入負担を抑えながら、薬局業務の効率化を進められます

一方で、補助対象は登録ITツールに限られ、申請枠や対象経費、既存システムとの連携性まで確認が必要です。申請時は、IT導入支援事業者の支援範囲や自己資金に加え、交付決定後に契約や支払いを進める手続きの順序にも注意しなければなりません。

本記事を参考に、自局の課題に合うITツールを選び、今後の制度改正にも対応できる環境整備へ役立ててください。

執筆者:佐藤 恒一

資格:薬剤師

経歴:総合病院門前薬局、精神科クリニック門前薬局にて勤務。調剤業務・服薬指導を経験後、薬局チェーン本部のDI(医薬情報)部門に所属し、医薬品情報提供や安全性対応に従事。現在は複数薬局の運営を担い、現場業務の効率化、人材育成、収益改善、地域医療への対応など、薬局経営に関わる幅広い業務に携わる。

薬局経営や薬剤師業務は、制度改定や地域医療の変化により、年々複雑さを増しています。執筆では、薬局経営者や薬局従事者が実務に活かしやすいよう、制度や業務課題を具体的に整理し、現場目線でわかりやすく伝えることを心掛けています。最新の調剤報酬改定や薬局経営の動向にも関心を持ち、日々情報収集を続けています。

監修者:岸 敦史

資格:薬剤師

経歴:総合病院前の調剤薬局にて勤務後、循環器病院での病棟勤務を経て、調剤チェーンにて薬局長や担当エリア教育担当、ブロック長(マネージャー)を経験。その後、ファーマシフトにてセールスをメインとして活動後、現在はマーケティングを担当しながら、調剤報酬の内容などの社内周知等を実施。

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